エビ足の少年

この作品は1642年に描かれた、バロック・ナポリ派の巨匠フセペ・デ・リベーラの代表作です。ルーブル美術館に展示されています。
「えび足」とは、この絵に描かれた少年の、不自由な右足を意味します。障害をもち、身長の伸びが途中で止まったと思われる少年は、不快ともとれるほど歯並びは悪いが、屈託のない笑みを浮かべ、鑑賞者の方を見つめています。少年の手には歩行用の杖とともに、1枚の紙片が握られ、そこには人々に施しを勧める言葉「神への愛故に、私へ施しを与えたまえ」が読み取れます。この絵は単なる風俗画ではなく、カトリック信徒の務めとしての「慈善」を勧める意味があります。
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鍛冶屋

フランス古典主義の画家のル・ナン兄弟が1640年に描いた作品。ルーブル美術館に展示されています。
ル・ナン兄弟は、絵画がまだ王侯貴族や教会、特別の金持ちの注文でしか描かれなかった時代に、農民や職人ばかり描いた画家です。
なぜル・ナン兄弟と呼ばれるかといえば、いずれも画家であったアントワーヌ、ルイ、マチューの3兄弟が、だれが描いたものでも、作品には「ル・ナン」と姓だけしかサインしなかったからです。どの作品も、3人のうちの1人が描いたのか、それとも共同で描いたのか、正確にはわかっていません。
この作品の仕事場に集まった鍛冶屋の家族は、記念写真でも撮るときのようなポーズをしていますが、なにか鍛冶という仕事の神聖さにつつまれているように見えます。
ル・ナン兄弟がこの絵で描いているのは、日本でいえば野鍛冶と呼ばれる、農具などを作る鍛冶屋です。鍛冶屋は若い夫婦で、左側に立っている2人は彼らの子どもだと思われます。右手で腰掛け、横を向いている人物と、彼に寄り添うようにしている子どもは、これも家族の一員で、子ども連れでやってきた鍛冶屋の客です。
鍛冶屋の家族は、全員立ってこちらを向いています。しかし、右手の腰掛けた男と子どもだけが、横を向いています。これは右端の2人だけが家族ではないことを示しています。
鍛冶屋も家族なら、訪ねてきた農民とその子どもも、ひとつの家族です。
ル・ナン兄弟は、ここにふたつの家族を描きました。そして描かれたふたつの家族は、同じ労働に生きる家族同士として、一見すると一家族に見えるほど、ひとつの画面のなかで溶け合っています。
ル・ナン兄弟自身のパリでの共同生活が示したように、彼らにとっては、家族の結びつきほど大切なものはありませんでした。それが彼らの生涯のテーマでした。
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女占い師

この絵画はカラヴァッジョの作品です。「女占い師」には2つのバージョンがあり、原作は1594年に描かれ、ローマのカピトリーノ美術館に展示されています。2作目(本作)は1595年に描かれ、パリのルーブル美術館に展示されています。
少年は少女の顔を満足そうに見つめ、少女も少年を見つめ返しています。しかし、よく絵を見てみると、少女は少年の手を握りながら、彼の指からこっそり指輪を抜いており、少年はそれに気が付いていない様子です。
当時、このような庶民的な画題は、オランダ画家たちにより多く描かれていましたが、伝統あるローマに於いて、一流の画家であるカラヴァッジョが描いたことはセンセーショナルな出来事でした。カラヴァッジョによる世俗的な絵は彼の後継者に大きな影響を与え、ローマでも同様な風俗画が数多く描かれるようになりました。
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マリード・メディシスの戴冠式

この作品は、17世紀フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスの代表作「マリー・ド・メディシスの生涯」の24連画のひとつです。
アンリー4世が、ドイツ遠征を前にして、不在中の統治権を王妃のマリー・ド・メディシスに預けることとなり、その権威を強化するため、1610年5月13日サン・ドニ聖堂で王妃の戴冠式を行いました。ルーベンスがこれを描いたのは、戴冠式の十数年後です。歴史的事実に基づいたこの絵は、300年の後ダヴィッドの作品に影響を与えたとされています。
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マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸

