ルーブル美術館グランド・ギャラリーの改造計画

18世紀のフランスを代表する新古典主義の風景画家、ユベール・ロベールの作品です。
ロベールは、廃墟や古代建築物のある風景を得意とし、時には生命力溢れる人物を配置する知的で叙情豊かな風景表現で名を馳せ、「廃墟の画家」と言われ人気がありました。
また庭園設計や絵画管理者としての才能も発揮し、1790年代後半に参加したルーブル宮改造計画における一連の諸作品は傑作と言われます。本作品は、その傑作の一つです。
ロベールは自分が理想とするルーブル美術館を描きました。天井は高く、自然光が入り、画家を目指すものは写生が出来、誰もが素晴らしい画を見ることが出来る、誰にでも開かれた美術館。そんな美術館を、彼は夢見ました。
そして、宮殿であったルーブルはルーブル美術館として生まれ変わり、現在、ロベールが理想とした美術館そのものになっています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

トゥーロン港

18世紀のフランス風景画を代表する画家、ジョゼフ・ヴェルネの作品です。
ヴェルネは、光と大気の時間的変化に強い関心を持っており、光とその陰影を多様に表現することで、大気感を感じさせる風景画を多く描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品は、フランスの海港を主題にした連作中の一点です。トゥーロンは南仏プロヴァンス地方に位置する地中海に面した都市です。
画面の4分の3を占める明るい光に満ちた空やざわめく木々の描写にて、地中海の穏やかな気候を見事に表現した作品です。
まさに、光とその陰影を多様に表現することで、大気感が絵から滲み出ています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

アタラの埋葬

18世紀後半に活躍した新古典主義とロマン主義の折衷画家、アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾンの代表作です。
トリオゾンは、確かな写実描写をベースに、神秘的で夢想性豊かな作品を描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品は、ロマン主義文筆家のフランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンが1801年に出版した小説「アタラ」の一場面で、インディアンの恋人シャクタスが死したアタラの亡骸を修道士オブリーと共に洞窟内へ埋葬しようとする場面が描かれています。
柔らかい光に浮かび上がるアタラ。画面中央へ配された洞窟の入り口から射し込む陽光によって白く輝くアタラの両手には十字架が握らされており、アタラの純潔性を示しています。一方、同時に包まれた白布に発生する衣襞で強調された細くしなやかな肢体は官能的で神秘的でもあります。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

アポロとダフネ

18世紀イタリア画家のロココ美術・ヴェネツィア派の巨匠、ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの作品です。
ティエポロは、軽快で優美な筆触と透明感に溢れる明瞭な色彩、建築的遠近法や仰視法を巧みに使用した空間構成で、壮麗で輝きに満ちた独自の作風を確立しました。
それでは具体的に観て行きましょう。
作品は、オウィディウスの「転身物語」の一場面です。ダフネは河の神の娘です。ある日、キューピットが恋を掻き立てる黄金の矢をアポロへ、恋を拒否する鉛の矢をダフネに射ました。
アポロはダフネを必死に追い、力尽きたダフネは父に助けを求めます。すると、ダフネの腕から枝が足からは根が生えて、月桂樹に変身します。
明るい赤と黄の衣服が、深い青で描かれた背景と対比を成しています。登場人物が観る者の空間に入り込んできそうな様子で描かれています。
にもかかわらずダフネの姿は風景に溶け込んでいるようです。これは、ダフネが一本の木の下に配されており、その木はダフネを帽子のように保護しつつも、人間から植物への変身を暗示している為です。
壮麗で輝きに満ちた作品です。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

ナルニの橋

19世紀フランスの風景画家、ジャン=バティスト・カミーユ・コローの代表作です。
コローの作品は、次世代の印象派との橋渡しをしたと言われ、印象派・ポスト印象派のピサロ、モネ、セザンヌ、フォーヴィスムのマティス、ドラン、キュビスムのピカソ、ブラック、グリスなど、後世の多くの画家に影響を与えました。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品では、コローがイタリア旅行で見た風景を大胆な筆遣いでスケッチしています。地中海の明るい陽光とイタリアの自然が溶け合った光景が、コローのみずみずしい感性で描かれている作品です。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

真珠の女

19世紀フランス画家、ジャン=バティスト・カミーユ・コローの人物画の最高傑作と言われる作品です。
コローは、晩年、リューマチが悪化し、戸外で風景画を制作できなくなったため、アトリエで人物画を描きました。
コロー作品は、次世代の印象派との橋渡しをしたと言われ、印象派・ポスト印象派のピサロ、モネ、セザンヌ、フォーヴィスムのマティス、ドラン、キュビスムのピカソ、ブラック、グリスなど、多くの後世の画家に影響を与えました。
さて、本作品ですが、構図や彼女のポーズは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」から採られています。
ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」が神秘的な微笑をたたえている一方、コローの描いた「真珠の女」はとても優しく温かい表情です。そして、コロー独特の色数を抑えた褐色的な色調・色彩とよく調和しています。
この作品はコローのお気に入りで、死ぬまで手放さず、客間に飾っていたそうです。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

アプルモンの樫の木

19世紀フランスのバルビゾン派(※1)の画家、テオドール・ルソーの作品です。
ルソーは、フランスの現実風景そのものを芸術的表現の主題として絵画を描きました。
それでは、具体的に観て行きましょう。
大きな樫の木のたくましい幹と豊かに生い茂った木の葉が、この絵画の主人公です。農民や牛はあくまでも脇役です。画面の3分の2を占める明るい空が樫の木を強調しています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

※1:バルビゾン派は、フランスのバルビゾン村やその周辺に画家本人が滞在又は居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた人たちです。

ローマのサンタンジェロ城とテヴェレ川

19世紀フランスの風景画家、ジャン=バティスト・カミーユ・コローの作品です。コローは、理想化された風景ではなく、イタリアやフランスのありふれた風景を詩情豊かに描きました。
コロー作品は、次世代の印象派との橋渡しをしたと言われ、印象派・ポスト印象派のピサロ、モネ、セザンヌ、フォーヴィスムのマティス、ドラン、キュビスムのピカソ、ブラック、グリスなど、多くの後世の画家に影響を与えました。
「どんな場所あるいは物を描くにしろ、自分の第一印象に忠実であるべきです。もし自分が本当に感動していれば、自分の感動が真実なものであることを他人に伝えることが出来る筈です」
コローの晩年の言葉です。ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

マントの橋

19世紀フランスの風景画家、ジャン=バティスト・カミーユ・コローの晩年の傑作です。
コローは、理想化された風景ではなく、イタリアやフランスのありふれた風景を詩情豊かに描きました。その作品は、次世代の印象派との橋渡しをしたと言われ、印象派・ポスト印象派のピサロ、モネ、セザンヌ、フォーヴィスムのマティス、ドラン、キュビスムのピカソ、ブラック、グリスなど、多くの後世の画家に影響を与えました。
それでは具体的に観て行きましょう。
手前の木々のゴツゴツとした強さと後景の橋の規則的な丸みが対照的です。橋の持つ幾何学的な構造が、画面に安定感をもたらしています。
手前の緑と川面の青、そして木々の葉から空へと常がる静かな風景は、安らぎを感じさせ、そして、釣り人の帽子の僅かな赤が、良いアクセントになっています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

Copyrighted Image