ガラティアの勝利 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1512年)です。
ガラティアの勝利とは古代ギリシャの神話で、海の精ガラテイアは、島の羊飼いアーキスと恋に落ちました。けれども、ガラテイアを慕う隻眼の巨人ポリュペーモスが愛し合う2人を見つけて、巨大な岩を投げ落とし、アーキスを殺してしまうという物語です。
ラファエッロは、物語の主要な場面ではなく、海の精の真髄という場面を選んで描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
イルカの引く貝殻の船に乗り、顔は空から矢を射んとする愛の女神キューピッドの方を向き、波立つ海面を進むガラディアが描かれています。ガラティアの周りにはポセイドンの息子たちである半魚人トリトンや海の妖精ネレイデスなどが居ます。
ネレイデスは伝承に登場する妖精ニンフの一種で、最も神に近い存在として考えられ永遠の命を持つとされています。またトリトンは海神ポセイドンの息子で、知性が非常に高く三つ又の槍やほら貝を手にしています。トリトンは一人ではなく、複数の者の総称です。
ヴィラ・ファルネジーナ(ローマ)所蔵。
<MAP>

キリストの遺骸の運搬 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1507年)です。
ラファエッロ初期の代表作で「ボルゲーゼの十字架降下」とも呼ばれています。 バリオーニ家の青年がペルージアで惨殺された追悼として、母親のアタランタ・バリオーニの依頼により制作されました。
それでは具体的に観て行きましょう。
処刑されたイエス・キリストの遺骸を埋葬する場面「キリストの埋葬」を描いています。惨殺された青年を死したイエス・キリストに、悲しみのあまりに気を失う聖母マリアを若者の母親アタランタ・バリオーニに重ね描いています。
生気の感じられないイエス・キリストの亡骸の表現や身を捩じらせ倒れこむ聖母マリアの描写にミケランジェロの強い影響が指摘されています。
色彩豊かに描かれる情緒的な背景描写や古典の引用を思わせる登場人物の表現など、随所にラファエッロ独自の高度で洗練された表現が感じられます。
本作は教皇ユリウス2世がすでに名声を得ていたラファエッロをローマへと呼び寄せるための決定的な要因のひとつとなったと言われています。
ボルゲーゼ美術館(ローマ)所蔵。
<MAP>

カニジャーニの聖家族 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1507年)です。ラファエッロは聖母の画家と言われ、本作の様な聖母マリアと幼子イエスを描いた作品が有名です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は聖母子と、聖母マリアの母であるアンナ、父ヨアヒム、洗礼者ヨハネを描いたものです。鮮やかな色調と構図のバランスで後世の絵画に大きな影響を与えました。アンナの左上部に描かれる遠景部分の町並みは、その微妙な色の変化と透明感のある空気感から、北方絵画の影響を受けていると言われています。
洗礼者ヨハネとキリストは両者とも幼子として描かれながらも、互いの関係や信頼性、キリストの正当性を、聖母マリア、アンナ、ヨアヒムの三角形の中心に配置することで表現ししています。
アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)所蔵。
<MAP>

美しき女庭師 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1507年)です。
本作はルーブル美術館では「聖母子と幼き洗礼者聖ヨハネ」というタイトルで展示されている作品です。ラファエッロは、母性を画面中に表現し、多くの人々から支持を得ました。本作はその中でも最も典型的な作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
中央に描かれた、聖母マリアが身につけているドレスの赤色は、深い愛もしくは犠牲の血の色を表しており、マントの青色は、天上の真実を表しています。左下の幼児はイエス・キリストで、母親マリアの膝の上から旧約聖書を取ろうとしています。
右下でひざまずいている幼児は洗礼者ヨハネであり、ラクダの毛の衣を身につけており、葦でつくられた十字架の杖を手にしています。洗礼者ヨハネは、イエスに従うようなしぐさを見せている。3人の頭上には、金の光輪が描かれており、聖母マリアを頂点として安定した三角形の構図で描かれています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

牧場の聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1506年)です。
本作は、ラファエッロが幼子イエスと子供時代の洗礼者ヨハネが出会うという寓話的場面を描いた一連の作品の最初のものです。
それでは具体的に観て行きましょう。
幼子イエスと洗礼者ヨハネと共にいる聖母マリアが描かれています。穏やかな緑の草原にいる三人の人物はそれぞれ手、視線により繋がっています。幼子たちを見つめる聖母マリアの赤と青の衣装は、聖母マリアの典型的な服装でありながらも、画面に聖母らしい清潔なインパクトを与えています。
幼子のヨハネが持つ小さな十字を触ろうとふらつきながら前に乗り出す幼子キリストを聖母は支えています。洗礼者ヨハネは、片膝を地に付け、幼子キリストが握る十字架を支えており、洗礼者ヨハネの質素な衣に身を包み十字架を手にしている姿は、ルネサンス以降に描かれた聖母子の定番の構図です。
ウィーン美術史美術館所蔵。
<MAP>

