十字架像 ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1492年頃)です。本作はミケランジェロの初期作品の傑作のひとつです。
ミケランジェロ17歳の時、修道院の病院から送られてくる死体の解剖学的研究を許され、その代わりに本作を彫刻し、主祭壇の上に飾りました。
その後、18世紀末のフランス占領下に修道院の鎮圧に伴い、紛失したものと考えられていましたが、別の場所に保管されているのが発見されました。
現在、本作は教会の西側通路から行ける八角形の聖具室に置かれています。
フィレンツェのサント・スピリト聖堂所蔵
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ピア門 ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1565年頃)です。本作はミケランジェロ最後の建築作品です(ミケランジェロはピア門の完成間近で死去)。2つのアーチの間にある建物はかつては税関でしたが、現在はベルサリエーリの歴史博物館となっています。
またピア門は1561年に鋳造された記念硬貨にも描かれています。
ピア門は、ローマのピア通りの終点にあります。
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ミネルヴァのキリスト ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1521年頃)です。本作はローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会にある大理石の彫刻です。因みに、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会は、ガリレオ・ガリレイが裁判にかけられた教会で「それでも地球は回っている」と言ったとの逸話があるのが、この教会です。
それでは具体的に観て行きましょう。
キリストは、体重の大部分を片脚にかけて立っています。その足は曲げられ、頭は振り返ろうとしています。このポーズは、紀元前から使われている技法で、コントラポストの原則(※1)と呼ばれます。
そして、ミケランジェロは、キリストを何も身につけない立ち姿でミケランジェロは罪と死の両方に対するキリストの勝利を表現しています。現在掛かっている腰布は、バロック時代に加えられたものです。
※1:コントラポストの原則:片足に体重をかけて立つことで、左右の肩を結んだ横軸や、骨盤の横軸が傾き、中心軸である脊柱が曲線を描く、左右非対称のポーズのこと。 このポーズを取らせることで、モデルに躍動感が生まれ、生き生きとした印象になる。 西洋美術では紀元前から多用されており、現在でも3DCGをはじめ、様々な表現に応用されています。
ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会所蔵。
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公現祭(エピファニア) ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1553年頃)です。公現祭(エピファニア)は、黒チョークで描かれた実物大のデッサン画で、大きさは高さ2.32メートル、幅1.65メートルで、26枚の紙から成ります。
公現祭とは、西方教会(カトリック教会・聖公会・プロテスタント諸派)において、異邦への救い主(イエス・キリスト)の顕現を記念する祝日の事です。
それでは具体的に観て行きましょう。
聖母マリアと、彼女の足のあいだに座る幼児キリストが描かれています。聖母マリアの右の大人の男性は聖ヨセフで、聖母マリアによって押しのけられているようにも見えます。聖ヨセフの前にいる幼児は、洗礼者ヨハネです。
ミケランジェロは、繰り返し人物の姿と構成を変更し続けていて、当初は題名の通り、公現祭の3人の王が描かれているとされていましたが、現在では、福音書で述べられるキリストの兄弟を描いていると解釈されています。
大英博物館所蔵。
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新聖具室(メディチ家礼拝堂) ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1534年頃)です。メディチ家礼拝堂とは、16世紀から17世紀にかけて造られたイタリア、フィレンツェにあるサン・ロレンツォ聖堂にある2つの建造物「新聖具室」と「君主の礼拝堂」の総称です。
新聖具室は、メディチ家の墓所としてミケランジェロが設計したもので、ミケランジェロの最高傑作の一つに数えられています。
新聖具室への入口は、サン・ロレンツォ聖堂の右翼廊の角の目立たないところにありますが、現在は閉鎖されています。

フィレンツェのサン・ロレンツォ聖堂所蔵。
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モーゼ像 ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1515年頃)です。ミケランジェロは、このモーゼ像を自分の最も生き生きとした作品と感じており、完成した際には、「さあ、話せ!」と言って膝を叩いたと言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
モーゼは深い襞のある衣を身にまとい、その布は大理石ではなく麻であるかのように脚にまとわりついています。腕や手には腱や静脈が目に見えて張り巡らされ、筋骨隆々とした体の強さが感じられ、全能性を示す豊かな髭を持ち、右足を地に着け、左足をそのつま先が地に触れる程度に浮かせています。また、右手は髭に触れながら十戒を抱き、左手も膝の上で髭を撫でています。
ヴァザーリはモーゼ像の顔の美しさを賞賛し、「十戒を授かったときの神性を表している」と述べています。また、フロイトは、動きをテクニックで表した他の彫刻家作品とは一線を画しており、2本の角とともにモーゼの豊かな髭を撫でる仕草や髪のうねりが、見る者に「知的な驚き」を与え、考えさせるような作品だと評しました。
