大公の聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1505年頃)です。
ラファエッロの描いた聖母像の中でも特に有名な作品の1つです。暗闇の中に浮かび上がるように描かれた聖母マリアと幼児イエス・キリストが印象的ですが、黒い背景は後世の加筆によるものであることが判明しています。
それでは具体的に観て行きましょう。
ラファエッロが描いているのは赤と青の衣装を身にまとった聖母マリアが幼児キリストを抱きかかえるという、典型的な聖母子像で、この構図はラファエッロが描くことになる数々の聖母像の原型となりました。
幼子キリストは、母の胸元と肩にその手を置き、しっかりと見物人を見つめています。また聖母マリアはその温もりを感じながら、優しい母の表情をしています。
本作はダ・ヴィンチの強い影響を受けており、それはスフマート技法(※1)によって確認することができます。ラファエッロはこの技法により、絵画に優雅なバランスと調和を図り、聖母子の姿が、優しい情愛に満ちたものである事を表現しました。
※1:スマフート技法:深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法。
ピッティ宮殿所蔵。
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アーニョロ・ドーニの肖像 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1506年頃)です。
絵全体に明快さとバランスを生み出し、背景の明るく穏やかなイメージを使って、人物の性格を上手く表現している作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は若くて裕福な布地商人の姿を描いた油彩画作品です。
手は片方ずつ重ねられており、社会的地位を示唆するジュエリーを見せています。指輪には繁栄の象徴であるルビーと、透明感や清らかさを表すサファイアが使われています。ラファエッロは影と光の波を使って、アーニョロの力強さを強調しています。アーニョロはテーブルの端に片腕を置いて静かに座って待っています。またラファエッロは深いコントラストを使って、衣服の層の違いを表現し、キャラクターの深さを表しています。金色の髪の毛は左右対称に配置されており、服のバランスがとれていることから、緻密で正確な思考の持ち主であることを表しています。
衣服の細部は、アーニョロの富を示しています。、滑らかで広い筆致を用いて、一見静止した肖像画のダイナミクスを表現しています。アーニョロの目は、絵画の枠を超えた思考の強さを示しています。
絵全体に明快さとバランスを生み出し、背景の明るく穏やかなイメージを使って、人物の性格を上手く表現している作品です。
イタリアのビッティ宮殿所蔵。
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妊婦の肖像 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1506年頃)です。本作はラファエッロがフィレンツェ滞在期間中に描かれたもので、当時、妊婦を描いた絵は非常に珍しいものでした。また、ラファエッロのフィレンツェ滞在期間での最も重要な点のひとつは、この絵が示すような絵画の構図の進化を成し遂げたことです。
本作はラファエッロの能力(自然の要素の特定の状況をより総合的なビジョンの中で解決する能力)の高さを如実に示している作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
自分のお腹の上に左手をのせ腰掛けている妊婦が描かれています。本作の主題は、母親になることを意識している妊婦です。
当時、妊婦を描いた絵は非常に珍しい中、ラファエッロは、妊婦という特殊な状況に対して、その穏やかな誇りと儚さの両方を描くことで、素晴らしい作品に仕上げています。お腹の上に静かに置かれた左手はお腹の膨らみを強調し、視線は強く観客に向けられています。
そして当時、直線的なリズムで肖像画が描かれることが多い中、ラファエッロは、絵の中の固体の形を、ボリュームある球形に還元して描き、またよく選ばれた色が重ねられています。それは、ラファエッロがフィレンツェ滞在期間中に獲得した構図の進化でした。
本作はラファエッロの能力(自然の要素の特定の状況をより総合的なビジョンの中で解決する能力)の高さを如実に示している作品と言われます。
イタリアのビッティ宮殿所蔵。
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トンマーゾ・インギラーミ伯爵の肖像 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1516年頃)です。
本作は2部制作されており、一つはアメリカのイザベラ・スチュワート・ガードナー博物館、もう一つはイタリアのビッティ宮殿に所蔵されています。本作はアメリカに最初に持ち込まれたラファエッロ作品としても有名です。
それでは具体的に観て行きましょう。
インギラーミ伯爵は物思いにふけり、右斜め上を見つめています。また机に向かってペンを持ち、赤い革表紙の本からクワイヤー(紙葉)と呼ばれる紙の束に文章を書き写しています。印刷機が登場した後も、インギラーミ伯爵は教皇ユリウス2世のような富裕層のために、貴重なテキストを手書きでコピーした豪華な版を作り続けました。
赤い帽子とローブを身につけていることから、インギラーミ伯爵はサン・ピエトロ大聖堂の責任者の一人であることがわかります。
本作は、インギラーミ伯爵の昇進と、当時バチカン宮殿の教皇の居室のフレスコ画を制作していたラファエッロと知り合ったことを記念して作られたものと言われています。
イザベラスチュアートガードナー美術館、ピッティ宮殿所蔵。
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エゼキエルの幻視 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1518年頃)です。
