セーヌ川の舟遊び オーギュスト・ルノワール

19世紀フランス印象派の巨匠、ピエール=オーギュスト・ルノワールの作品。
ルノワールは、物の固有色という固定観念を否定し、目に映る色彩をそのままキャンバスに写し取ろうとしました。また、パレット上で絵具を混ぜず、細かなタッチをキャンバスに並べることで、臨場感を伝えるとともに、思い切った輪郭線をぼかす手法を使って、絵画を描きました。
それでは、具体的に観て行きましょう。
明るい陽光あふれるセーヌ川に浮かぶボート。ボートに乗る二人の女性の白いドレスは、さわやかな季節を感じさせます。
彼女たちは簡単なタッチで描かれ、顔はほとんど特定できませんが、思い切った輪郭線をぼかす手法を使って、この憩いの場の幸福感、高揚感を表現しています。
また、何よりも、自然の光とこれを映した水面が、この絵の主題としてクローズアップさせることに成功しています。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

カナル・グランデのレガッタ

18世紀イタリアを代表する稀代の景観画家と言われる、カナレットの作品です。
カナレットの作品は、大気性を感じさせる開放的な景観表現とそれを支える幾何学的な遠近法、輝きを帯びた繊細な色彩、そして、絶妙に対比された明暗と光の描写が特徴です。
それでは具体的に観て行きましょう。
遠近法を駆使して整然と描き出された眺望は、写真のような正確さです。明るい陽光の下、広々とした大運河を舞台にレガッタ(ゴンドラでのレース)が繰り広げられ、賑やかな祝祭的雰囲気が伝わってくる作品です。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

サン・マルコ広場

18世紀イタリアを代表するヴェネツィアの景観画家、フランチェスコ・グアルディの作品です。
グアルディは、実在する風景と空想上のものとを組み合わせた奇想画を得意とし、幻想的で叙情性に富んだ都市景観表現を確立した画家です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作品は、ベネチアで最も有名な広場、サン・マルコ広場を描いたものです。
振るえを帯びた即興的な筆触。そして明暗の対比を強調した繊細な光の表現。これにより作品から抒情的で幻想的な雰囲気が漂ってきます。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

干し草車

同時代のウィリアム・ターナーと共に、19世紀イギリスを代表する風景画家、ジョン・コンスタブルの代表作です。
コンスタブルは伝統的な風景画様式から逸脱し、風景の中に己が感じる美しさを独自の感覚で捉え表現しました。また、いつの頃からか、画面のアクセントとして赤い色を使うようになりました。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品もコンスタブルの故郷の光景です。犬だけが顔を上げ、空の荷馬車がウイリー・ロットの家の脇でストゥア川を渡って、遠景の牧草地に向かおうとしています。
今にもパタパタと動き出しそうな犬の尻尾は、僅かなタッチで表現され、小川の輝きも、粗い塗りの白いハイライトに過ぎません。それでいて明るく輝いています。
この素早いタッチ、新鮮な色彩、光の輝きに、コンスタブル独自の感覚が表現されています。そして、画面のアクセントとして、鞍に赤が使われています。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

麦畑

同時代のウィリアム・ターナーと共に、19世紀イギリスを代表する風景画家、ジョン・コンスタブルの作品です。
コンスタブルは伝統的な風景画様式から逸脱し、風景の中に己が感じる美しさを独自の感覚で捉え表現しました。
この作品はコンスタブルの故郷の光景です。夏の昼下がり、羊番の少年が澄んだ小川で喉の渇きを癒し、辺りには夏草が咲き乱れています。
黄金に色づく風景の中で、羊番の少年の赤い服がアクセントになっています。長閑で美しい田舎の一場面を描いた作品です。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

雨、蒸気、速力:グレート・ウエスタン鉄道

19世紀イギリスのロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの晩年の傑作です。ターナーは、写実的に描くのではなく、雲、光、風、大気等をメインに描く作品を多く残しました。
それでは具体的に観て行きましょう。
雨が横殴りに降り、霧が一面に立ちこめる中で、蒸気機関車が猛スピードで近づいています。鉄橋の下には川が流れていますが、その川も陸も空もほとんど見分けがつきません。
ターナーは「蒸気と速力」そのものをメインに、本作を描いているのです。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号

19世紀イギリスのロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの代表作です。
ターナーは、自らの理想とする光と大気の世界を追い求めました。
この作品中でも画面を大きく占めている夕日が印象的です。薄く塗られた絵の具に対し、夕日の部分だけ厚く塗られています。
戦艦テメレール号が、これから解体される場面を描いていますが、本当は昼間の時間帯だったそうです。
しかしターナーは終焉としての意味を持たせるために、あえて夕景として描いたのだと言われています。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

ひまわり(4作目)

オランダのポスト印象派の画家、フィンセント・ファン・ゴッホの代表作です。
ゴッホは「ひまわり」を7点制作し、このうち6点が現存しています。
本作品は、ゴッホが描いた4作目の「ひまわり」です。「ひまわり」の花の数は、3作目よりも更に増えています。ゴッホにとって黄色は「聖なる色」であり、本作では、背景まで黄色で統一されています。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵
<MAP>

荊冠のキリスト

15世紀ルネサンス期のネーデルラント(フランドル)の画家、ヒエロニムス・ボスの作品。
ボスの絵画は、聖書に基づく寓話を題材にした幻想的で怪異な作風が特徴であり、それぞれの主題や制作意図も謎に満ちていると言われます。その作風はピーテル・ブリューゲルを始めとする後世の画家に大きな影響を与えました。
それでは、本作を見て行きましょう。
主題はキリスト受難の逸話「裁かれるキリスト」です。マルコ伝によると「兵士たちはイエスを総督官邸に連れて行き、紫の衣を着せ、荊冠を編んで被らせた」となっています。左の兵士は荊冠をイエスにかけようとし、右下の男は衣を着せかけています。しかし衣の色は紫ではなく、やや赤みかかった白です。
これはボスの創意で、白い衣とキリストの白い顔を無垢なものとして浮かび上がる事を狙っていると言われていますが、本当のところは謎です。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

Copyrighted Image