シュミーズ姿の少女 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの作品です。
ピカソの青青の時代(※1)から薔薇色の時代(※2)への過渡期の作品と言われ、作品上にも青の色調の表面に上塗りされたピンク色が混じっています。
また、薄い青は、女性から冷淡さを取り除き、官能性を感じさせます。これは青の時代の作品が性的な情熱を描くものではなかったことからすると、大きな変化で、ピカソの薔薇の時代の幕開けを予感させます。
※1:青の時代(1901年 – 1904年):ピカソが19歳のとき、親友のカサヘマスが自殺したことに大きなショックを受け、鬱屈した心象を、無機顔料の青を基調に使い、盲人、娼婦、乞食など社会の底辺に生きる人々を題材にした作品を多く描いた時代。
※2:薔薇色の時代(1904年 – 1906年):フェルナンド・オリヴィエという恋人を得て、明るい色調でサーカスの芸人、家族、兄弟、少女、少年などを描いた時代。
ロンドンのテート・ブリテン所蔵。
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三人の踊り子(ダンス) パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソのシュルレアリスム時代(※1)の作品です。
踊りは、恋愛、男女、死を連想させると解釈されています。真ん中の踊り子は、ピカソの友人であり、ガロガロの恋人であるカルロス・カサヘマスです。
カサヘマスは傷心のあまりガロガロを銃殺し、その後、銃で自殺しました。ピカソは、この出来事を元に三角関係の恐ろしさを表現した作品を描いたのでした。
ロンドンのテート・ギャラリー所蔵
※1:シュルレアリスム(超現実主義)の時代(1925年 – 1936年):シュルレアリスム(ジークムント・フロイトの精神分析とカール・マルクスの革命思想を思想的基盤とし、無意識の探求・表出による人間の全体性の回復を目指しました。)に興味を持ち、活動した時代。
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休日 ジェームズ・ティソ

19世紀フランスの画家、版画家、ジェームズ・ティソの作品です。
ティソは、19世紀後半のフランス裕福層の装いと暮らしをエレガンスに描いた事で有名な画家です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作品は、ティソの自宅で人々が休んでいる姿を描いたものです。当時の流行のファッションが細かく描かれており、オシャレで優雅、かつ上品な雰囲気が伝わってきます。
また、ティーセットや食べ物も描かれており、当時の人が紅茶の本場イギリスでどのようなティータイムを過ごしていたのかもよく分かる、楽しい絵画です。
ロンドンのテート・ブリデン所蔵。
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青と金のノクターン:オールド・バタシー・ブリッジ ホイッスラー

19世紀後半のアメリカ画家、ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラーの作品です。ホイッスラーは、日本美術(浮世絵)の色調や画面構成などにを取り入れ、同時代の印象派とも一線を画した、絵画を描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
ロンドンのテムズ川に架かるバターシー橋を描いたものです。ノクターン(夜想曲)を思わせる青の階調のなかに僅かに点じられた金色は花火です。
川に浮かぶ船から見たような視点、T字型の構図、珠江の船頭や川岸、家並みのシルエットなどには、浮世絵の画面構成が取り入れられています。
ロンドンのテート・ブリテン所蔵。
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白のシンフォニー ホイッスラー

19世紀後半のアメリカ画家、ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラーの代表作です。ホイッスラーは、日本美術(浮世絵)の色調や画面構成などにを取り入れ、同時代の印象派とも一線を画した、絵画を描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
日本の扇を持った白衣の女性が暖炉の上に置かれた磁器をじっと見つめています。モデルが着ている白いモスリン風の衣服からは、透明感や空気感などの質感が伝わってきます。当時好まれたヴィクトリア朝のモティーフを画題としながらも、日本風の団扇や朱色の碗、白磁の壷などには日本美術の要素が配された作品です。
画面右下の花は、全体を描かず、その一部が偶然、画面に割り込んで来たかのような構図となっています。このような構図は浮世絵版画を参考にしたと考えられます。
ロンドンのテート・ブリテン所蔵。
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カーネーション、リリー、リリー、ローズ