そして、モーゼ像の2本の角が特徴的です。出エジプト記にあるように、シナイ山から降りてきたモーゼは、人々が金の牛を崇拝しているのを見て激怒しましたが、そのときの怒りをこの2本の角は表しています。しかし、11世紀あたりからユダヤ人の社会的地位が変わるとともに、この角の解釈にも変更が加えられました。ユダヤ人が悪魔と結びつけられると、ユダヤ人であるモーゼの頭に生える角も、悪魔を象徴するものだと解釈されるようになりました。
バチカンのサン・ピエトロ教会所蔵。
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聖家族と幼児洗礼者ヨハネ ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの作品(1506年頃)です。本作はフィレンツェ滞在時ドーニ家から依頼され制作された作品で、聖母マリアの夫聖ヨセフが威厳をもって描かれているのが特徴です。
それでは具体的に観て行きましょう。
主題は聖母マリアとキリストを中心に聖人を配する構図「聖家族」です。
我が子を見上げる聖母マリアの表情は愛情と崇敬の念に満ちているのと同時に、母としての力強さが、彫刻家であるミケランジェロならではの人体表現によって表現されています。
本作の聖ヨセフと聖母マリアの姿は旧約聖書の世界を表現しているとされています。幼子キリストは新約聖書の世界、つまり恩恵の世界を表現しており、また背後に描かれる裸体の青年群像は異教的な世界を表すとされています。そして裸体の青年群像と聖家族の間に位置する洗礼者聖ヨハネは、異教的世界とキリスト教世界の仲介を為す存在として描かれています。
従来、キリストの養父ヨセフの存在は、弱く、いつも隅っこで頼りなげに描かれていました。一方、本作でミケランジェロが描いたヨセフは、強い父親です。ピラミッドの頂点で、威厳を持ち、知性ある顔立ちで描かれています。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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システィーナ礼拝堂天井画 ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの代表作(1512年頃)の一つで、4年の歳月をかけ作成された世界最大の壁画です。
主題は旧約聖書の冒頭書に50章から書かれた、神による世界と人間の創造から、楽園追放、バベルの塔、ノアの箱舟などの神話的伝承と、アブラハム・イサク・ヤコブ・ヨセフらの族長伝承などから成る「創世記」です。
それでは具体的に観て行きましょう。
旧約聖書の9つの場面が描かれています。それは、暗闇からの光の分離(創世記1,1-5)、星と植物の創造(創世記1,11-19)、水からの地球の分離(創世記1,9-10)、アダムの創造(創世記1,26-27)、イブの創造(創世記2,18-25)、元の罪と地上の楽園からの追放(創世記3,1-13.22-24)、ノアの犠牲(創世記8章) 15-20)、普遍的な洪水(創世記6,5-8,20)、ノアの酔い(創世記9,20-27)です。
9つの画面の内、5つの小画面は枠取りがされ、それぞれ4体の青年裸体像によって支えられています。9場面の下方、および礼拝堂の両端部には、キリストの誕生を預言した12人の男女(預言者と巫女)の像があります。礼拝堂の窓の上方の半月形壁(ルネッタ)にはキリストの祖先たちの像が描かれ、画面中には彼らの名前も書かれています。そして、四隅の大きな逆三角形壁面には、聖書の劇的な場面が描かれています。
バチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂所蔵。
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ピエタ ミケランジェロ・ブオナローティ

盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、 ミケランジェロ・ブオナローティの初期の傑作(1499年頃)です。本作はサン・ピエトロ大聖堂所蔵の大理石彫刻の一つで、「ピエタ」を題材とする作品の中でも第一に挙げられるものです。古典的な調和、美、抑制というルネサンスの理想の最終到達点ともいうべき完成度を誇り、ミケランジェロの数多い作品の中でもとりわけ洗練され精緻を極めたものと言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
主題は中世~ゴシック期より最も特徴的で広く一般に普及した祈念像「ピエタ」です。このピエタとは憐憫や敬虔の意味を持つラテン語から発生したイタリア語で、キリストとその死を嘆く聖母マリアの姿を指します。ゴシック期以降は彫刻の他、絵画などを含む図像の総称として、この名称(ピエタ)が使用されるようになりました。
本作を観ると、構図はルネサンス美術に典型的な三角形の構図を取っており、聖母マリアの頭を頂点としながら、底辺となる台座(ゴルゴタの丘)に向かって他の二辺となる聖母マリアのドレスの襞が徐々に広がってゆくことで三角形を形づくるようになっています。この三角形の上に、座っている聖母マリア(垂直方向)と横たわるキリスト(水平方向)を直交させて重ねるというのがミケランジェロのアイディアです。しかし、ピエタにおいてキリストを聖母マリアの膝の上に載せて描くのは絵画においては珍しくないが、彫刻においては困難であり、キリストが聖母マリアにもたれかかるような形をとることが多い。それは成人男性であるキリストの頭や足は当然聖母マリアの膝からはみ出ることとなり、その大理石の重さを支えるものがなくなるという力学的な理由からでした。それをミケランジェロは、聖母マリアのドレスを、三角形を描くという審美的な役割だけでなく、横たわるキリストの頭や足を支えるという物理的な役割をも果たすことで、解決したのでした。
ミケランジェロは、バッカス像とこのピエタの成功により名声を得て、芸術家としての地位を不動のものとするきっかけとなりました。多くの彫刻家が制作したピエタですが、弱冠23歳のミケランジェロが制作したピエタは、死せる息子キリストを抱える聖母マリアの悲しみに満ちた表情や筋肉や衣服の細密な描写など、それまでに彫刻されたピエタの表現を遥かに超えたものでした。
バチカンのサン・ピエトロ大聖堂所蔵。
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