サンタ・トリニタの聖母

この作品は中世のイタリア人画家チマブーエによって描かれた作品です。
ジョットの『オンニサンティの聖母』、ドゥッチョの『ルチェライの聖母』と並べられて、フィレンチェのウフィツィ美術館に展示されています。
玉座の下部分に広く面積を割き、4人の預言者を描いています。預言者を描くことには象徴的な意味があり、アーチの中に上半身から上が描かれています。
アーチの中の預言者の両端にはエレミヤとイザヤがいて、処女懐胎によるキリスト誕生の予言を確認するかのような目で、玉座の下から赤ん坊を見上げています。
救世主である赤ん坊は、玉座の真下に描かれている2人、アブラハムとダビデの子孫にあたります。
本作は神の子であるキリスト、キリストの母、そして聖霊という三つの要素に焦点を置いており、三位一体を唱える教会に飾るにはうってつけの作品でした。
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オンニサンティの聖母

この作品は中世後期のイタリア人画家&建築家のジョット・ディ・ボンドーネによって描かれた作品です。チマブーエの『サンタ・トリニタの聖母』、ドゥッチョの『ルチェライの聖母』と並べられて、フィレンチェのウフィツィ美術館に展示されています。
鋭角の三角形をした破風を持つゴシック建築のような玉座、人間味を帯びた聖母子の顔立ち、内に包まれた肉体の形体に沿って施された衣の襞(ひだ)、しっかりと地に足をつけた人物たち。ジオットは13世紀のフィレンツェ美術を厚く覆っていたビザンティン様式を拭い去り、自然主義という新しい観点を持ち込み、ルネサンス美術の扉を開きました。
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聖家族

ルーカ・シニョレッリの作品。フィレンチェのウフィツィ美術館所蔵。
ミケランジェロはシニョレッリの仕事をいつも賛嘆していて、ミケランジェロの代表作「最後の審判」の制作では、シニョレッリの表現を参考にしたと言われています。
この作品の構図は、聖母マリアが聖書を読み、ヨセフがイエスを礼拝しています。この構図は15世紀以前には登場しないルネサンス的構図で、かつては聖母子だけだったのが、聖母マリアの夫のヨセフもクローズアップされています。
中世ではヨセフは付録的でしたが、その地位は市民社会の発展と共に上昇していきました。この作品では、ヨセフは権威ある強壮な人物で、聖母子の保護者として大きく描かれています。この構図が、後の三位一体の構図の基になっていると言われています。
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ドーニ家の聖家族

ミケランジェロの作品。フィレンチェのウフィツィ美術館所蔵。
この作品はドーニ家の婚礼に際し、記念として家族礼拝用に制作されたものです。
画面は前後三層からなり、奥の空間が異教徒の律法無き時代、ヨセフのいる空間がユダヤ的律法の時代、聖母のいる空間が恩寵の時代でキリスト教から見た3時代を象徴しています。色調は鮮やかで影がない。これはミケランジェロが明暗と陰影ですべてを表現しようとしたレオナルドに対抗して、鮮やかな象徴的色彩を主張したものです。
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受胎告知

サンドロ・ボッティチェッリの作品。フィレンチェのウフィツィ美術館所蔵。
チェスの盤のような床のシンプルな一室で、「受胎告知」のシーンが描かれています。開けられた窓の向こうには、川が流れ、穏やかな風景が広がっています。
受胎を告げる大天使ガブリエルは、たった今、地面に降り立ったかのようなジェスチャーをしており、衣服の軽やかな動きからもそれが感じられます。
聖母マリアの恐れおののいている様子を、わずかに膝を折る描写で表現しています。大天使ガブリエルが捧げ持つ白百合は、聖母マリアの「純潔」の象徴で、当時の「受胎告知」のシーンに、よく描かれました。
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聖なる寓意


イタリアのルネサンス期の画家、ジョヴァンニ・ベッリーニの作品。フィレンチェのウフィツィ美術館所蔵。
風景には、多色彩の大理石の敷石が敷き詰められた広いテラスと、手すりで隔てられた湖岸が描かれています。風景の左側で聖母マリアが、受胎したことを象徴する、円錐形の天蓋の下で崇められています。その天蓋には四段の階段がついているとともに、側面にはマルシュアースの神話の場面が描かれています。聖母マリアの近くには、二人の女性の姿が描かれており、二人の女性の内一人は、足が描かれていないため、空気中を漂っているように見えます。
風景の中央には、小さな木と銀色の果実とともに四人の子どもたちが描かれています。木は知恵の樹を表し、果実は生命や知識の象徴です。
右側には、ヨブと聖セバスティアヌスがいます。手すりの外側には、ナザレのヨセフ(もしくはペトロ)とパウロがいます。
背景の大きな湖の向こう側に、男性や動物たちとともに、岩脈が描かれています。湖岸には、小さなほら穴の中に羊飼いやケンタウロスが描かれています。
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バッカス

イタリアのバロック時代の巨匠、カラヴァッジョの作品です。フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵。
カラヴァッジョの描いた古代の酒神バッカスは、神というよりも神に扮装した少年といった印象です。手前の皿の果実は熟しきって腐りかけた皮から虫食いの跡に至るまで、丹念に描かれています。当時の絵画の主流であった観念的な身体ではなく理想化された完璧なる肉体を持つ古代神でもなく、生々しい存在感を持つこのバッカスは、新しいバロックの自然主義を切り開きました。
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キリストの洗礼

この作品に描かれているのは、新約聖書の中のこんな場面です。
洗礼者ヨハネが荒れ野に現れて、罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた。
(中略)彼はこう宣べ伝えた。「わたしよりも優れた方が、後から来られる。わたしは、かがんでその方の履物のひもを解く値打もない。
わたしは水であなたたちに洗礼を授けたが、その方は聖霊で洗礼をお授けになる。」
そのころ、イエスはガリラヤのナザレから来て、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられた。
水の中から上がるとすぐ、天が裂けて”霊”が鳩のように御自分に降ってくるのを、御覧になった。
すると、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が、天から聞こえた。
(日本聖書協会「新約聖書」マルコによる福音書1:4-11より)
ということで、中央がイエス・キリスト。右側で洗礼を授けているのがヨハネです。
イエスの頭上には、いままさに降りてこようとしている鳩(=精霊)と、その上にそれを遣わした神の手が見えます。
左側には洗礼を終えたイエスを迎えようと待っている天使たちがいます。
この作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチとその師匠のヴェロッキオにより描かれました。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたのは、左側の天使と遠景、キリストの足元の水と言われています。
ダ・ヴィンチが描いたところは、他と明らかにクオリティが違いますね。このレオナルドが描いた天使を見て、師匠のヴェロッキオはそのずば抜けた才能にはかなうまいと、二度と絵筆をとらなかったと言われています。
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ウルビーノのヴィーナス

イタリアの巨匠ティツィアーノが1538年に描いた作品。
ローマ神話のヴィーナスを描いており、ポーズはジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」を模倣したものと言われていますが、 ティツィアーノはさらに官能性を追求した作品にしました。 ヴィーナスの右手は愛を表す花束を持ち、左手は画面中央に陰部を隠しながらも挑発するかのように置かれ、寓意画では貞節を意味するイヌは、そばで眠っており、その役割を放棄しています。
この絵画はウルビーノ公爵グイドバルド2世・デッラ・ローヴェレの依頼によって描かれたものですが、これほどまでに官能的に描かれているのは、公爵の年若い花嫁となったジュリア・ヴァラノへの「教育」を意図したものではないかと言われています。
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