荊冠のキリスト

15世紀ルネサンス期のネーデルラント(フランドル)の画家、ヒエロニムス・ボスの作品。
ボスの絵画は、聖書に基づく寓話を題材にした幻想的で怪異な作風が特徴であり、それぞれの主題や制作意図も謎に満ちていると言われます。その作風はピーテル・ブリューゲルを始めとする後世の画家に大きな影響を与えました。
それでは、本作を見て行きましょう。
主題はキリスト受難の逸話「裁かれるキリスト」です。マルコ伝によると「兵士たちはイエスを総督官邸に連れて行き、紫の衣を着せ、荊冠を編んで被らせた」となっています。左の兵士は荊冠をイエスにかけようとし、右下の男は衣を着せかけています。しかし衣の色は紫ではなく、やや赤みかかった白です。
これはボスの創意で、白い衣とキリストの白い顔を無垢なものとして浮かび上がる事を狙っていると言われていますが、本当のところは謎です。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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2+

キリストの磔刑

15世紀を代表するパドヴァ派の画家、アンドレーア・マンテーニャの代表作。
パドヴァ派は、古典的なモティーフを題材に、鋭い彫刻的な線や短縮法、遠近法を用い、劇中を思わせる現実味を帯びた絵画を作り出しました。
具体的に見て行きましょう。
キリストが十字架に架けられた場面を描いています。鋭利で硬質的に描かれた大地。これはマンテーニャが得意とした表現手法です。大地と十字架で明確な遠近法が用いられ、磔刑に処されるイエスの深い表情には聖性を感じます。
このようにして、マンテーニャは絵画に劇中を思わせる様な現実味を与えることに成功しているのです。
ルーブル美術館所蔵。
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3+

長い首の聖母

イタリアの画家パルミジャニーノの作品で、マニエリスムの中で最も優美な作品のひとつです。
それでは、マニエリスムの特徴からこの作品を観て行きましょう。
聖母マリアの身体はが長く引き伸ばされ、身をくねらせています。これがマニエリスムの特徴です。そして、どこか非現実的な明暗となまめかしい色彩と聖母マリアの魅惑的で艶かしい眼差しは、宗教的礼拝像としては、並外れて優美で官能的です。
また聖母マリアの膝で眠る幼児キリストの身体も引き伸ばされています。
聖母マリアの膝の上で安心してぐっすりと眠り込んでいるように見えますが、
青ざめた額と力なく垂れ下がる左腕は将来やってくる受難の悲劇を暗示しているかのようです。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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2+

ブレラ祭壇画

本作品は、ミラノのブレラ絵画館の至宝のひとつともいわれる、「ブレラの祭壇画」です。
絵の中心には、聖母マリアが膝に乗せたわが子イエスを拝んでいます。聖母マリアを囲む聖人は、向かって左から、洗礼者ヨハネ、シエナの聖ベルナルティーノ、聖ヒエロニムス、右側には手に聖痕をもつ、聖フランチェスコ、殉教者聖ピエトロ、福音書のヨハネが描かれています。
この作品を描いたピエロ・デッラ・フランチェスカは、1400年代のイタリアに於ける遠近法の第一人者で、後世に大きな影響を与えました。
具体的に見て行きましょう。
聖母や聖人の頭上に描かれた天井、貝殻をかたどった壁がん、上からつるされた卵。この作品の遠近法と絶妙な配置が見るものを圧倒します。
天井から下がる卵は、「(神が作りだした)完璧」の象徴と伝えられており、この作品の中心に位置し、構図をいっそう完全にする役割を果たしています。
この作品の奥行、光線と影、人物と背景のとぎれることのない連結感など、この作品が後世に与えた影響は計り知れません。
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2+

大公の聖母

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶ盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、ラファエッロ・サンティの作品。ラファエッロは多くの聖母子像を描きましたが、中でもこの作品は傑作として名高く、幾世紀にも渡り完璧な絵の典型とされてきました。
若きラファエッロは、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けたと言われます。この作品にもレオナルド・ダ・ヴィンチの影響が感じられます。
さて、レオナルド・ダ・ヴィンチから受けた影響とは何でしょうか?
それは、スフマート技法です。スフマート技法とは、深み、ボリュームや形状の認識を造り出すために色彩の透明な層を上塗りする技法です。
当時のルネサンス期のマリア像は、あまりに世俗的、官能的になり過ぎていると感じていた、ラファエロは、スフマート技法を用い、幻のように神秘的にかつ、優雅なバランスと調和を絵画上に実現しました。
甘美で心和む安心感ある作品。これがラファエッロの絵画です。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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2+

聖母子と天使たち

この作品は初期ルネサンスを代表するフィレンツェ派の巨匠、フラ・フィリッポ・リッピの名作と言われる作品です。
フィリッポ・リッピは、この作品で2つの画期的な試みを行っています。
具体的に見て行きましょう。
まず一つ目。通常イエスを抱いて描かれる聖母マリアが合掌してわが子を拝んでいます。これは後に「謙遜の聖母」と呼ばれ、マリアが自分の母性としての主張はせず、自分もまたイエスの下にあることを示しています。一方、聖母マリアの息子イエスを見つめる視線は、我が子への慈愛と未来への不安の表情が虚ろいながら複雑に入り混じり、聖母の感情を見事に表現しています。
そして、二つ目。それは背景の描き方です。窓の手前(室内)に聖母子を中心とする人物、窓の外に景色が描かれています。これは当時は斬新な構図で、レオナルド・ダ・ヴィンチの「空気遠近法」も、この背景の描き方をヒントに開発したと言われています。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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3+

聖母子と聖女カタリナとマグダラのマリア

15世紀イタリアルネサンス期の画家でベネチア派の巨匠と呼ばれている、ジョヴァンニ・ベッリーニの代表作。
ベネチア派は、流動的で詩的な雰囲気の中で人間の感覚に直接訴えかける効果を追求した画派です。
それでは、この作品でのベネチア派の特徴を見て行きましょう。
敢えて遠近法は使わず、暗黒の空間に柔らかい燈火がしたから射し、聖女カタリナ(右側)やマグダラのマリア(左側)、聖母マリア(中央)の顔が浮かび上がっています。そこには深い神秘性が感じられます。これが人間の感覚に訴えかけるベネチア派の特徴です。
ベネチアのアカデミア美術館所蔵。
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2+

フォリーニョの聖母

盛期ルネサンスのイタリア画家、ラファエッロの作品です。
聖母マリアはキリストを抱きかかえながら雲の上に腰掛けています。その左側には洗礼者ヨハネと聖フランチェスコ、右側には聖ヒエロニムスとシジスモンド・デ・コンティが描かれています。
洗礼者ヨハネは観客に向かって聖母マリアを指さし、聖フランチェスコも聖ヒエロニムスも皆、天の聖母マリアを仰ぎ見ています。観客を天上の幻想を観ている気分にさせる作品です。
バチカン美術館所蔵。バチカン美術館は撮影禁止なので、写真は大塚美術館の模造品です。
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2+

キリストの埋葬

当絵画は初期バロック美術の巨匠カラヴァッジョの円熟期の傑作と言われる作品です。
この作品でカラヴァッジョは光と影のコントラストや対角線構図法を駆使しています。具体的に見て行きましょう。
暗闇から登場人物を浮かび上がらせる明暗対比、下から見上げるように描かれた仰角表現、キリストの足を中心に人物たちの手や足が放射状に広がる動的な構図、キリストの足を抱える男の肘や画面下の墓石の角がこちらに突き出してくるような遠近表現。バロック絵画の醍醐味がこの1枚に凝縮されています。
バチカン絵画館所蔵。
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