ムーラン・ド・ラ・ギャレット パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソが19歳の時の作品です。
ピカソが初めてパリ市民をモデルとして製作した絵画です。
それでは、具体的に観て行きましょう。
パリの小高い丘の上にある、観光名所としても名高い庶民的なダンスホールのムーラン・ド・ラ・ギャレットの風景を描いています。
人物の輪郭をぼやけて描写することにより、人々がダンスホール内を目まぐるしく動く様子を表現しています。作品を通して、ピカソが、デカダンス(19世紀末にフランスを中心としたヨーロッパに広まった虚無的・耽美的な文芸思潮)の影響を受け、魅了された様子が伝わってきます。
ダンスホールのムーラン・ド・ラ・ギャレットは、多くの画家に描かれていて、ロートレック、ルノワール、ゴッホも描いています。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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アコーディオンを弾く人 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの分析的キュビスム時代の作品です。
分析的キュビズムの作品は、対象を徹底的に分解する為、抽象的な作風で何が描かれているのか判別が難しい。
それでは具体的に観て行きましょう。
アコーディオン奏者が描かれている。全体の輪郭からアコーディオン奏者は座っていると認識できます。キャンバスの下部には、肘掛け椅子が描かれていて、肘掛け椅子の肘掛け部分には、アコーディオンの折り畳まれた部分や鍵が描写されています。
作品は、直角三角形の図形、半円形、直角図形から構成されています。分析的キュビズム時代、ピカソは、形や対象を完全には描写していません。ピカソのキュビズムにおける表現は現実性を残しつつ、肖像画や静物画の要素が加えられている為、捉えどころがなく、解釈が困難であると言われます。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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黄色い髪の女 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの超現実主義時代(※1)の作品です。
ピカソの愛人であるマリー・テレーズの寝ている姿がシンプルに描写されていますが、そこからは彼女とピカソの仲睦まじい関係性が読み取れます
ブロンド髪のマリー・テレーズは、豊満でしなやかなで、額から鼻までは一筆書きのような曲線にて描かれ、そのしとやかさを寝顔で表現した作品です。
※1:シュルレアリスム(超現実主義)の時代(1925年 – 1936年):シュルレアリスム(ジークムント・フロイトの精神分析とカール・マルクスの革命思想を思想的基盤とし、無意識の探求・表出による人間の全体性の回復を目指しました。)に興味を持ち、活動した時代
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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マンドリンとギター パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの総合的キュビスム時代(※1)の作品です。
分析的キュビズム時代のピカソは、対象を幾何学的分解・解体して描きました。総合的キュビズム時代には、分解・解体した対象を「コラージュ」「パピエ・コレ(貼り絵、ちぎり絵など)」「トロンプ・ルイユ(だまし絵)」などの技法を用いて再構成して描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は波線、装飾模様、色の彩度・色相を重視した平面図形で描かれています。
また、キャンバスには、メドゥーサのような顔が隠されています。マンドリンとギターの響板にあけた穴が目となり、テーブルの下に歯を剥き出し、うなっているように見えます。メドゥーサはギリシャ神話に登場する架空の怪物ですが、ピカソは自身の心にいる怪物をメドゥーサとして表現したと考えられています。
※1:総合的キュビスムの時代(1912年 – 1921年):総合的キュビズムの時代の絵画は、単調な色彩の分析的キュビズムの絵画と異なり、装飾的で色彩豊かになります。また、壁紙や新聞紙など既成の素材を画面に貼り付ける「パピエ・コレ」という技法が用いられるようになります。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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黒いマンティーラを掛けたフェルナンド パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの青の時代(※1)と薔薇色の時代(※2)の中間にあたる作品です。
ピカソの画風を薔薇色の時代へと導いた、恋人のフェルナンド・オリヴィエが描かれています。
それでは具体的に観て行きましょう。
フェルナンドは、スペインを象徴するマントを身に付けています。表情は肖像画の様式的であり、控えめに抑えた色調にて抽象的に描写されています。スペイン彫刻の影響を受けた自然主義的な表現ですが、薔薇色の時代の特徴である抽象的でロマンチックな作風をうかがわせます。
この作品は、19世紀後半から20世紀のフランス絵画にて描かれた労働者をイメージしていると言われます。ピカソは薔薇色の時代に苦境や窮状を主題として、労働者や物乞いなど貧困層に限定した、数多くの作品を制作しています。