アンシデイの聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1505年)です。
本作はラファエッロ・サンツィオがフィレンツェ滞在時代に描いたもので、ロンドンのナショナル・ギャラリーで、最も人気の高い作品のひとつです。
それでは具体的に観て行きましょう。
ウンブリア画派(※1)の影響を受け描かれた作品です。
ポプラ板に油彩で描かれた板絵で、幼児キリストを抱き木製の玉座に座する聖母マリアが描かれています。マリアから見て右側には洗礼者聖ヨハネが、左側には書物に目を通すバーリの聖ニコラウスがそれぞれ配されています。
聖母マリアはキリスト教徒が日常の祈りの際に模範とすべき文章を集めた書物「祈祷書」を熱心に読んでいる姿で描かれ、信仰の重要さを表現した祭壇画として評価されてきました。玉座の上には「万歳、キリストの御母」と書かれています。
※1:ウンブリア画派:ルネサンス期,中部イタリアのウンブリア地方で活動した画家たちの総称。早くからシエナ派やフィレンツェ派と交流し,古典的で荘重な画風のなかに甘美な幻想を維持しているのが特色。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
<MAP>

三美神 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1505年)です。
本作はラファエッロがピエトロ・ペルジーノから教えを受けていた頃に描いたもので、ラファエッロが裸の女性の正面と背面を描いた最初の作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作はギリシア神話とローマ神話に登場する美と優雅を象徴する三人の女神を描いています。左側に乙女(純潔)を表すように下腹部に布を巻いている女性、右側に成年女性(古代ギリシアの悦楽の女神ウォルプタース)を配置することによって、3人の人物は、女性の成長段階を表現していると言われます。
本作の三美神の調和に溢れた均整的な古典的表現は、ルネサンスを代表する三美神の表現として有名です。
フランスのコンデ美術館所蔵。
<MAP>

聖母の結婚 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖と言われるイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1504年)です。ラファエッロにレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロを加えた3人は盛期ルネサンスの三大巨匠と言われます。本作はラファエッロ21歳の時の作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
主題は、聖母マリアが14歳の時、神殿の司祭長のもとへ天使が現れ「国中の独身者に一本、杖を持たせて集めよ。そして杖の先に花の咲いた者を(聖母マリアの)夫として選べ」と聖告を受け、その聖告に従い国中の独身者を集める中、大工ヨセフの手にする杖の先に花が咲き、聖母マリアの夫として選定された後、結婚の儀式をおこなう場面を描いたものです。
画面中央より左側に聖母マリアと5人の処女たちが配され、右側には夫ヨセフと選定に漏れた多くの独身者たちが描かれています。そして中央では司祭長が聖母マリアと夫ヨセフの手を取り婚姻の印となる指輪を聖母マリアの手の先へ近づけています。
本作での空間把握と自然な描写から、若きラファエッロが既に師ペルジーノを超えるだけの力量を有していたことが判ります。そしてこれらが相乗的に作用し合い、静粛さと荘厳さが混在した聖性の高い結婚場面の表現となっています。
この表現こそ、ラファエッロ宗教画の真髄であり、観る者を魅了します。
ブレラ美術館(ミラノ)所蔵。
<MAP>

市場にて ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1892年)です。
ゴーギャンのエジプト好きは、よく知られていますが、本作はエジプトの壁画の写真から着想を得て製作されました。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は、タヒチの首都パペーテの市場の様子を描いています。しかし、果物や魚などを売る様子は描かれていません。描かれているのは、派手に着飾った女たちです。女たちは着飾って媚びを売るような表情を見せ、自分の体をフランス人に売り込んでいるです。ベンチに横に並んだ女たちの様子が、いかにも売り物の陳列のように見えます。
本作はエジプトの壁画の写真から着想を得て製作したと言われています。ポーズや横向きの体、顔つきなどをそのままタヒチの女性に当てはめ、様式化された単純なリズムを作り出しています。
スイスのバーゼル美術館所蔵。
<MAP>

Copyrighted Image