19世紀のアメリカ人の画家、ジョン・シンガー・サージェントの作品です。
幻想的な美しさと懐かしさにあふれる作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
夕暮れ時の淡い光に照らされた花の咲き乱れる庭。提灯を手にした二人の少女。
ピンクのバラが咲き乱れ、アクセントとして黄色のカーネーションと背の高い白いユリが咲く庭に二人は立っています。画全体が緑の葉で覆われ、奥行きを与える水平線は存在しません。鑑賞者を子供たちと同じ場所に立ってるような気持ちにさせます。
描かれている提灯とユリは、日本のものです。当時のヨーロッパでは、ジャポニズムが流行っていました。
暮れていく淡い光の下、花ざかりの庭で丁寧に描かれたからこそ生み出された幻想的な世界、その中に潜む日本、それが私たちに美しさと懐かしさを感じさせるのでしょう。
ロンドンのテート・ブリデン所蔵。
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戦車の上からダンテに語りかけるベアトリーチェ

18世紀イギリスの詩人、画家、銅版画職人、ウィリアム・ブレイクの作品。
ブレイクは英国ロマン主義の先駆者と言われ、作品に秘められた哲学的で神秘的な意味とその創造力から、英国で最も重要な芸術家の一人とされています。
さて、本作はダンテ(※1)の叙事詩「神曲」第29・30曲の挿絵です。
獅子の胴体に鷹の頭と翼と渦を巻く車輪をつけた戦車を引くグリフォン(※2)が中央に据えられています。台の上に立つのはベアトリーチェ(※3)で、画面の右下に立つのがダンテです。車がダンテの前で止まり、花の雲の中にベアトリーチェの姿を認めるシーンを描いています。
個々の幻想的なイメージ、水彩による淡く美しい色彩、曲線の装飾性など、ブレイクの創造性が際立つ作品です。
ロンドンのテート・ギャラリー所蔵。
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※1:ダンテは、13、14世紀のフィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。イタリア文学最大の詩人と言われています。
※2:グリフォンは、鷲(あるいは鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物。語源はギリシア語のグリュプスで、曲がった嘴の意味です。
※3:ベアトリーチェは、 ダンテの叙事詩「神曲」の登場人物です。

ニュートン

18世紀イギリスの詩人、画家、銅版画職人、ウィリアム・ブレイクの作品。
ブレイクは英国ロマン主義の先駆者と言われています。
生きている間は、その独特で難解な作風のために狂人と見なされ、美術界や文学界から無視されていましたが、後に作品に秘められた哲学的で神秘的な意味とその創造力が再発見され、現在では、英国で最も重要な芸術家の一人とされています。
さて、本作は科学一辺倒の当時の世相を批判し描かれた作品です。
ブレイクは物理学者アイザック・ニュートンを、全てを理性と論理で割り切ろうとする嘆かわしい存在と考えました。
薄暗い海底で、下等な生物と共にニュートンがコンパスを用いて物質世界の解明を試みていますが、その体は岩と同化を始めています。ニュートンの鋭い視線とコンパスを握っている手・指が何とも言えない雰囲気を醸し出しています。
ロンドンのテート・ブリテン所蔵。
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フラットフォードの製粉所

19世紀イギリスを代表する風景画家、ジョン・コンスタブルの作品です。
コンスタブルは終生故郷サフォーク周辺の身近な風景を描き続けました。刻々と変化する光の効果を捉えようとしたことやパレットで色を混ぜ合わせるのでなく画面上に異なる色価の筆触を並べるなど、その製作態度や技法は印象派の先駆けとなるものでした。
それでは具体的に観て行きましょう。
流れる雲の下、緑なす田園地帯の爽やかさは、思わず深呼吸してみたくなるような美しさです。緑や青を主とした寒色系の画面の中に置かれたわずかな赤がアクセントとなり、作品に温かい、やさしい情感を与えてくれます。
カンスタブルの絵は緻密に見えますが、実は比較的荒いタッチで描かれており、大気の揺らぎや光の煌めきをみずみずしいタッチで表現しています。
ロンドンのテート・ブリテン所蔵。
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