アルルの病院の庭にて ポール・ゴーギャン



フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1888年)です。
本作はゴーギャンがアルル滞在期に制作した絵画の代表作で、ゴーギャンが提唱した総合主義(※1)による様式的アプローチと日本趣味からの影響を感じさせる非遠近的表現が特徴的な作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
手前中央から左側には巨大な茂みが配され、その右側には赤々とした柵が描かれています。この茂みの陰影で目、鼻、髭が形成されていますが、それはゴーギャン自身を描いていると言われています。
その背後には紺色の衣服を着た2人のやや年齢の高い婦人がほぼ同じ姿態で描かれています。顔が明確に描かれている手前の婦人はカフェ・ド・ラ・ガールの主人の妻マリー・ジヌーです。そしてこの2人の夫人と呼応するかのように右側へは南仏特有の北風避けとして藁で覆われた糸杉の若木が2本描かれています。
本作で最も注目すべき点は、総合主義による様式的アプローチと、日本趣味からの影響を感じさせる非遠近的表現です。
茂み、柵、人物、糸杉、緩やかに曲がる小道、そして画面右上の池など構成要素のほぼ全てが明瞭な輪郭線と大胆な色彩を用いて平面的に描写されています。さらに遠近法を用いない複数の視点(近景と遠景では視点が大きく異なる)を導入することにより現実性が薄れ、ゴーギャンの心的風景が表現されています。
シカゴ美術研究所所蔵
※1:総合主義:1880年代末頃、ポール・ゴーギャン、エミール・ベルナール、シャルル・ラヴァル、ルイ・アンクタンらによって提唱された芸術運動。色彩を分割しようとする印象主義への反発として現れた、ポスト印象主義の一潮流で、2次元性を強調した平坦な色面などに特徴があります。
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