トビアスと天使 レオナルド・ダ・ヴィンチ

15-16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
ダ・ヴィンチが修行していた、アンドレア・デル・ヴェロッキオの工房で1470年代前半に祭壇画のために制作されたものです。
ダ・ヴィンチが描いた現存する最初の絵画と言われています。
主題は旧約聖書からとられており、父に頼まれて旅に出たトビアスに大天使ラファエルが守護神として同行する場面を描いています。
当時の上流階級では、遠方へと旅立つ息子のために、本主題に基づく絵画の制作を画家へ依頼することが多かったそうです。本作に登場する2人は、当時の流行の服装を身に付けています。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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アンギアーリの戦いとカスチーナの戦い レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ

「アンギアーリの戦い」は、15-16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
フィレンツェのヴェッキオ宮殿の大広間に描かれた壁画です。軍旗を激しく奪い合う兵士達や軍馬の衝突が描かれ、ダ・ヴィンチ最大の大作と言われています。
ダ・ヴィンチは、本作を油絵で描こうとしました。ロウを混ぜた厚い下塗りなど試行錯誤をしましたが、表面の絵具が流れ落ち、結局、壁画を途中で諦めることになりました。
現在は、ヴァザーリ作のフレスコ画「ヴァルディキアーナでのマルチャーノの戦い」で上書きされてしまったため、ヴェッキオ宮殿で見る事はできません。

        ヴェッキオ宮殿の大広間

しかし、ピーテル・パウル・ルーベンスにより模写されたもの(上記画像)がルーブル美術館に展示されています。
一方、ダ・ヴィンチがヴェッキオ宮殿で「アンギアーリの戦い」を描いていた頃、反対側の壁では、ミケランジェロが「カスチーナの戦い」を描いていました。

ミケランジェロの「カスチーナの戦い」

しかし、こちらも「カスチーナの戦い」の下描きが終わった頃、ミケランジェロは教皇の墓を手がけるためにユリウス2世にローマへ呼び戻され、未完のままとなりました。
フィレンツェのヴェッキオ宮殿所蔵。
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ラ・ベル・フェロニエール レオナルド・ダ・ヴィンチ

15-16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
ダ・ヴィンチの作品で、一人の女性を描いた肖像画はわずかに4作品しか現存せず、本作はその中のひとつで「ミラノの貴婦人の肖像」とも呼ばれています。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作はミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛妾ルクレツィア・クリヴェッリを描いた作品と言われています。
構図には、フランドル画家たちが始めた様式の影響が見られ、モデルの頭部と上半身だけ描き、両手は下部の手すりに隠れています。ダ・ヴィンチの特徴であるスマフート技法(※1)も見られます。
ルーブル美術館所蔵。
※1:スマフート技法:深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法。
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白貂(しろてん)を抱く貴婦人 レオナルド・ダ・ヴィンチ