預言者エゼキエルが見たといわれるものを描いた作品です。ラファエッロがミケランジェロに敬意を表して描いたと言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
ゼキエルは幻影の中で、4つの生き物で形作られた玉座に座っている男が現れるのを見ています。これらの生き物は、牛の顔、鷲の顔、獅子の顔、そして人間の顔と、それぞれ異なる顔を持っています。この「出現」が預言者エゼキエルに語りかけ、エゼキエルは神が自分に語りかけていることに気付きます。
絵の中でエゼキエルは、絵の左下の光線の中にいる小さな人物として描かれています。教父、聖ヒエロニムスは、この4つの生き物を4人の福音書記者の象徴としました。人間はマタイ、ライオンはマルコ、牛はルカ、鷲はヨハネを象徴しています。
構成の容易さ、形の明瞭さ、そして人間の壮大さという新プラトン主義(※1)の理想を見事に表現している作品です。
※1:新プラトン主義とは、神の創造を模倣すること、より美しいものをリアルに描き出すことがイデア(完全なもの)の探求であるという考え。古代ギリシャの哲学者プラトンの考えで、人間は円や完全なもの、愛や善、美という概念を理解できるのは、イデア界というものをかつて天上界で見て知っているため、現世においてそれを想起でき模倣できるのだという考えから来ています。
イタリアのピッティ宮殿(フィレンツェ)所蔵。
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ヴェールを被る婦人の肖像 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1516年頃)です。
ラファエッロがその生涯で描いた肖像画の中で別格と言われている作品です。
ラファエッロはこの女性フォルナリーナと密かな恋愛関係にありましたが、ビビエーナ枢機卿から姪のマリアとの結婚話を持ちかけられ、野心を持っていたラファエッロは、フォルナリーナとの恋愛関係に終止符を打ちました。
しかし、フォルナリーナへの想いを断ち切ることができず、婚礼の衣装を纏った婦人の肖像画として、自己の想いを表現した作品だと言われてます。ヴェールを被るフォルナリーナの表情は、自分たちが結ばれないことへの悲しみを表しています。ヴェールの下に見える髪飾りは人妻を意味し、ラファエッロは実現しなかったフォルナリーナの婚姻を本作で表現したのでした。
また、描かれた当初は婚姻の証である指輪がフォルナリーナの指に描かれてましたが、本作が一般に公開されることになったことから、画家自身がそれを隠す為、絵具を上塗りしたとされています。
イタリアのピッティ宮殿(フィレンツェ)所蔵。
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小椅子の聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖でイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1514年頃)です。
聖母マリアのキリストに対する愛情が表現されている作品です。ラファエッロのキャリア後期にあたる、ローマ時代に描かれました。
それでは具体的に観て行きましょう。
幼児キリストを抱きしめる聖母マリアと、2人を敬虔な表情で見つめる幼児洗礼者聖ヨハネが描かれています。聖母マリアの頭にターバンの様に巻き付けられた絹織物は、当時の上流貴婦人の間で流行っていたものです。聖母マリアの若々しい女性美の表現は圧巻の一言であり、特に聖母マリアの観る者へと向けられる視線の魅力は当時から観る者の目を惹きつけました。
そして、中央のキリストは青のシーツの上に座り黄色の服を着ています。また聖母マリアは緑色のストールを掛けています。ラファエッロは、中央部に暖色(黄色)を置き、青と緑色の対比を作ることにより、中央部に温かみを作り、聖母マリアのキリストに対する愛情を表現したのでした。
イタリアのピッティ宮殿(フィレンツェ)所蔵。
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ピスタ

フラ・バルトロメーオの作品。
この祭壇画は、修復時に大きく構成が変わった作品として有名です。
具体的に見て行きましょう。
後方に聖ピエトロと聖ヤコブが描かれていますが、頭が途中で見切れています。そう、この祭壇画もっと大きなサイズだったのです。
この祭壇画発見時は、聖ピエトロと聖ヤコブは描かれておらず、背景は黒で覆われていました。近年の修復で背景の黒を除いたところ、聖ピエトロと聖ヤコブが表れました。
キリストをはじめとする前方4人がドラマチックに描かれています。それを強調する為、上方は裁断し背景を黒で塗り替えたと想像されています。
フィレンツェのビッティ美術館所蔵。
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ヴェールの女

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶ盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、ラファエッロ・サンティの作品です。巨匠ラファエッロの作品の中でも、別格の存在感があります。
その理由は。。。
モデルは、モデルはフォルナリーナ(パン屋の娘の意)と呼ばれています。ラファエッロはこの女性と密かな恋愛関係にありました。しかし、ラファエッロは社会的地位を上げる為、他の女性との政略結婚を決意し、フォルナリーナと別れます。
だが、ラファエッロはフォルナリーナへの想いを断ち切ることができず、婚礼の衣装を纏った婦人の肖像画「ヴェールの女」を描き、自己の想いを表現したのです。
ヴェールを被るフォルナリーナの表情は、自分たちが結ばれないことへの悲しみを表しています。このようなラファエッロの切ない思いがある作品だからこそ、別格の存在感を感じるのでしょう。
当初はフォルナリーナの指には、婚姻の証である指輪が描かれていました。しかし絵画が一般に公開されることとなり、絵具を上塗りして、指輪を隠したとされています。ピッティ宮殿所蔵。
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