ペルセウスとアンドロメダ

15世紀のイタリア人芸術家ジョルジョ・ヴァザーリの作品。
ヴァザーリは、ミケランジェロの弟子です。「画家、彫刻家、建築家列伝」の執筆で有名となり”最初の美術史家”と呼ばれています。
それでは、本作の場面を解説しましょう。
アンドロメダはエチオピアの王女です。ポセイドンの怒りを買い海獣の生贄にされそうになっているところを、ペルセウスが救いに出かけます。しかし、海獣には剣はまったく歯が立たちません。
そこで、ペルセウスはギリシア神話の怪物メドゥーサの首を取り出し、海獣を石に変え、王女を助け出しました。メドゥーサの首を海水に置くと、そこから流れた血がサンゴになりました。
本作では、岩に縛られた王女の鎖をペルセウスが外しています。また、アンドロメダの左足元にメドゥーサの首があります。メドゥーサの首から溢れたサンゴを男女が収穫しています。
興味深い作品ですが、残念ながら、絵画としての評価はさほど高くありません。
フィレンツェのヴェッキオ宮殿所蔵。
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3+

魔女キルケ

この絵画は16世紀フェラーラ派を代表する画家ドッソ・ドッシの作品で、難解で文学的な魅力に包まれた名作と言われています。
ドッソ・ドッシ独自の色彩による光と陰影の描写と安定的な構図が一体となった素晴らしい作品ですが、謎は尽きません。
この女性はだれ? 犬や鳥、それに鈍く光る甲冑はどういう意味? そして、画面右奥で語り合う3人の男たちはどういう人たち?
この謎を有望な説で解説していきましょう。
女性はキルケ。自身の敵と見做すものを、自らの魔力によって、ライオンや狼などの獣や怪物に変えてしまう魔女です。彼女は、呪術具らしき人形を見つめ、手には古文的文献と火が灯される松明が握られています。足下には円形の魔方陣や武具、幻想的な犬などが配され、キルケの魔女たる所以を表現しています。
画面右奥の3人の男は、オデュッセウス一行と思われます。これは伝説的逸話で、一行は魔女キルケによって豚に変えられてしまいますが、オデュッセウス自身はローマ神話の守護神、ヘルメスに授けられた薬草モーリュによって魔女キルケの魔法に打ち勝ちます。
一方、このような解説はさておき、魔女キルケの華麗な衣装には魅せられます。その魅力は安定的な構図に支えられており、後方の生き生きとした遠方まで見渡せる景色が引き立てているのです。
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3+

天上の愛と地上の愛

15世紀ルネサンス期ヴェネツィア派巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオの代表作。
この絵画はティツィアーノが29歳の時に描いたもので、若きティツィアーノの才能溢れる作品です。
それでは、具体的に見て行きましょう。
裸体で描かれた生命力に溢れるヴィーナス、輝きを帯びる美しい色彩、優雅で田園的な雰囲気等、ついつい見とれてしまいます。また、ヴィーナスがまとっている布の赤と、左の女性が着ている白いドレスの袖の赤が、画面のアクセントとなっています。
そして、ヴィーナスが天上の愛、その左の女性が地上の愛の象徴です。ヴィーナスが着衣の女性に語り掛けている動作は、地上の愛が天上の愛へと高まっていくことを教え示唆しています。
ボルゲーゼ美術館(ローマ)所蔵。
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2+

受胎告知

15世紀のヴェネツィア画家カルロ・クリヴェッリの代表作。
カルロ・クリヴェッリは、遠近法と金属的で硬質な線描を用い、古典芸術を表現した画家です。
この作品でも、当時最新の絵画理論であった遠近法を大胆に使い、金属的で硬質な線描で狭い空間が描かれ、カルロ・クリヴェッリの画風が遺憾なく発揮されています。
また登場人物も個性的で、祈祷台で祈る聖母マリア、父なる神の意志を示す白い鳥に姿を変えた聖霊、聖胎を告げる大天使ガブリエル、大天使ガブリエルの隣では、アスコリ・プチェーノ市の模型を持つ同市の守護聖人エミグディウスが描かれている逸品です。
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2+

シュザンヌ・フールマンの肖像

ピーテル・パウル・ルーベンスの代表的な肖像作品。
ルーベンスの内面をも描き出す洞察力と、それを的確に表現する描写力が存分に発揮された作品です。
具体的に見て行きましょう。
透明に輝く白い肌とピンクに染まった頬、大きな瞳、丸々しい肉感的な人物描写。
そして身なりの良い洗練された衣装。そこには、女性としての柔らかさと優しさが感じられます。
そして何よりも注目すべきは、女性の力強い眼差し。被写体の凛とした内面をも見事に表現された作品です。
ナショナル・ギャラリー(イギリス)所蔵。
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3+

