ブレラ祭壇画

本作品は、ミラノのブレラ絵画館の至宝のひとつともいわれる、「ブレラの祭壇画」です。
絵の中心には、聖母マリアが膝に乗せたわが子イエスを拝んでいます。聖母マリアを囲む聖人は、向かって左から、洗礼者ヨハネ、シエナの聖ベルナルティーノ、聖ヒエロニムス、右側には手に聖痕をもつ、聖フランチェスコ、殉教者聖ピエトロ、福音書のヨハネが描かれています。
この作品を描いたピエロ・デッラ・フランチェスカは、1400年代のイタリアに於ける遠近法の第一人者で、後世に大きな影響を与えました。
具体的に見て行きましょう。
聖母や聖人の頭上に描かれた天井、貝殻をかたどった壁がん、上からつるされた卵。この作品の遠近法と絶妙な配置が見るものを圧倒します。
天井から下がる卵は、「(神が作りだした)完璧」の象徴と伝えられており、この作品の中心に位置し、構図をいっそう完全にする役割を果たしています。
この作品の奥行、光線と影、人物と背景のとぎれることのない連結感など、この作品が後世に与えた影響は計り知れません。
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大公の聖母

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶ盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、ラファエッロ・サンティの作品。ラファエッロは多くの聖母子像を描きましたが、中でもこの作品は傑作として名高く、幾世紀にも渡り完璧な絵の典型とされてきました。
若きラファエッロは、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けたと言われます。この作品にもレオナルド・ダ・ヴィンチの影響が感じられます。
さて、レオナルド・ダ・ヴィンチから受けた影響とは何でしょうか?
それは、スフマート技法です。スフマート技法とは、深み、ボリュームや形状の認識を造り出すために色彩の透明な層を上塗りする技法です。
当時のルネサンス期のマリア像は、あまりに世俗的、官能的になり過ぎていると感じていた、ラファエロは、スフマート技法を用い、幻のように神秘的にかつ、優雅なバランスと調和を絵画上に実現しました。
甘美で心和む安心感ある作品。これがラファエッロの絵画です。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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聖母子と天使たち

この作品は初期ルネサンスを代表するフィレンツェ派の巨匠、フラ・フィリッポ・リッピの名作と言われる作品です。
フィリッポ・リッピは、この作品で2つの画期的な試みを行っています。
具体的に見て行きましょう。
まず一つ目。通常イエスを抱いて描かれる聖母マリアが合掌してわが子を拝んでいます。これは後に「謙遜の聖母」と呼ばれ、マリアが自分の母性としての主張はせず、自分もまたイエスの下にあることを示しています。一方、聖母マリアの息子イエスを見つめる視線は、我が子への慈愛と未来への不安の表情が虚ろいながら複雑に入り混じり、聖母の感情を見事に表現しています。
そして、二つ目。それは背景の描き方です。窓の手前(室内)に聖母子を中心とする人物、窓の外に景色が描かれています。これは当時は斬新な構図で、レオナルド・ダ・ヴィンチの「空気遠近法」も、この背景の描き方をヒントに開発したと言われています。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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聖母子と聖女カタリナとマグダラのマリア

15世紀イタリアルネサンス期の画家でベネチア派の巨匠と呼ばれている、ジョヴァンニ・ベッリーニの代表作。
ベネチア派は、流動的で詩的な雰囲気の中で人間の感覚に直接訴えかける効果を追求した画派です。
それでは、この作品でのベネチア派の特徴を見て行きましょう。
敢えて遠近法は使わず、暗黒の空間に柔らかい燈火がしたから射し、聖女カタリナ(右側)やマグダラのマリア(左側)、聖母マリア(中央)の顔が浮かび上がっています。そこには深い神秘性が感じられます。これが人間の感覚に訴えかけるベネチア派の特徴です。
ベネチアのアカデミア美術館所蔵。
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フォリーニョの聖母 ラファエッロ・サンツィオ