この作品は、17世紀フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスの代表作「マリー・ド・メディシスの生涯」の24連画のひとつです。
フランス王アンリ四世の妻でルイ十三世の母でもあるマリー・ド・メディシスがリュクサンブール宮殿を装飾するために注文したものです。
アンリ四世と結婚するために、海路はるばるイタリアからマルセイユに到着したばかりの花嫁マリー・ド・メディシスを史実に基づき描いています。 左上にメディチ家の紋章、左下には警護する海の神ネプチューンとトリトン、王妃の足下には到着を喜ぶ3人の海の精ネレイスがいます。
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ルイ14世の肖像

この作品の作者のイアサント・リゴーは、ロココ美術初期を代表する肖像画家です。 フランス古典主義の画家フィリップ・ド・シャンパーニュや17世紀フランドル絵画の巨匠アンソニー・ヴァン・ダイクの優雅な人物表現と、イアサント・リゴー独自の豪奢な肖像演出を融合させた画風は、豪壮かつ優雅で、華々しさが際立ち、モデルを気品高く、偉大に感じさせます。
この作品は、スペイン王フェリペ5世に贈るために注文された肖像画で、気品溢れる古代風の装飾、緋色の幕、白百合の紋章がついた衣装を身に纏った太陽王の威厳といった各々の細部のおかげで、絶対権力を表わす洗練されたイメージを創りだしています。
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大法官セギエの肖像

この作品は、フランス古典主義時代を代表する画家シャルル・ル・ブランの代表作です。 本作品に描かれているのは、シャルル・ル・ブランを若い時分から庇護し援助した大法官セギエが騎乗する姿とその一行です。
大法官セギエを中心に、その同一線上の人物らの安定的な構図や構成、色彩的装飾を抑えた統一的な色彩表現、高度な技術による写実的描写にフランス古典主義の規範的表現が示されています。抑制的でありながらも、大法官セギエの人物像と場面的表現に肉薄した色彩の使用は、今日でもフランス古典主義時代の代表的な肖像画として広く知られています。
騎乗の大法官セギエは黒色の帽子と質の良い豪華な衣服を身につけ、手綱を握りながら観る者の方を向いているほか、セギエが跨る白馬も神話に登場するかのような品が感じられます。またセギエの腰部分の横線上に次官らが配されており、それぞれセギエを囲みながら傘持ちなど己の任をこなしています。
彼らの規範的かつ実直でありながらも、やや甘美性を携えた表情や表現に画家の優れた画才と芸術的感覚を感じさせる作品です。
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ジプシーの女

この作品は、17世紀に活躍した画家フランス・ハルスが1618年頃から1630年頃までおこなった様々な人々の豊かな表情を描写した作品の中の代表作の一つ。作品のモデルは、特定のジプシー又は娼婦を描いたものであるかは不明ですが、 その風貌から1870年に「ジプシー女」と命名され現在まで伝統的にそう呼称されています。娼婦的な女性の単身像を描く場合に画家が陥る、官能性のみを過大に追求した卑俗に満ちた表現からフランス・ハルスは逸脱し、ユトレヒト・カラヴァッジョ派らの影響である明暗対比の強い陰影法と、画家独自の速記的な筆跡によって、対象が瞬間的に見せる無邪気な性格と表情を画面へ描写することに成功しています。
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リシュリュー枢機卿の肖像

この作品はルイ13世の宰相として名高いリシュリューの全身像です。 彼は襞のついた僧服を持ち上げ、枢機卿であることを示す赤い角帽を前に差し出しています。
作者はフィリップ・シャンペーニュ。シャンパーニュの初期の作品に共通する鮮やかな色彩や豪華な布地の表現は、フランドル美術の影響を受けています。
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