耕地へ向かう牛 コンスタン・トロワイヨン

19世紀のフランスのバルビゾン派の画家、コンスタン・トロワイヨンの作品です。
バルビゾン派は、フランスのバルビゾン村やその周辺に画家が滞在や居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた、絵画の一派です。
トロワイヨンの他、コロー、ミレー、テオドール・ルソー、ディアズ、デュプレ、ドービニーの7人が中心的存在で「バルビゾンの七星」と呼ばれました。
トロワイヨンは風景画も描きましたが、出世作は動物画です。
朝の澄んだ光と大気の中、絵を見る我々の方に牛たちが向かってきます。逆光の中、牛たちが力強く向かってくる姿は圧巻で、観る人にやる気と勇気を与えてくれる作品です。
オルセー美術館所蔵。
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鹿の隠れ場 ギュスターヴ・クールベ

19世紀のフランス写実主義の画家、ギュスターヴ・クールベの作品です。
クールベは自然の中の動物を盛んに描いた、動物画家として有名です。
それでは具体的に観て行きましょう。
少しひんやりとして落ち着いた空気の流れる静寂の空間です。小鹿たちも心地よさそうに憩い、ここでは永遠が時を止めています。
可愛らしい小鹿が本当に安心して脚を投げ出している様子には、こちらまでほっと、解放感に満たされてしまいます。そこには、本当に生を営むものの優雅さ、そしてそうなるための無心な美しさがあふれています。
クールベは、人であれ動物であれ、そこに無心で存在するものに自らも無心で近づき、その喜びを力強く、またやさしく表現することのできる、自然に対して繊細で謙虚な画家でした。
オルセー美術館所蔵。
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生命のダンス エドヴァルド・ムンク

19-20世紀のノルウェー出身の画家、エドヴァルド・ムンクの作品です。
1890年代に制作された「生命のフリーズ」と言われる作品群の一つで、主題は「愛」と「死」、愛と死がもたらす「不安」です。
それでは具体的に観て行きましょう。
中央で踊る男女は夢遊病者の様に身体を揺らせています。赤いドレスは男性の足元を包み込むような動きがあり、踊る男女の躍動感を演出しています。
左には純潔・無垢を象徴する白い服を着た女性が、踊る二人を期待に満ちた眼差しで見つめています。女性の脇に咲く可憐な花は青春の初々しい生命の象徴です。
一方、右端の黒い服を着た女性は、生命の虚しさ、愛の悲しみを思い知ったかのように、踊る二人を力なく見ています。
「愛」と「死」、及び、愛と死がもたらす「不安」が表現されています。
オスロ国立美術館所蔵。
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思春期 エドヴァルド・ムンク

19-20世紀のノルウェー出身の画家、エドヴァルド・ムンクの作品です。
本作はムンクの性的な憂鬱を反映した作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
ベットにひとり座り、不安げな眼差しで正面を凝視する全裸の少女。
足は閉じ、手は身体の前で交差しています。右手は膝の間に挿し込むように置かれ、左手は太ももの上に置かれています。
口は閉じ、長い髪が肩の上にぶら下がっています。画面左から光が差し込み、画面右後ろの影が何か不吉なものを訴えかけて来るようです。
少女の不安と恐怖、少女の性的目覚め、若者が成熟に向かって身体的にも精神的に変化するときの経験が描かれている作品です。
オスロ国立美術館所蔵。
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叫び エドヴァルド・ムンク

19-20世紀のノルウェー出身の画家、エドヴァルド・ムンクの代表作です。
幼少期に母親を亡くし、思春期に姉の死を迎えるなど病気や死に直面したムンクは、”愛”と”死”とそれらがもたらす”不安”をテーマとした「フリーズ・オブ・ライフ」と称する作品群を描きました。「叫び」はその内の一作です。
それでは具体的に観て行きましょう。
耳を塞いで恐れおののく人物。それに加え、斜め走る通路から生まれる画面左奥へ収斂してゆく空間。それが心理的な緊張感を一層高めています。
この作品は、ムンクが感じた体験に基づいて描かれており、ムンクは日記にその時の体験を次のように記しています。
「私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。」
つまり「叫び」は描かれている人物が発しているのではなく、「自然を貫く果てしない叫び」に怖れおののいて耳を塞いでいる姿を描いているのです。
オスロ国立美術館所蔵。
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カーネーション、リリー、リリー、ローズ

19世紀のアメリカ人の画家、ジョン・シンガー・サージェントの作品です。
幻想的な美しさと懐かしさにあふれる作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
夕暮れ時の淡い光に照らされた花の咲き乱れる庭。提灯を手にした二人の少女。
ピンクのバラが咲き乱れ、アクセントとして黄色のカーネーションと背の高い白いユリが咲く庭に二人は立っています。画全体が緑の葉で覆われ、奥行きを与える水平線は存在しません。鑑賞者を子供たちと同じ場所に立ってるような気持ちにさせます。
描かれている提灯とユリは、日本のものです。当時のヨーロッパでは、ジャポニズムが流行っていました。
暮れていく淡い光の下、花ざかりの庭で丁寧に描かれたからこそ生み出された幻想的な世界、その中に潜む日本、それが私たちに美しさと懐かしさを感じさせるのでしょう。
ロンドンのテート・ブリデン所蔵。
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ヴォルガの船曳き イリヤ・レーピン

ロシアの移動派画家、イリヤ・レーピンの初期の代表作です。
レービンは、貧困や差別にあえぐ社会の最下層を題材とした作品を数多く描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は船曳き労働の過酷さ、及び、圧政に苦しみ虐げられる民衆の姿を描いた作品です。横長の画面に苦役囚のように苦しげに大きな船を曳く11人の男たちが描かれています。
前方を見ながら先頭を行く男は民衆の知恵を表し、その左のたくましい男は肉体的な力と民衆の素朴さ、単純さの象徴です、
その左右の前屈みになったやや小柄な男は、民衆のやり場のない怒りを代弁しています。苦役の縄を嫌がる少年や病弱の老人など、人物の表情・心理の描き分けが見事です。
サンクトペテルブルクのロシア美術館所蔵。
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光輪のある自画像 ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの自画像代表作です。
それでは具体的に観て行きましょう。
赤一色の背景をバックにし、ゴーギャンの頭上には光輪が描かれており、己の姿を聖なる存在として表現しています。絵の手前には花と植物が、そして、ゴーギャンのすぐ傍にはりんごが2個ぶら下がっており、手の指と指の間には蛇も描かれている奇妙な作品です。
この作品から、ゴーギャンが浮世絵やクロワゾニスム(※1)の影響を受けていることが判ります。
ワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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※1:クロワゾニスムとは、対象の質感、立体感、固有色などを否定し、輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する描写方法で、ポスト印象派の様式です。

自画像 ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品です。
セザンヌは生涯にわたって自画像を25点描きました。
同時代の画家たちの自画像のほとんどは、心理的観点からの自己分析の作品と言えます。しかしセザンヌは、自分自身ですら一つの素材として作品を描きました。
ワシントンのフィリップス・コレクション所蔵。
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