聖母子と天使たち

この作品は初期ルネサンスを代表するフィレンツェ派の巨匠、フラ・フィリッポ・リッピの名作と言われる作品です。
フィリッポ・リッピは、この作品で2つの画期的な試みを行っています。
具体的に見て行きましょう。
まず一つ目。通常イエスを抱いて描かれる聖母マリアが合掌してわが子を拝んでいます。これは後に「謙遜の聖母」と呼ばれ、マリアが自分の母性としての主張はせず、自分もまたイエスの下にあることを示しています。一方、聖母マリアの息子イエスを見つめる視線は、我が子への慈愛と未来への不安の表情が虚ろいながら複雑に入り混じり、聖母の感情を見事に表現しています。
そして、二つ目。それは背景の描き方です。窓の手前(室内)に聖母子を中心とする人物、窓の外に景色が描かれています。これは当時は斬新な構図で、レオナルド・ダ・ヴィンチの「空気遠近法」も、この背景の描き方をヒントに開発したと言われています。
フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
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聖母子と聖女カタリナとマグダラのマリア

15世紀イタリアルネサンス期の画家でベネチア派の巨匠と呼ばれている、ジョヴァンニ・ベッリーニの代表作。
ベネチア派は、流動的で詩的な雰囲気の中で人間の感覚に直接訴えかける効果を追求した画派です。
それでは、この作品でのベネチア派の特徴を見て行きましょう。
敢えて遠近法は使わず、暗黒の空間に柔らかい燈火がしたから射し、聖女カタリナ(右側)やマグダラのマリア(左側)、聖母マリア(中央)の顔が浮かび上がっています。そこには深い神秘性が感じられます。これが人間の感覚に訴えかけるベネチア派の特徴です。
ベネチアのアカデミア美術館所蔵。
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オッディの祭壇画

盛期ルネサンスのイタリア画家、ラファエッロの作品です。
聖母マリアの死と天での栄光が同一画面に描かれています。下半分に聖母マリアが葬られた石棺が置かれています。使徒たちが石棺を開けたところ聖母マリアの姿はなく、ユリとバラが咲いていました。ユリは聖母マリアの純潔をバラは愛を表しています。
使徒たちは視線を天に向けます。天ではキリストから聖母マリアへ天の女王の冠を授けています。
バチカン美術館所蔵。バチカン美術館は撮影禁止なので、写真は大塚美術館の模造品です。
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フォリーニョの聖母 ラファエッロ・サンツィオ

盛期ルネサンスのイタリア画家、ラファエッロの作品です。
聖母マリアはキリストを抱きかかえながら雲の上に腰掛けています。その左側には洗礼者ヨハネと聖フランチェスコ、右側には聖ヒエロニムスとシジスモンド・デ・コンティが描かれています。
洗礼者ヨハネは観客に向かって聖母マリアを指さし、聖フランチェスコも聖ヒエロニムスも皆、天の聖母マリアを仰ぎ見ています。観客を天上の幻想を観ている気分にさせる作品です。
バチカン美術館所蔵。バチカン美術館は撮影禁止なので、写真は大塚美術館の模造品です。
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アテネの学堂

ルネサンス期のイタリアの画家ラファエッロ・サンティの作品。
本作はバチカン宮殿のラファエッロの間に飾られています。ラファエッロの間は、バチカン宮殿にある4つの部屋の総称で、教皇庁の一部として公開されています。
ラファエッロは、この作品で古代を題材に、遠近法による構成や巧みな人物配置、ダイナミックなポーズなど、ルネサンスの様式をすべて盛り込みました。
また、当時の絵画をモデルに古代の哲学者を描いています。
アーチの下に立つ中心人物の左がプラトンです。天を指さすプラトンのモデルは、レオナルド・ダ・ヴィンチの洗礼者聖ヨハネです。手前の机で頬杖をついている人物はへラクレトスで、モデルはミケランジェロの考える人です。
この作品の公開当時から評価が高く、ラファエッロの名前を世に知らしめた作品です。
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聖体の論議

このフレスコ画は、ルネサンス期のイタリアの画家ラファエッロ・サンティの作品です。
本作はバチカン宮殿のラファエッロの間に飾られています。ラファエッロの間は、バチカン宮殿にある4つの部屋の総称で、教皇庁の一部として公開されています。
ラファエロは本作で、天界と地上の両方に及ぶ一場面を描きました。
上部には光輪を背にするキリスト。その両隣に聖母マリアと洗礼者ヨハネ。その両脇にアダム、ヤコブ、モーセたちがいます。神は、キリストの上に鎮座し、黄金に輝く天界の光を制御しています。
地上には祭壇に聖体顕示台が置かれ、それを中心に大教皇や神学者らの他、ユリウス2世、シクストウス4世、ブラマンデ、フラ・アンジェリコが描かれています。
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キリストの埋葬

当絵画は初期バロック美術の巨匠カラヴァッジョの円熟期の傑作と言われる作品です。
この作品でカラヴァッジョは光と影のコントラストや対角線構図法を駆使しています。具体的に見て行きましょう。
暗闇から登場人物を浮かび上がらせる明暗対比、下から見上げるように描かれた仰角表現、キリストの足を中心に人物たちの手や足が放射状に広がる動的な構図、キリストの足を抱える男の肘や画面下の墓石の角がこちらに突き出してくるような遠近表現。バロック絵画の醍醐味がこの1枚に凝縮されています。
バチカン絵画館所蔵。
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教皇インノケンティウス10世の肖像

バロック期のスペインの画家ディエゴ・ベラスケスの最も有名な肖像画です。
ベラスケスは、卓越した人間観察によって被写体の内面までも深く掘り下げた肖像画を描きました。
本作を見て行きましょう。
赤と白で構成された画面は、鑑賞者に威圧的な印象を与えます。
教皇が身に着けている上着と帽子、椅子に張られた生地、背景の緞帳の赤が画面の1/3を、残りを下衣の白が占めています。背後は緞帳によって覆われ、余計なものは一切描かれていません。圧迫的な赤によって息苦しささえ感じる閉ざされた空間の中で、ただ1人で座りこちらに鋭い眼差し向ける教皇。
最高位の聖職者が備えていると思われる寛容で尊大な雰囲気とは異なる、抗えない威圧感を放つ肖像画です。ローマのドーリア・パンフィーリ美術館所蔵。
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聖パウロの回心

本作品は、初期バロック美術の巨匠カラヴァッジョの代表作。
ローマのサンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂の右壁に飾れれています。
本場面は聖パウロがまだサウロと呼ばれていたユダヤ教徒の時代に、キリスト教弾圧のためにダマスクスへ向かう道中、突然天からの光に照らされキリストの声を聞く瞬間を描いたものです。
それでは絵画を具体的に見て行きましょう。
まず、カラヴァッジョが得意とした光と影のコントラストにより、暗中に浮かび上がる聖パウロを描き、そこで驚きと躍動感を表現しています。
次に、この作品は斜め右方向から見ることを想定して描かれています。なぜならば本作品は礼拝堂の右壁に設置されることとなっていたためです。
右方向から本作を眺める時、鑑賞者視線はパウロの頭から足へと向かう方向に誘われ、自然と礼拝堂内の奥の主祭壇へと導かれます。カラヴァッジョは鑑賞者がどの角度から絵画をみることになるかも考慮して制作したのでした。
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