コネスタビレの聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの初期の作品(1504年頃)です。本作は、直径18cmの小さな円形の絵で、ラファエッロが聖母マリアを初めて円形で描いた作品です。
ラファエッロがそのスタイルを完成させる前の作品ですが、構図が素晴らしく、美しいリズム感があり、色彩の調和と気高さが感じられます。
それでは具体的に観て行きましょう。
聖母マリアが幼子イエス・キリストを抱きながら本を読んでいる情景を描いた作品です。聖母マリアは赤い衣を纏い、彼女の特徴である青いマントに包まれています。キリストを見下ろす母性的な眼差しは、どこか憂いを帯びています。それは、聖母マリアが読んでいる本に、息子の悲惨な死が予言されているからでしょう。背景には、雪をかぶった山と枯れた木がりますが、緑の草原が明るく、春の再生を予感させます。
1881年に本作は板からキャンバスへと移されました。その際、オリジナル案では、聖母マリアは本の代わりにザクロをじっと見つめていたということが発見されました。ザクロはキリストの受難を象徴しています。
本作はラファエッロがそのスタイルを完成させる前の作品ですが、構図が素晴らしく、美しいリズム感があり、色彩の調和と気高さが感じられます。
ロシアのエルミタージュ美術館所蔵。
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+2

アハ・オエ・フェイイ(おや、妬いてるの?) ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1892年)です。
ゴーギャンがポリネシア滞在中に描いた作品です。ゴーギャンは本作をとても気に入っており、友人への手紙の中で「最近、ビーチで二人の女性を描いた素晴らしいヌード画を作ったんだ。今までで最高の作品だと思う」と書いています。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品には二人の女性が海岸沿いの砂場で休憩している光景が描かれています。ピンク色の砂場の左側にある海は様々な色が塗られており、ゴーギャンは海上にある太陽光の反射や輝きを灰色、オレンジ、黄土色、そして黒のパッチ達によって表現しました。
二人の女性の内一人は砂場に座っており、もう一人は横たわる姿勢を取っており昨日の愛と明日の愛について話しています。そして、ある発言が彼女たちに不協和音を引き起こします。「おや?妬いているの?」。絵画の左下には、タヒチ語でこの言葉が記されています。
また、女性たちを同時に影の下に隠すことによって、図上にコントラストを作る事に成功しています。彼女らの体の約半分は濃い色で描かれており、もう半分は比較的に薄く透明的な色で塗られています。これは反自然主義の観点で現実を捉えた結果で、本作に描かれている女性たちの美しさは本当のものではなく、ある一種の精神状態なのです。
ゴーギャンは色を介在することによって、観るものが絵画を主観的に感じ取る事ができるように描きました。ゴーギャンは、ポリネシアで観た風景を絵画で再現し、ポリネシアの状況を伝えようとしたのでした。
モスクワのプーシキン美術館所蔵。
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+2

あなたは何処へ行くの? ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1893年)です。
本作はゴーギャンがタヒチ滞在中に描いたものですが、謎多い作品と言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
手前に大きな果物を胸の前に抱いた若い娘が描かれています。原色の赤色の腰布のみを身に着ける姿は、野性的な官能性と、活き活きとした生命力に溢れています。
また中景には左側に木陰で休む黒髪の女性が2人、右側に清潔な白地の衣服を身に着ける、子供を抱いた女性が描かれています。強烈な陽光による輝くような原色で彩られた風景は、観る者に強烈な心象を残します。
そして本作に関する謎ですが、「あなたは何処へ行くの?」は、誰が誰に向けられて発しているのか?前景の若い女性が抱く南国風の果物の意味は何か?4人の登場人物の視線が交わらないのは、何を意味しているのか?
様々な説が唱えられていますが、定説はありません。
エルミタージュ美術館所蔵
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+3

アルルの夜のカフェにて(ジヌー夫人) ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1888年)です。
ゴーギャンがアルル滞在期に描いた絵画の代表作品の一つで、ファン・ゴッホの二つの作品「アルルの女(本を持つジヌー夫人)」と「夜のカフェ」からの引用により作成されています。
それでは具体的に観て行きましょう。
手前のモデルは、カフェ・ド・ラ・ガールの主人の妻マリー・ジヌーです。
妻マリー・ジヌーの姿はファン・ゴッホの「アルルの女(本を持つジヌー夫人)」を、本場面の舞台となるカフェは「夜のカフェ」を引用しています。

画面右側に配されるジヌー夫人の姿は、薄く柔らかい笑みを浮かべながら、やや気だるそうにテーブルへ肘を突きながら座っています。その背後には一台のビリヤード台が配され、画面奥のカフェに集う客や娼婦らとの関係性を保っています。画面左側からは青白い煙草の煙がたなびき、夜のカフェの独特の雰囲気を強調する効果があります。
ゴッホの作品ではゴッホ自身の孤独な感情や心理を対象に重ね表現されていますが、本作からは感じられず、むしろ対象と一定の距離感を保つことで、絵画としての調和と均衡を保っています。
本作から、ゴッホが感情的な人間で絵画に対しても同様のアプローチを行っていたのに対し、ゴーギャンが基本的に客観的なアプローチを行うという根本的な違いが見て取れます。
モスクワのプーシキン美術館所蔵
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+2

