耳を切った自画像 ファン・ゴッホ

オランダのポスト印象派の画家、フィンセント・ファン・ゴッホの代表作のひとつです。
ゴッホとゴーギャンは、南フランスのアルルで共同生活を始めますが、対象を見ながら制作したゴッホに対し、ゴーギャンは描く対象の写実的表現を否定していた為、両者は対立してしまいます。
精神的に追い詰められていたゴッホは、遂にゴーギャンと芸術論で激論を交わし、両者の間には決定的な溝が生じてしまします。そして、アルルの家を出ていくゴーギャンをゴッホは追いかけ、ゴーギャンを一目した後、剃刀で自身の耳を切り落とし娼婦ラシェルのもとへ届けるという「耳切り事件」をおこしてしまいます。
本作品は、この事件直後に描かれた作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
ゴッホの特徴である太く絵具の質感を残した独特の筆触で描写される本作のゴッホは、包帯で巻かれる顔側部など痛々しい様子で描かれています。その表情やゴッホ自身へと向けられる視線は冷静であり、一見すると落ち着きを取り戻したかのようにも見えます。しかし、この事件以降、ゴッホは幻覚と悪夢にうなされるようになり、その症状は生涯続いたと伝えられています。
また背後には浮世絵『芸者』が飾られており、鮮やかで明るさの増した色彩と共に、ゴッホの日本趣味への傾倒も見られます。
ロンドンのコートールド・ギャラリー所蔵。
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フォリー=ベルジェールのバー エドゥアール・マネ

印象派の創設に影響を与え、近代美術の父と呼ばれるエドゥアール・マネの作品です。
マネが世を去る前年に描かれた、最後の大作と言われています。
具体的に観て行きましょう。
当時のパリで最も大きな劇場「フォリー・ベルジェール」内のバーを描いたものです。
フォリー・ベルジェールは、中産階級から上流階級の人たちが集まる非常に和やかで楽しい雰囲気の劇場でした。
しかし、マネが描いたバーメイドは、どこか孤立し、やや暗めの表情で描かれています。マネは当時のパリ社会の虚構・虚像(裏面)を描こうとしたのでした。
バーメイド正面の姿と後ろ姿が一致しないことや、遠近法の歪み、あまりに右側に描かれたバーメイドの後ろ姿など、一見、不可解な描き方をしています。
しかし、それは意図的に計算されたもので、例えば遠近法を無視することで、鑑賞者の視線がウェイトレスの空虚な表情に集まるように工夫されているのです。
ロンドンのコートールド・ギャラリー所蔵。
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松の木があるサント=ヴィクトワール山 ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの代表的な風景画です。
セザンヌは同じテーマを繰り返して描くことが多い画家で、「サント=ヴィクトワール山」も数多く描いています。
本作品で注目される点は、松の構造的連続性と色彩の調和的表現と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面左側に配される松の大樹は、大きく存在感を示しているものの、枝に茂る針葉は空の青灰色と調和するように描かれています。
また針葉の鮮やかな緑色は、中景に広がる田畑と呼応しており、色彩的な統一感と構成要素同士の連動性を生み出しています。
特に下地に塗られた明灰黄色を活かした、やや淡白で平坦的な調和的色彩表現は革新的で、後のピカソを始めとするキュビズムの画家たちに大きな影響を与えました。
ロンドンのコートールド・ギャラリー所蔵。
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