戦車の上からダンテに語りかけるベアトリーチェ

18世紀イギリスの詩人、画家、銅版画職人、ウィリアム・ブレイクの作品。
ブレイクは英国ロマン主義の先駆者と言われ、作品に秘められた哲学的で神秘的な意味とその創造力から、英国で最も重要な芸術家の一人とされています。
さて、本作はダンテ(※1)の叙事詩「神曲」第29・30曲の挿絵です。
獅子の胴体に鷹の頭と翼と渦を巻く車輪をつけた戦車を引くグリフォン(※2)が中央に据えられています。台の上に立つのはベアトリーチェ(※3)で、画面の右下に立つのがダンテです。車がダンテの前で止まり、花の雲の中にベアトリーチェの姿を認めるシーンを描いています。
個々の幻想的なイメージ、水彩による淡く美しい色彩、曲線の装飾性など、ブレイクの創造性が際立つ作品です。
ロンドンのテート・ギャラリー所蔵。
<MAP>

※1:ダンテは、13、14世紀のフィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。イタリア文学最大の詩人と言われています。
※2:グリフォンは、鷲(あるいは鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物。語源はギリシア語のグリュプスで、曲がった嘴の意味です。
※3:ベアトリーチェは、 ダンテの叙事詩「神曲」の登場人物です。

反逆天使たちを呼び覚ますサタン

18世紀イギリスの詩人、画家、銅版画職人、ウィリアム・ブレイクの作品。
ブレイクは英国ロマン主義の先駆者と言われています。
生きている間は、その独特で難解な作風のために狂人と見なされ、美術界や文学界から無視されていましたが、後に作品に秘められた哲学的で神秘的な意味とその創造力が再発見され、現在では、英国で最も重要な芸術家の一人とされています。
さて、本作は詩人ジョン・ミルトンの叙事詩「失楽園」(*1)を基に作成された挿絵の内の一つで、地獄の底で横たわっている天使たち(反逆天使)に向かって、「お前達よ起きろ!」と悪の主人公サタン(ルシファー)が呼び起こしている場面です。そして、「ひとまず住居を作ろう!」と彼らは地獄の資源で宮殿パンデモニウムを作りあげてしまいます。
古代彫刻を思わせるサタン(ルシファー)の凛とした男性美と、彼の足元でうずくまり、横たわる無気力な反逆天使との対照が印象的な作品です。
ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵。
<MAP>

※1:失楽園は、イギリスの17世紀の詩人ジョン・ミルトンによって書かれた叙事詩で、旧約聖書の「創世記」を踏襲して作成されています。
神に反抗心を持つサタン(ルシファー)は志を同じくする天使と共に神に反逆し、敗北して反逆天使(悪魔)となります。
サタン(ルシファー)は反逆天使たちと共に神への復讐を考え、人間アダムとイブを堕落させることを思い付きます。かくしてサタン(ルシファー)は蛇の姿となってイブに禁断の実を食べるようそそのかし、彼女はその実を食してしまいます。

ニュートン

18世紀イギリスの詩人、画家、銅版画職人、ウィリアム・ブレイクの作品。
ブレイクは英国ロマン主義の先駆者と言われています。
生きている間は、その独特で難解な作風のために狂人と見なされ、美術界や文学界から無視されていましたが、後に作品に秘められた哲学的で神秘的な意味とその創造力が再発見され、現在では、英国で最も重要な芸術家の一人とされています。
さて、本作は科学一辺倒の当時の世相を批判し描かれた作品です。
ブレイクは物理学者アイザック・ニュートンを、全てを理性と論理で割り切ろうとする嘆かわしい存在と考えました。
薄暗い海底で、下等な生物と共にニュートンがコンパスを用いて物質世界の解明を試みていますが、その体は岩と同化を始めています。ニュートンの鋭い視線とコンパスを握っている手・指が何とも言えない雰囲気を醸し出しています。
ロンドンのテート・ブリテン所蔵。
<MAP>

Copyrighted Image