訪問 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1517年頃)です。
本作の舞台はルカによる聖書の物語で、2人の女性の年齢差や喜びの表情など、物語の全体像を1つに収めた作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
美しい風景の中で、キリストを身ごもった聖母マリアが彼女の従妹であり聖ヨハネの子を身ごもっているエリザベスを訪問したところを描いており、この後、マニフィカート(受胎告知を受けたことを聖母マリアが神に感謝する賛歌)を歌います。背景に描かれている天使たちは、聖母マリアをいとこの聖エリザベスのもとへ案内しました。
聖母マリアは若い女性として描かれているのに対し、左の聖エリザベスは年齢が相当上で、それにより聖書に書かれているようにこの妊娠が奇跡であるということを強調しています。また背景の風景の中には、ヨルダン川で聖ヨハネにより洗礼を受けるキリストも描かれており、これから起こることを暗示しています。
また、ラファエッロはマンネリズム(※1)の達人として知られています。本作の中でもマンネリズムを用い、絵の中のポーズをとることで、二人の女性の動きを表現しています。
※1:マニエリスム:盛期ルネサンスと初期バロックの間の芸術様式を指し、その特色は人体表現において顕著で、誇張された肉づけ、引き伸ばし、様式化した姿勢や派手な色彩などがあります。
スペインのプラド美術館所蔵。
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無原罪の御宿り

18世紀バロック最後期のイタリア画家の巨匠、ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの代表作です。
無原罪の御宿りとは、聖母マリアが母親のアンナから生まれる時に、人類が背負っている原罪(人類の先祖アダムとイブが楽園から追放された罪)の穢れを免れて産まれてきたということを言います。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は、マリアの姿をした魂が、天使たちに祝福されながら、月に乗って、地上のアンナのお腹に降りてくる様子を描いています。
上弦の月に乗る聖母マリア。その純潔性を表現しながらも、壮麗で重厚な宗教的威厳と美しさに溢れています。濃密で威風堂々とした色彩描写や、複雑に変化を見せながらも上方へと昇華してゆくかのような計算された構図展開は絶品です。
プラド美術館所蔵。
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1808年5月3日:プリンシペ・ピオの丘での銃殺

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの作品です。美術史家ケネス・クラークは、本作品を「表現、手法、テーマ、趣旨といったあらゆる感覚において革命家と言える最高傑作」と称えました。
具体的に見て行きましょう。
暴動を鎮圧したフランス軍は首謀者たちを集め、銃殺刑にかけました。ゴヤは神の恩恵も救済も望めそうにない殺戮と死を、冷厳たる事実として描きました。
銃を構える銃殺執行隊を後ろ向きの姿で描き、その表情は見えません。それと対照的に今まさに刑が執行されようとしている逮捕者(反乱者)たちは恐怖や怒り、
絶望など様々な人間的感情を浮かべています。特に光が最も当っている白い衣服の男は、跪きながら両手を広げ、眼を見開き、執行隊と対峙しています。
この男の手のひらには聖痕が刻まれており、観る者に反教会的行為に抵抗する殉教者の姿と磔刑に処される主イエスの姿を連想させ、反乱者の正当性を示そうとしています。
そして、画面の奥で恐怖に慄く銃殺刑を待つ人々の列を「生」、銃を向けられる男たちは「生と死の境界線」、血を流し大地に倒れ込む男らの死体の「死」。
絵画内に描かれる「生」と「死」の強烈な時間軸が、観る者の眼を奪い、心を揺さ振ります。
マドリードのプラド美術館所蔵。
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ボルドーのミルク売りの娘

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの晩年の作品です。
ゴヤは、ディエゴ・ベラスケスとともにスペイン最大の画家と言われます。
本作品はゴヤの晩年の境地を結晶させた作品と言われます。
具体的に見て行きましょう。
ミルク売りの少女は穏やかな朝の陽光に包まれ輝きを帯びています。
女性の顔に憂いと淋しさを残しつつ、不思議と透明な意識に支配されていきます。
美とか高貴とかとは無縁の平凡な田舎娘であるが故に、無私の崇高な境地を感じさせる作品です。
マドリードのプラド美術館所蔵。
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1808年5月2日:エジプト人親衛隊との戦闘

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの作品です。
ゴヤは、ディエゴ・ベラスケスとともにスペイン最大の画家と言われます。
ゴアは感受性や主観に重きをおいたロマン主義の作品を多く描きました。
それでは具体的に見て行きましょう。
右奥へと逃れるフランス軍の騎兵隊に対して、前方に立ちはだかり、背後から迫る群衆の勢い。画中に美の規範や均衡は無く、逆に中心はなく、その無秩序故に騒乱の臨場感が高まっています。
無名の民衆を主人公にした近代的な絵画です。
マドリードのプラド美術館所蔵。
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カルロス4世の家族

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの代表作です。
ゴヤは、ディエゴ・ベラスケスとともにスペイン最大の画家と言われます。
ゴアは感受性や主観に重きをおいたロマン主義の作品を多く描きました。
それでは具体的に見て行きましょう。
13名にも及ぶ国王一族の公式的側面の強い平面的配置、奥行きの無い空間構成、非常に運動性の少ない硬直とした身体描写、そして、それらとは対照的な眩い光を放つ色彩描写。そこには王族に対するゴヤの真摯で実直な観察眼を感じます。
しかしこの作品は、尊厳な王室は既に過去のものとなり、腐敗や衰退が進んでいることまで映し出しています。
マドリードのプラド美術館所蔵。
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「着衣のマハ」と「裸のマハ」

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの代表作です。ゴヤは、ディエゴ・ベラスケスとともにスペイン最大の画家と言われます。
「着衣のマハ」と「裸のマハ」は対をなす作品で、最初に「裸のマハ」が描かれましたが、当時のスペインはヌード画をタブー視していたことから、それをカモフラージュする為に「着衣のマハ」が描かれました。
当初の展示方法は、前面に「着衣のマハ」を展示し、仕掛けを作動させると、背面に隠れた「裸のマハ」が出るようなかたちになっていたと言われます。
現在は、マドリードのプラド美術館で並べて展示されています。
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チンチョン伯爵夫人

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの作品です。
ゴヤは、ディエゴ・ベラスケスとともにスペイン最大の画家と言われます。
憂いと望みの情を抑えつつ座る、清楚な女性は、ドン・ルイス親王の長女で国王カルロス4世の従妹にあたるマリア・テレサ・デ・バリャブリカです。
本作は1800年、21歳のマリア・テレサが娘カルロータを懐妊した記念の肖像で、豊穣の象徴である小麦の穂を頭にさしています。
マドリードのプラド美術館所蔵。
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陶器売り

近代絵画の創始者の一人として知られるスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの作品。ゴヤは、ディエゴ・ベラスケスとともにスペイン最大の画家と言われます。古典主義が理性や合理主義を重視したのに対し、ゴアは感受性や主観に重きをおいたロマン主義の作品を多く描きました。
それでは具体的に見て行きましょう。
場面は様々な階層の人たちで賑わうマドリードの定期市。陶器を品定めする二人の娘と付き添いの老婆、背後を走る貴婦人を乗せた馬車など、綺麗な色彩と考えられた構図で定期市を描いています。
ゴアは人の感受性に訴え、本作品を見た人が自然と男女の性差、貴族と庶民の階級差を感じ取る作品に仕上げています。
マドリードのプラド美術館所蔵。
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