鍛冶屋

鍛冶屋


フランス古典主義の画家のル・ナン兄弟が1640年に描いた作品。ルーブル美術館に展示されています。
ル・ナン兄弟は、絵画がまだ王侯貴族や教会、特別の金持ちの注文でしか描かれなかった時代に、農民や職人ばかり描いた画家です。
なぜル・ナン兄弟と呼ばれるかといえば、いずれも画家であったアントワーヌ、ルイ、マチューの3兄弟が、だれが描いたものでも、作品には「ル・ナン」と姓だけしかサインしなかったからです。どの作品も、3人のうちの1人が描いたのか、それとも共同で描いたのか、正確にはわかっていません。
この作品の仕事場に集まった鍛冶屋の家族は、記念写真でも撮るときのようなポーズをしていますが、なにか鍛冶という仕事の神聖さにつつまれているように見えます。
ル・ナン兄弟がこの絵で描いているのは、日本でいえば野鍛冶と呼ばれる、農具などを作る鍛冶屋です。鍛冶屋は若い夫婦で、左側に立っている2人は彼らの子どもだと思われます。右手で腰掛け、横を向いている人物と、彼に寄り添うようにしている子どもは、これも家族の一員で、子ども連れでやってきた鍛冶屋の客です。
鍛冶屋の家族は、全員立ってこちらを向いています。しかし、右手の腰掛けた男と子どもだけが、横を向いています。これは右端の2人だけが家族ではないことを示しています。
鍛冶屋も家族なら、訪ねてきた農民とその子どもも、ひとつの家族です。
ル・ナン兄弟は、ここにふたつの家族を描きました。そして描かれたふたつの家族は、同じ労働に生きる家族同士として、一見すると一家族に見えるほど、ひとつの画面のなかで溶け合っています。
ル・ナン兄弟自身のパリでの共同生活が示したように、彼らにとっては、家族の結びつきほど大切なものはありませんでした。それが彼らの生涯のテーマでした。
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