魔女キルケ

この絵画は16世紀フェラーラ派を代表する画家ドッソ・ドッシの作品で、難解で文学的な魅力に包まれた名作と言われています。
ドッソ・ドッシ独自の色彩による光と陰影の描写と安定的な構図が一体となった素晴らしい作品ですが、謎は尽きません。
この女性はだれ? 犬や鳥、それに鈍く光る甲冑はどういう意味? そして、画面右奥で語り合う3人の男たちはどういう人たち?
この謎を有望な説で解説していきましょう。
女性はキルケ。自身の敵と見做すものを、自らの魔力によって、ライオンや狼などの獣や怪物に変えてしまう魔女です。彼女は、呪術具らしき人形を見つめ、手には古文的文献と火が灯される松明が握られています。足下には円形の魔方陣や武具、幻想的な犬などが配され、キルケの魔女たる所以を表現しています。
画面右奥の3人の男は、オデュッセウス一行と思われます。これは伝説的逸話で、一行は魔女キルケによって豚に変えられてしまいますが、オデュッセウス自身はローマ神話の守護神、ヘルメスに授けられた薬草モーリュによって魔女キルケの魔法に打ち勝ちます。
一方、このような解説はさておき、魔女キルケの華麗な衣装には魅せられます。その魅力は安定的な構図に支えられており、後方の生き生きとした遠方まで見渡せる景色が引き立てているのです。
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