ダンテの小舟



19世紀のフランスのロマン主義(※1)を代表する画家、ウジェーヌ・ドラクロワのデビュー作です。
ドラクロワは、古典主義において軽視されてきた、エキゾチスム・オリエンタリズム・神秘主義・夢などといった題材を扱いました。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作品は、ダンテの「神曲 第8篇」にある物語を題材にしています。
一心不乱に舟に乗り込もうとあがく亡者達、漕ぎ手のプレアギュースの青い衣服が強風でうねっています。波立つ川に揺れる舟、後ろに見えるのは巨大な灼熱地獄と化した街。激しい狂気と絶望がこの絵の中にあります。
どこからともつかない光が亡者達のたくましい肉体を照らし、その明暗の効果が不気味さを一層強調しています。大胆な色使いも印象的です。ダンテの赤いカウルは、後方の大火を不安になるほど連想させ、プレアギュースの青い衣服と鮮やかに対比させています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

※1:18世紀末から19世紀前半のヨーロッパ、及び、その後にヨーロッパの影響を受けた諸地域で起こった精神運動の一つ。それまでの理性偏重、合理主義などに対し感受性や主観に重きをおいた一連の運動です。恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴をもち、近代国民国家形成を促進しました。

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