サント=ヴィクトワール山 ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌがサント=ヴィクトワール山の風景を描いた数ある作品のひとつです。
セザンヌは構図や陰影ではなく色彩によって遠近感を表現しようと試みました。この作品はその集大成と言えるものです。
それでは具体的に観て行きましょう。
堂々と雄大に描かれたサント=ヴィクトワール山は、陽光によって多様な輝きを反射しています。ほぼ三角形の形で構成されるサント=ヴィクトワール山は画面の中に重量感と安定感をもたらし、前景の変化に富んだ山道や木々は画面にリズム感を与えています。
セザンヌは、構図ではなく色彩によって遠近感を表現しました。画面中央から下部へは農道がうねるように描き込まれており、起伏の激しい麓の様子が感じられます。また画面手前の黄土色や赤茶色の山道からややくすんだ木々の緑色、山麓の青緑、そして画面上部の蒼いサント=ヴィクトワール山から青空へと続く色彩の変化は、まるですべてがひとつの流れとなり自然の中へと溶け込むかのようです。
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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+3

マルディ=グラ ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品です。
セザンヌの息子ポールと、友人ルイ・ギヨームをモデルに、アルルカン(イタリアの即興喜劇コメディア・デラルテ中のキャラクター)とピエロを描いた作品です。
「マルディ・グラ」とはフランス語で「太った火曜日」という意味で、キリスト教における「復活祭」の前にある「四旬節」(40日間肉を一切食べない期間)が水曜日から始まるので、その直前の火曜日は食いだめをして一番太った状態とのことを指します。
それでは具体的に観て行きましょう。
すらりとした肉体のアルルカンがセザンヌの息子ポールで、ピエロが友人ルイ・ギヨームです。
ピエロのゆったりとした白い上着とアルルカンのぴったりとしたアーガイル柄の服が好対照をなしています。
そして、特質すべきは、画面最上部中央から八の字に広がるカーテンと登場人物の構成。更にピエロの衣服の皺で強調される直線が画面全体に安定感を与えています。
これらはセザンヌの様式的・表現的・描写的特徴で、後世の画家に多くの影響を与えました。
モスクワのプーシキン美術館所蔵。
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+2

タンホイザー序曲 ポール・セザンヌ

フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの初期の代表作のひとつです。
若きセザンヌが自分の画風を見つけようと模索する様子が感じられる作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
タンホイザーとは、騎士タンホイザーとテューリンゲン領主の娘エリザベトの悲恋の物語を描いたオペレッタ(小さいオペラ)です。
白い服を着て、ピアノ用に編曲されたタンホイザーを弾いているのは、セザンヌの妹ローザです。その横で編み物をしているのはセザンヌの母です。
ローザの弾くピアノの音色を聴きながら、編み物をする母。穏やかで家庭的な温もりが感じらる場面のはずが、この絵からはそのような明るい感じは受けません。
室内は静寂に満ち、暗く重苦しい空気が漂っているようです。ローザも鍵盤に指を置いているだけのようで、ピアノの音など聴こえていないかのようです。
また、ローザの上半身や母親の顔は、太く黒い線でくっきりと輪郭が描かれています。細部も太い筆でザックリと大胆に塗っています。画面に奥行きを感じないわけではありませんが、かといって立体的なわけでもなく、ローザのスカートの部分などは平面的に見えるところもあります。
本作からは、若きセザンヌが自分の画風を見つけようと模索する様子が感じられます。セザンヌは仲睦まじい家庭の様子を描こうとしたのではなく、その後のセザンヌの画風である、モノが持つ本質的な形を捉えて、構図や色彩や絵肌などの要素を組み合わせた絵を描こうとしていたのでした。
サントロペトロブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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+3

リッタの聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作はミラノ貴族のリッタ家が所有していたことから「リッタの聖母」と呼ばれています。
それでは具体的に観て行きましょう。
幼児キリストに母乳を与える聖母マリアを描いた作品です。幼児キリストが左手に握っているゴシキヒワは、キリストの受難の象徴です。
アーチ状の二つの窓がある薄暗い背景に人物像が配されており、窓外は近くを明確に描き、遠くを不明瞭に描く、空気遠近法を使用した山並みの風景が描かれています。
気品や慈愛に満ちた聖母マリアの表情は優雅で繊細に描かれ、幼児キリストの表情は幼いながらも気高さと神々しさを放っています。筆触は繊細かつなめらかで、色彩も赤と青の対比が美しい。
全体が暗く描かれている中、聖母マリアと幼児キリストには光が当てられ、明るく描くことで、母子を際立たせる手法がダ・ヴィンチらしい作品です。
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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ブノアの聖母 レオナルド・ダ・ヴィンチ

16世紀イタリアの画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
本作は、ダ・ヴィンチが師匠のヴェロッキオから独立して最初に描いた作品です。
当時ダ・ヴィンチは視覚理論を追求していました。当時の考えでは、人間の目から、もっとも重要なものを視野の中心にとらえる光が発せられるとされていました。ブノアの聖母のマリアに抱かれたキリストは、聖母マリアの手によって視線を花により導かれています。
この作品は多くの画家に模倣され、ラファエロの「カーネーションの聖母」も、ブノアの聖母の影響を受けていると言われています。聖母マリアとキリストの配置、聖母マリアの顔の傾き、右上の窓、青の膝掛け等、ブノアの聖母を模擬しているのは明らかです。

ラファエロの「カーネーションの聖母」

サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館所蔵。
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