盛期ルネサンスのイタリア画家、ラファエッロの作品です。
聖母マリアはキリストを抱きかかえながら雲の上に腰掛けています。その左側には洗礼者ヨハネと聖フランチェスコ、右側には聖ヒエロニムスとシジスモンド・デ・コンティが描かれています。
洗礼者ヨハネは観客に向かって聖母マリアを指さし、聖フランチェスコも聖ヒエロニムスも皆、天の聖母マリアを仰ぎ見ています。観客を天上の幻想を観ている気分にさせる作品です。
バチカン美術館所蔵。バチカン美術館は撮影禁止なので、写真は大塚美術館の模造品です。
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キリストの埋葬

当絵画は初期バロック美術の巨匠カラヴァッジョの円熟期の傑作と言われる作品です。
この作品でカラヴァッジョは光と影のコントラストや対角線構図法を駆使しています。具体的に見て行きましょう。
暗闇から登場人物を浮かび上がらせる明暗対比、下から見上げるように描かれた仰角表現、キリストの足を中心に人物たちの手や足が放射状に広がる動的な構図、キリストの足を抱える男の肘や画面下の墓石の角がこちらに突き出してくるような遠近表現。バロック絵画の醍醐味がこの1枚に凝縮されています。
バチカン絵画館所蔵。
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教皇インノケンティウス10世の肖像

バロック期のスペインの画家ディエゴ・ベラスケスの最も有名な肖像画です。
ベラスケスは、卓越した人間観察によって被写体の内面までも深く掘り下げた肖像画を描きました。
本作を見て行きましょう。
赤と白で構成された画面は、鑑賞者に威圧的な印象を与えます。
教皇が身に着けている上着と帽子、椅子に張られた生地、背景の緞帳の赤が画面の1/3を、残りを下衣の白が占めています。背後は緞帳によって覆われ、余計なものは一切描かれていません。圧迫的な赤によって息苦しささえ感じる閉ざされた空間の中で、ただ1人で座りこちらに鋭い眼差し向ける教皇。
最高位の聖職者が備えていると思われる寛容で尊大な雰囲気とは異なる、抗えない威圧感を放つ肖像画です。ローマのドーリア・パンフィーリ美術館所蔵。
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聖女ペトロネラの埋葬と被昇天

17世紀のバロック期の画家絵画グェルチーノの作品。
本作はバチカンのサン・ピエトロ大聖堂向けに描かれた祭壇画で、現在はローマのカピトリーノ美術館で展示されています。
画面の下半分に聖ペトロネラ(聖ペトロの娘)が埋葬されるシーンを描き、上半分に彼女がキリストに迎えられるシーンを描いています。聖ペトロネラのガウンは目立つ赤色で描かれていますが、全体としては涼しく描かれた天国の色の方が記憶に残ります。
下半分の俗世と上半分の超自然現象の二つの出来事を混在させることで、鑑賞者が聖ペトロネラの埋葬に立ち会い、かつ、彼女と共にキリストに迎えられているように感じるのです。
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果物籠

16世紀後半から17世紀初頭のバロック絵画最大の巨匠カラヴァッジョによる静物描写の代表作。
カラヴァッジョの徹底したリアリズムが遺憾なく発揮された作品です。
それでは、具体的に見て行きましょう。
果実の描写は、その瑞々しさと同時に腐敗を見せるそれぞれの側面を忠実に描がいています。そして、枯れる葉の乾いた質感。それまで描かれてきた典型的な静物画では見られることの無かった醜く枯れる葉を、他の果物と同様に主役として描いています。
「瑞々しく美しい果物の描写のみならず、枯れ朽ちる葉や腐敗する果実など、醜さや下劣とされる描写まで、徹底したリアリズムを以って現実を描く」それがカラヴァッジョの静物画です。
ミラノのアンブロジアーナ絵画館所蔵。
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