バッカナリア 愛の争い ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品です。
バッカナリアとは、古代ギリシアの酒と収穫の神バッカスを祀る祝祭で、神々などに扮した祭りの踊り手たちは、足を踏鳴らして渦巻状に踊り、愛、酒、歓喜と喜びの恍惚状態となります。
それでは具体的に観て行きましょう。
森の中で男女や女と女の愛の争いが繰り広げられる情景が描かれています。セザンヌ独特の荒々しく劇場的な筆触により、愛の争いを表現しており、男女らの姿は非常に暴力的です。
右から3番目の金髪をなびかせた女同士による愛の争いの姿は神話の一場面のような雰囲気を醸し出しています。左側の2本の木は、立っている姿と逆さになっています。更に、右下の興奮しながら吠えている一匹の黒犬が、アクセントとなっています。
ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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アルルカン(道化師) ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品です。
セザンヌの息子ポールをモデルにアルルカン(道化師)を画題に描いた作品です。
この時セザンヌが探究したのは、空間における人体の形と動きの表現でした。
それでは具体的に観て行きましょう。
灰色を基調とし、緑、青、紫、褐色が混ぜられた壁面と赤味がかった床は、赤と黒の菱形模様の衣装を着て帽子をかぶり、左手にバトンを持つ彼の姿を際立たせています。息子ポールの顔立ちは簡素化されており、その表情は、まるでマネキンのように無表情な印象を受けます。
衣服の奇抜性と、まるでマネキンを思わせるような表情の無いアルルカンの人物像と組み合わさることで、現実味の薄れた革新的な対象のイメージを生み出しています。
また息子ポールは右足を一歩前に踏み出していますが、この頭部と足が画面からはみ出すほど、前進する動きを強調しています。
この時セザンヌが探究したのは、空間における人体の形と動きの表現でした。
ワシントンDCのナショナル・ギャラリー所蔵。
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ルイ=オーギュスト・セザンヌの肖像 ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌが27歳の時の作品です。
セザンヌが画家になることを反対していた銀行家の父、ルイ=オーギュスト・セザンヌの肖像画です。セザンヌにとって、父は堅牢な抑圧の象徴であり、かつ、敬愛の対象でもありました。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面のほぼ中央の背もたれの高いソファに座り、熱心にレヴェヌマン紙に目を落とす初老の男性が、セザンヌの父、ルイ=オーギュストです。威圧的にすら感じられるほど威厳に満ちた姿で描かれています。
背後の壁にはセザンヌ自身が描いた静物画作品が掛けられています。この静物画の重々しさを感じさせる光と陰影の対比、褐色の対象描写、そして父ルイ=オーギュストに落ちる深い陰を通して、セザンヌは父との複雑な関係性を表現したのでした。
ワシントンDCのナショナル・ギャラリー所蔵。
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ジネヴラ・デ・ベンチの肖像 レオナルド・ダ・ヴィンチ

15-16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作は、有名な銀行家の一族アメリゴ・デ・ベンチの娘、ジネヴラの結婚記念に描かれた肖像画です。この時ジネヴラは16歳でした。
それでは具体的に観て行きましょう。
描かれているジネヴラは美しいが、その表情は厳しく引き締まっています。微笑みは浮かんでおらず、前を向く視線は鑑賞者に向けられることなく超然としたものに見えます。ジネヴラの結婚は20歳以上歳の離れた政務官との結婚であり、その表情には緊張感が現れています。
本作の裏面には、裏面には「VIRTVTEM FORMA DECORAT (美は徳を飾る)」と記されています。

