誘拐 ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌ初期(1867年)の作品です。
1866年から71年頃のセザンヌ作品に共通したテーマは、死とエロチシズムでした。
それでは具体的に観て行きましょう。
冥府の神プルートに誘拐された、プロセルピーヌを描いたものです。プロセルピーヌは後に冥府の女王となりました。
本作はその苛烈な力強さが印象的です。しかし、暫く見ていると、力強さの中に動揺した情熱を秘めているように感じてきます。
人物描写はセザンヌの重要な研究テーマの一つでした。本作のような人物描写を経て、日光に照らされた明るさの中で風景に溶け込む水浴客のような人物描写を描くようになっていきます。
また、セザンヌが世界の神秘性を感じ取ったのは、自然の前でした。セザンヌは何も孤立しては存在しないことを見抜いていました。物には色があり、重さがあり、それぞれの色と質量が他のものの重さに影響を与えます。セザンヌが人生を捧げたのは、この法則を理解するためだったと言われています。
ケンブリッジ大学のフィッツウィリアム美術館所蔵
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