ミッデルハルニスの並木道

オランダ画家メインデルト・ホッベマの代表作。17世紀のオランダ風景画に於いて、最も有名な作品のひとつです。
斬新かつ均衡がとれた構図。そして、鑑賞者を画面へと引き込む為に、様々な仕掛けを張り巡らした作品です。
それでは具体的に見て行きましょう。
地平線を低くとり、大地の広がりの中央手前から一直線に伸びる並木道が、シンメトリーの構図で描かれています。そして雲の配置は、北国の冷たく澄んだ、さわやかな空気と湿った大地を連想させます。
また前景に描かれたポプラの木と奥のポプラの木では、高さが大きく異なっています。この効果により、一段と高い塔をもつ教会がある村までの距離は、見た目以上に遠い事が判ります。
そして、肩に銃を乗せた狩人が、犬を連れてこちらに歩いて来ています。狩人の頭が、遠近法における消失点と一致していて、狩人とは、いずれすれ違うのではないかと思わせます。鑑賞者の視線は、ふと気が付くと中央の景観に引き込まれています。
ナショナル・ギャラリー(イギリス)所蔵。
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2+

秋の風景

ピーテル・パウル・ルーベンスの代表作。
ルーベンスは外交官としても活躍しましたが、晩年、ステーン城を買い取り引退生活を送ります。本作は引退生活中に描いたもので、遠景に広がる風景がパノラマを観ている様で素晴らしい!
具体的に見て行きましょう。
画面では朝の光を受けて田園風景が広がり、左手奥にはステーン城が見えます。地平線は高い位置に置かれ、大地は豊穣を表すかのように画面の3分の2を占めています。無限に広がっていく空などは、まさにパノラマを観ている様です。
ナショナル・ギャラリー(イギリス)所蔵。
※ステーン城はその後、要塞や牢獄として使用され、19世紀の大規模な改修を経て海洋博物館となりました。現在でも町の観光名所のひとつとなっています。
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2+

聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ

14世紀のイタリア芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチの作品。
幼児キリストを抱く聖母マリアがその母である聖アンナの膝に座り、その右にキリストの従兄弟の幼児聖ヨハネが立ってるシーンを描いています。
リズム感と安定感が両立し、視線の向きから登場人物の関係性も見て取れる傑作。そして、聖アンナの人差し指の仕草。これはダ・ヴィンチ作品の典型とも言われる仕草です。
それでは、具体的に見て行きましょう。
聖マリアと聖アンナの足を上下方向に描き、絵にリズム感を与える共に、聖アンナの両脚はしっかりと地面を踏みしめ、安定感も与えています。
そして、各人物の顔を照らし出す光から、この作品の主人公は二人(聖マリアとキリスト)で、あとの二人は脇役として配されていることが分かります。
また4名の視線は密接に関連しており、娘マリアを見つめる聖アンナの視線は、「いつの世の人もわたしを幸せな者と呼ぶ」(聖歌マニフィカト)と称賛される聖マリアへの畏敬と娘を誇らしく思う母親の気持ちを表しています。
一方、聖マリアの視線はキリストに注がれ、そのキリストは、30年後に自身に洗礼を施すことが運命づけられた従兄弟の聖ヨハネの頭上に、手をかざし祝福を与えています。
その背景に描かれた聖アンナの人差し指は、真っすぐ天を指しており、祝福が天に由来することを表しています。
聖アンナのこの仕草は多くのダ・ヴィンチ作品で見られ、「最後の晩餐」の使徒トマスや「洗礼者聖ヨハネ」でも同様の仕草が描かれています。
ナショナル・ギャラリー(イギリス)所蔵。
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2+

暖炉衝立の前の聖母子

初期フランドル派の画家ロベール・カンパンの作品。
ロベール・カンパンは、油絵具で物体の立体感を実現したパイオニアです。
油彩という新しい技法で明暗を描き出し、絵画に立体感や複雑な遠近感などを表現しました。
具体的に見て行きましょう。
この作品では、布地や聖母の左に置かれた聖書に「質感」が感じられます。
油絵具の明暗を巧みに使って「質感」を表現しているのです。
ナショナル・ギャラリー(イギリス)所蔵。
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2+