ジネヴラ・デ・ベンチの肖像の裏面

これは、ジネヴラの知性と有徳の象徴と言われており、月桂樹と椰子に囲まれたセイヨウネズはイタリア語で「ginepro」であり、そ の小枝はジネヴラの名前 「Ginevra」でもあります。
ワシントンDCのナショナル・ギャラリー所蔵。
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グルメ パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの青の時代(※1)の代表作です。
作品では、小さな子供が大きなボールを両手で抱え、底に残っている最後の一口をスプーンで掬い取ろうとしている様子を描いています。青色以外に白色、黄色、オレンジ色など明るい色遣いが特徴的な作品です。
そして、作品では、青色とコバルト色で塗られたキャンバスの下に女性の肖像画が隠されています。当時、ピカソには金銭的な余裕がなく、新しいキャンバスを購入できなかった為、一度描いた作品を塗りつぶしたうえで別の作品を描き直すことも多かったと言われており、青青の時代の作品には、別の絵画が隠された作品がたくさん見つかっています。
※1:青の時代(1901年 – 1904年):ピカソが19歳のとき、親友のカサヘマスが自殺したことに大きなショックを受け、鬱屈した心象を、無機顔料の青を基調に使い、盲人、娼婦、乞食など社会の底辺に生きる人々を題材にした作品を多く描いた時代。
ワシントンDCのナショナル・ ギャラリー・オブ・アート所蔵。
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サルタンバンクの家族  パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの作品です。
本作は、ピカソの「バラ色の時代」(※1)の代表作です。
それでは具体的に観て行きましょう。
砂漠を背景として巡業するサーカス芸人のサルタンバンク一家を描いています。常に一緒に行動しているように見えるサーカス芸人たちだが、絵の中の6人は互いに目を合わさず、コミュニケーションのようなものは感じられません。
ピカソはサルタンバンク一家を通して、自分自身を描いており、独立精神」「孤独」「貧しさ」「放浪」を表現しました。そのため、背景はパリではなく砂漠に設定されています。
ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵。
※1:ばら色の時代(1904年 – 1906年):ピカソがフェルナンド・オリヴィエという恋人を得て、サーカスの芸人、家族、兄弟、少女、少年などを題材に明るい色調で描いた時代。
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ラ・ムスメ(少女の肖像) ファン・ゴッホ

オランダのポスト印象派の画家、フィンセント・ファン・ゴッホの作品です。
ゴッホは、浮世絵など日本に憧れを抱いていたことで有名ですが、本作は作品名に日本語の「娘(ムスメ)」が付けられた作品です。
具体的に観て行きましょう。
日本語の「娘(ムスメ)」という名前が付いているものの、描かれている娘に日本的特徴は殆どなく、顎が小さくやや膨らんだ頬など少女の顔立ちに僅かな異国情緒と東洋的なイメージが若干感じられる程度です。
丸みのある椅子に腰掛けた若い娘は、少し緊張の表情を浮かべながら、左手には花を持っています。
刺激的で、ある意味幻覚的な衣服や水玉模様のスカートに用いられている赤や青、橙などの原色と、背景の水色の使用などに、ゴッホ独特の色彩感覚が表れています。
ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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アルジャントゥイユの橋 クロード・モネ

19世紀フランス印象派の巨匠、クロード・モネの作品です。
モネはセーヌ川とこれに架かる橋を繰り返し描きました。その中でも本作は、色彩分割による印象主義的表現の完成度が高い作品と言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作はパリの北西、セーヌ川右岸にある街、アルジャントゥイユにある橋の情景を描いた作品です。変幻自在の水の戯れと水面に揺れる光、空、雲に対し、その上に架かる橋は揺るぎない存在感を示しています。
両者の堅(橋)と軟(水)、静(橋)と動(水と光)、あるいは人工(橋)と自然(水と光、雲)の対比がされています。また、岸辺の草木から無人のボートを経て川面を滑るヨットの白い帆、さらに向こう岸の家に至るまでの自然に空間表現が見事です。
これらは、色彩分割(絵具を混合させない筆触分割)による水面の描写が土台となって成立しています。
ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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光輪のある自画像 ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの自画像代表作です。
それでは具体的に観て行きましょう。
赤一色の背景をバックにし、ゴーギャンの頭上には光輪が描かれており、己の姿を聖なる存在として表現しています。絵の手前には花と植物が、そして、ゴーギャンのすぐ傍にはりんごが2個ぶら下がっており、手の指と指の間には蛇も描かれている奇妙な作品です。
この作品から、ゴーギャンが浮世絵やクロワゾニスム(※1)の影響を受けていることが判ります。
ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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※1:クロワゾニスムとは、対象の質感、立体感、固有色などを否定し、輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する描写方法で、ポスト印象派の様式です。

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