※1:青の時代(1901年 – 1904年):ピカソが19歳のとき、親友のカサヘマスが自殺したことに大きなショックを受け、鬱屈した心象を、無機顔料の青を基調に使い、盲人、娼婦、乞食など社会の底辺に生きる人々を題材にした作品を多く描いた時代。
※2:薔薇色の時代(英語版)(1904年 – 1906年):フェルナンド・オリヴィエという恋人を得て、明るい色調でサーカスの芸人、家族、兄弟、少女、少年などを描いた時代。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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アイロンをかける女性 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの「青青の時代(※1)」の作品です。青の時代では、社会的疎外の孤独感や絶望感を主題とし、社会の底辺に生きる人々を描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
アイロンをかけている痩せ衰えた女性を描いています。
青と灰色で塗らた薄暗い洗濯屋の中で、薄い粗末なワンピース姿の女性が、自分の体重をかけてテーブル上の洗濯物にアイロンがけしています。髪の毛はアイロンの上に垂れています。肉体労働だというのに、女性の身体や腕は細く、目や頬も痩せこけて窪み、不幸にじっと耐えてうなだれているかのようです。
ピカソは女性を特定の場所・時間から切り離し、人物を特定しないことで、貧困、孤独、苦労を表現しました。ピカソが22歳の時に描いた作品です。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵
※1:青の時代(1901年 – 1904年):ピカソが19歳のとき、親友のカサヘマスが自殺したことに大きなショックを受け、鬱屈した心象を、無機顔料の青を基調に使い、盲人、娼婦、乞食など社会の底辺に生きる人々を題材にした作品を多く描いた時代。
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果物皿と水差し パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの総合的キュビズム時代の作品です。
総合的キュビズム時代の作品は、分解された対象を平面的に再構築しています。単調な色彩の分析的キュビズム時代の作品とは異なり、装飾的で色彩豊かです。
それでは具体的に観て行きましょう。
テーブルの上に水差しや果物皿と果物が鮮やかな色彩で描かれています。テーブル、水差し、果物皿と果物は、波頭に乗って前方に押し出されるかのように表現されています。
作品の空間表現は、計算された遠近法による構成ではなく、対象の色遣いと形状の相互関係により成立しています。
鮮やかな色彩の対象とシンプルな背景により、対象が浮き出て見える効果があります。また、果物皿と水差しが離れて見える錯覚が生じます。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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7月14日 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの作品です。
ピカソが20歳の時に描いたものです。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は、祝祭にて花火が打ち上げられ、群衆は歓喜の声をあげて祝祭を歓迎する様子を描いています。ピカソは、群衆の描写にあたり、左右を対比的に描いています。
右側の群衆は、赤色と青色の調和によって表現され、個々の描写はないに等しく、くさび形で描かれています。
一方、左側の群衆は、白色、黄色、緑色、ピンク色、淡青色の色彩を用いて描写され、顔の輪郭は黒色の太線にて縁取られています。
また、作品の創り出す空間は「動」であり、人物が高速で動いているように描かれています。左側前方の群衆は見る側に対して向かってくる迫力があります。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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詩人 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの分析的キュビスム時代の作品です。本作は、1911年夏フランス・ピレネー山脈の麓セレにて制作されました。
分析的キュビズム時代の作品は対象を断片的に分解し、三次元から二次元へと再構築する為、抽象的な作風となっています。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作では、詩人を視覚的に分解し、直線・曲線で囲まれた図形にて再構築され、キャンバス中央にあるピラミッド形が密に連なった図形にて表現されています。
キャンバス中央上部には、三角形の頂点が貫通した小さな丸形がありますが、これが詩人の目です。また、細長く、幅広い図形は鼻であり、三日月形の図形は口髭です。
キャンバス中央にて目、鼻、口髭が認識できると、顎、パイプ、首、痩せ細った胴体、肘、肘掛け椅子が見えてきます。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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