リッタの聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作はミラノ貴族のリッタ家が所有していたことから「リッタの聖母」と呼ばれています。
それでは具体的に観て行きましょう。
幼児キリストに母乳を与える聖母マリアを描いた作品です。幼児キリストが左手に握っているゴシキヒワは、キリストの受難の象徴です。
アーチ状の二つの窓がある薄暗い背景に人物像が配されており、窓外は近くを明確に描き、遠くを不明瞭に描く、空気遠近法を使用した山並みの風景が描かれています。
気品や慈愛に満ちた聖母マリアの表情は優雅で繊細に描かれ、幼児キリストの表情は幼いながらも気高さと神々しさを放っています。筆触は繊細かつなめらかで、色彩も赤と青の対比が美しい。
全体が暗く描かれている中、聖母マリアと幼児キリストには光が当てられ、明るく描くことで、母子を際立たせる手法がダ・ヴィンチらしい作品です。
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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ブノアの聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作は、ダ・ヴィンチが師匠のヴェロッキオから独立して最初に描いた作品です。
当時ダ・ヴィンチは視覚理論を追求していました。当時の考えでは、人間の目から、もっとも重要なものを視野の中心にとらえる光が発せられるとされていました。ブノアの聖母のマリアに抱かれたキリストは、聖母マリアの手によって視線を花により導かれています。
この作品は多くの画家に模倣され、ラファエロの「カーネーションの聖母」も、ブノアの聖母の影響を受けていると言われています。聖母マリアとキリストの配置、聖母マリアの顔の傾き、右上の窓、青の膝掛け等、ブノアの聖母を模擬しているのは明らかです。

ラファエロの「カーネーションの聖母」

サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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ドラ・マールの肖像 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの作品です。
本作は、ゲルニカや泣く女が制作された年と同じ1937年に描かれたものです。徳島県立近代美術館にあるので、是非、実物を観てみて下さい。
それでは具体的に観て行きましょう。
ピカソの愛人、ドラ・マールを描いた作品です。同年に制作された、ゲルニカや泣く女と比較すると、ドラ・マールの肖像には悲壮感はなく、明るい雰囲気が感じ取られます。また、赤く塗られた長い爪やはっきりした二重の瞳にはマールの美しさに加え、意志の強さや知性など、マールの内面も捉えて表現されています。
本作が描かれたのは、もうひとりの愛人、マリー・テレーズ・ウォルターが娘のマヤを出産したばかりの頃です。
正妻のオルガもいるのに、芸術家には恋愛にご法度は無いのでしょうかねぇ。
徳島県立近代美術館所蔵。
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ボールに乗った女道化師 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの青の時代と薔薇色の時代の中間に位置する作品です。
青の時代には青一色であった画面に、灰色や、そして次第に暖かい赤色が加えられていきます。主題も憂鬱感や社会的疎外感から、次第に薔薇色の時代の陽気さや楽観主義へと変わっていきます。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品のピンク色の色調は「薔薇色の時代」のものです。但し少女のコスチュームは薄ら寒い灰色で、彼女のしなやかな体はやや異彩を放っています。柔軟な彼女の体、丸みを帯びたポーズ、弾むようなボールの形は、角ばった筋肉質で四角い箱の上にどっしりと構える巨大な男性と対極をなしています。
繊細な乳白色、ピンクそしてブルーの色調で満ちた画面、青青の時代とは異なった新たな空気の感覚、そして対象物間の空間の美、青の時代から薔薇色の時代への過渡期の作品でありながら、本作は薔薇色の時代の代表作の一つと言われています。
モスクワのプーシキン美術館所蔵。
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オルタ・デ・エブロの工場 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの分析的キュビスム時代の作品です。アフガニスタンの郵便切手になった事でも有名な作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作はピカソがスペインで休暇中に見た工場を描いたものです。
分析的キュビスム時代は、プロトキュビスムの時代から更に分析が進み、対象が徹底的に分解され、何が描かれているのか識別することが困難なところにまで進んでいきました。
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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質素な食卓 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの青の時代の作品です。
ピカソの制作した中で最も有名な版画と言われています。
それでは観て行きましょう。
夫婦と思われる痩せ細った男性と、くたびれたような表情の女性が、ワインボトルと少量のパンのみあるテーブルに並んで肩を座っています。
この作品はピカソが版画家としてのキャリアを築きはじめたばかりの頃に描かれたもので、当時のピカソのテーマである落胆と孤独がよく表れています。
宮城県美術館所蔵
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すいかを食べる男と山羊 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの晩年の作品です。
ピカソは晩年、「男と女」、「人間と動物」、「画家とモデル」、「老人と若者」と言った、相反するものを並べてモチーフにする絵画を多く描いています。
そこに共通するのは、人間の原初的な欲求―食欲や性欲を満たそうとする、野性的なグロテスクと無垢のイメージです。
スペイン絵画ではメロンやすいかを食べる少年というのは慈悲的対象となる貧しくも無垢で生命力に溢れる人間像を示します。座り込んですいかを食べている少年と山羊の組み合わせは、ピカソがスペインで知った牧歌的な生活を思い起こさせます。
また、ピカソは山羊が大好きで、生活に身近な動物でもありました。
箱根のポーラ美術館所蔵。
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シルヴェット・ダヴィット パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの晩年の作品です。
本作はシルヴェット・ダヴィットという女性を描いた作品で、ピカソが73歳、シルヴェットが20歳の時でした。
作品は全体的に白・黒・グレーといったモノトーンで統一されており、背中や首など身体の部分が黒く太い線で力強く描かれています。
色味を揃えることで美しい顔立ちが強調されています。
箱根のポーラ美術館所蔵。
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アンブロワーズ・ヴォラールの肖像 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの分析的キュビスムの時代(※1)の作品です。
本作品のモデルはフランスの美術商、アンブロワーズ・ヴォラールです。ヴォラールは、ピカソを含む当時無名の画家に対して物質的・精神的な援助をしました。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面を切り込むような線が何本もあり、それらが切り子のような面がランダムに並べられています。ヴォラールは、厳しい表情で描かれていますが、光を微妙に当てることにより、平坦にリズム感を加え、画面の中から顔が浮かび上がって来るように工夫されています。
人や物を平面に細分化、解体し、画面上で組み合わせたり重ねたりすることで、遠近法で表される空間とは異なった空間を表現しています。
※1:分析的キュビスムの時代(1908年 – 1912年):プロトキュビスムの時代(1908年 – 1909年)から更に分析が進み、対象が徹底的に分解され、何が描かれているのか識別することが困難なところにまで進んでいきました。
モスクワのブーキシン美術館所蔵。
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