15-16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
ダ・ヴィンチの作品で、一人の女性を描いた肖像画はわずかに4作品しか現存せず、本作はその中のひとつです。ポーランドの国宝にも指定されています。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作品はミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛妾チェチリア・ガッレラーニを描いた作品です。
チェチーリアの身体は右方向を向いていますが、顔は左に向いています。これはダ・ヴィンチの作品でよく見られるピラミッド型螺旋の構図で、彼が生涯こだわっていた左へ振り向くという身体運動の力学が本作品にも反映されています。
また斜め前から見た横顔の肖像も、ダ・ヴィンチの特徴の1つで、視線は鑑賞者の方には向けられず、絵のフレームを越えた「第三者」に向けられています。
ポーランドのクラクフ国立美術館所蔵。
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岩窟の聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作はダ・ヴィンチが創始した、スフマート(※1)という技法を使った作品の中でも完成度が高い作品のひとつと言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
聖母マリア、幼児キリスト、幼い洗礼者ヨハネ、天使の四人の人物像が描かれています。岩場を背景にした人物たちが三角形を構成しています。岩場の遠景には山並みと渓谷が描かれています。人物たちが構成する三角形の頂点に位置する聖母マリアは右手をヨハネの肩にまわし、左手をキリストの頭上に掲げています。跪いたヨハネはキリストを見つめながら、両手を合わせてキリストに祈りを捧げています。最前面に描かれたキリストは天使に背中を支えられ、ヨハネに向けて右手を掲げて祝福を与えています。
人物たちの重なり合う手や微妙に交差し合う視線は、綿密な組み立てられており、肌の起伏を弱めることなく輪郭を自然にぼかした光沢により、力強さを感じさせます。
人物たちの自然なしぐさや、鉱物ばかりが際立つ風景の存在感は、当時の祭壇画に見られる儀式ばった姿勢やだまし絵の建造物と比べ、革新的でした。
ルーブル美術館所蔵。
※1:スフマート:深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法。モナ・リザもスフマートを使った作品です。
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リッタの聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作はミラノ貴族のリッタ家が所有していたことから「リッタの聖母」と呼ばれています。
それでは具体的に観て行きましょう。
幼児キリストに母乳を与える聖母マリアを描いた作品です。幼児キリストが左手に握っているゴシキヒワは、キリストの受難の象徴です。
アーチ状の二つの窓がある薄暗い背景に人物像が配されており、窓外は近くを明確に描き、遠くを不明瞭に描く、空気遠近法を使用した山並みの風景が描かれています。
気品や慈愛に満ちた聖母マリアの表情は優雅で繊細に描かれ、幼児キリストの表情は幼いながらも気高さと神々しさを放っています。筆触は繊細かつなめらかで、色彩も赤と青の対比が美しい。
全体が暗く描かれている中、聖母マリアと幼児キリストには光が当てられ、明るく描くことで、母子を際立たせる手法がダ・ヴィンチらしい作品です。
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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カーネーションを持つ聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの20代初期の作品です。
両側に2つの窓がある部屋で、聖母マリアがイエス・キリストを膝に乗せて座っています。聖母マリアは豪華な服とジュエリーで描かれ、左手で聖母マリアはカーネーションを持っています。赤のカーネーションは、十字架に磔れた我が子の姿を見た聖母マリアが流した涙から咲いた花といわれ、母性を象徴する花として知られています。
イエス・キリストは見上げており、聖母マリアは見下ろしていますが、お互いの視線は合っていません。全体が暗く描かれている中、聖母マリアとイエス・キリストには光が当てられ、明るく描くことで、母子を際立たせる手法がダ・ヴィンチらしい作品です。
ミュンヘンのアルテ・ピナコテーク所蔵。
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ブノアの聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作は、ダ・ヴィンチが師匠のヴェロッキオから独立して最初に描いた作品です。
当時ダ・ヴィンチは視覚理論を追求していました。当時の考えでは、人間の目から、もっとも重要なものを視野の中心にとらえる光が発せられるとされていました。ブノアの聖母のマリアに抱かれたキリストは、聖母マリアの手によって視線を花により導かれています。
この作品は多くの画家に模倣され、ラファエロの「カーネーションの聖母」も、ブノアの聖母の影響を受けていると言われています。聖母マリアとキリストの配置、聖母マリアの顔の傾き、右上の窓、青の膝掛け等、ブノアの聖母を模擬しているのは明らかです。

ラファエロの「カーネーションの聖母」

サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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海辺を駆けるふたりの女 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの新古典主義時代(※1)の作品です。本作品は、ピカソ独自の自由な表現方法で描かれた作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
この絵のなかの2人の女性は一見、ずっしりと重そうですが、軽やかに疾走して、そのまま空高く飛翔して行きそうな躍動感があります。
また、左の女性のいちばん手前にあるはずの腕がもっとも短く細く描かれていたり、右の女性の目、鼻が消し去られていたりするところに、従来の遠近法や写実主義から解放された、ピカソ独自の自由な表現方法で描かれている作品です。
パリのピカソ美術館所蔵。
※1:新古典主義の時代(1917年 – 1925年):ルネサンスやバロックの名品に影響を受け、どっしりと量感のある、身体に比べて大きい手足、彫刻のような肉体、額から続く高い鼻などが特徴の作品を多く描いた時代。
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