聖ペテロの磔刑

本絵画は、初期バロック美術の巨匠カラヴァッジョの代表作のひとつです。ローマのサンタ・マリーナ・デル・ポポロ聖堂に飾れれています。
カラヴァッジョは光と影のコントラストを上手く使った画家ですが、本作では対角線構図法も使っています。対角線構図法はその後のバロック美術の画家たちに大きな影響を与えました。
それでは、具体的に見て行きましょう。まずは、光と影のコントラスト。
十字架に逆さにかけられているのが聖ペテロです。ペテロ以外の人物は後ろを向いているか顔が影になっており、光に照らされた聖ペテロの顔に鑑賞者の注意が行くよう工夫されています。
続いて、対角線構図法を見て行きましょう。
木製の十字架と聖ペテロが左上から右下の対角線。右上から左下への対角線は、最後部の人と最前部の人及び十字架を引き上げるロープで形作られています。この構図は鑑賞者の視線が礼拝堂奥の祭壇へ向かうように工夫されているのです。
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聖マタイの召命

本作品は、初期バロック美術の巨匠カラヴァッジョの出世作です。
場面は「マタイによる福音書」9章9節。
”マタイは机に向かっている。机の上にはお金が見える。納税者たちがマタイのところにやってくる。キリストはマタイが収税所に座っているのを見て「私に従ってきなさい」と言われた。するとマタイは立ち上がって、キリストに従った。”
本作は光と影のコントラストが見事です。具体的に見て行きましょう。
闇の中に差し込む一筋の光。その光の元(一番右の手前)に立っているのが、キリストです。そして、一番左の手前でお金を数えているのがマタイです。
光に照らし出された人物が立体的に描かれ、またその画面の奥行きにより、場面に臨場感を与えることに成功しています。
画面の大半を影で覆うことにより、この絵画が設置されている礼拝堂の薄暗い空間と絵画空間が一体となって見えます。つまり、光によって照らされた画中の出来事が、まるで目の前で起こっているかのような錯覚を鑑賞者に与えるのです。
ローマのサン・ルイージ・デイ・フランチェン聖堂所蔵。
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聖女ペトロネラの埋葬と被昇天

17世紀のバロック期の画家絵画グェルチーノの作品。
本作はバチカンのサン・ピエトロ大聖堂向けに描かれた祭壇画で、現在はローマのカピトリーノ美術館で展示されています。
画面の下半分に聖ペトロネラ(聖ペトロの娘)が埋葬されるシーンを描き、上半分に彼女がキリストに迎えられるシーンを描いています。聖ペトロネラのガウンは目立つ赤色で描かれていますが、全体としては涼しく描かれた天国の色の方が記憶に残ります。
下半分の俗世と上半分の超自然現象の二つの出来事を混在させることで、鑑賞者が聖ペトロネラの埋葬に立ち会い、かつ、彼女と共にキリストに迎えられているように感じるのです。
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果物籠

16世紀後半から17世紀初頭のバロック絵画最大の巨匠カラヴァッジョによる静物描写の代表作。
カラヴァッジョの徹底したリアリズムが遺憾なく発揮された作品です。
それでは、具体的に見て行きましょう。
果実の描写は、その瑞々しさと同時に腐敗を見せるそれぞれの側面を忠実に描がいています。そして、枯れる葉の乾いた質感。それまで描かれてきた典型的な静物画では見られることの無かった醜く枯れる葉を、他の果物と同様に主役として描いています。
「瑞々しく美しい果物の描写のみならず、枯れ朽ちる葉や腐敗する果実など、醜さや下劣とされる描写まで、徹底したリアリズムを以って現実を描く」それがカラヴァッジョの静物画です。
ミラノのアンブロジアーナ絵画館所蔵。
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オウム貝の杯のある静物

本作は、オランダ画家ウィレム・カルフが描いた絵画で、オランダ17世紀静物画の傑作と言われる作品です。
具体的に見て行きましょう。
カルフは、異国の品々の外形や質感を、当時、描かれることは無かった具体性をもって再現しています。薄暗く陰鬱な闇に暖かい光が差し込む事で出来る反射光のきらめき。まるで、奥深く描かれた色彩の向こうから光が出て来るようです。それにより、異国の品々に、謎めいた生命があるような感じを与えているのです。
精巧な細部の表現、色彩感覚と光の効果、巧みな構図、それらが見事に融け合った作品です。
マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館美術館所蔵。
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ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像

ミケランジェロの師として知られる巨匠、ドメニコ・ギルランダイオの作品。
本作品は、15世紀ルネサンス時代で最も美しい肖像画の一つとされています。
若々しいけれど控えめな美しさ、そして清楚な雰囲気が漂う作品ですね。
銘文には「ああ、芸術よ。もし彼女の特性や内面性を再現することができるなら、この世にこれに勝る絵画はないだろう」と記されています。
マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館美術館所蔵。
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受胎告知

15世紀のイタリアルネサンス期の画家、ジョヴァンニ・ベッリーニの作品。
ジョヴァンニは、画家一族で知られるベッリーニ家の中でも特に有名な画家で、ベネチア派の巨匠と呼ばれています。
さて、ベネチア派の特長は何でしょう?この作品で見て行きましょう。
左のドアから急ぎ足の天使と共に日差しが部屋に差し込んでいます。窓枠と天使の影が床と壁に柔らかく落ちて、まるで普通の部屋に午後の訪問者が来たかのような日常性が感じられます。聖母も静かな表情で受胎告知を聞いています。
「日常の明るい静けさの中で受胎告知を描く」。ここにベネチア派の特長が表れています。ベネチア派は、流動的で詩的な雰囲気の中で、人間の感覚に直接訴えかける効果を追求し続けました。
ベネチアのアカデミア美術館所蔵。
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老女

謎めいた画家、ジョルジョーネの作品。ジョルジョーネは、15世紀の盛期ルネサンス、ヴェネツィア派の画家で、ティツィアーノと関係が深かったと言われますが、不明な部分が多く、西洋絵画の歴史の中で、もっとも謎に満ちた画家の一人です。この作品についても謎が多い。
当時の画家は肖像画と言えば、権力者やその伴侶を描くのが一般的でした。そんな中、何故、名もなき市井の人物、しかも老いた女性を描いたのか。不思議です。
また、描かれた女性が胸に押し当てている紙片には、「時がたつにつれて / Col tempo?(イタリア語)」と記されています。
この意味は、かつて美しかった胸が時と共に衰えるということを言っているのか。かつて美しかった女性も時が経てば老いていくことを言っているのか。
何を伝えようとしていたのか謎は尽きません。
ベネチアのアカデミア美術館所蔵。
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ヴェールの女

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶ盛期ルネサンスの三大巨匠の一人、ラファエッロ・サンティの作品です。巨匠ラファエッロの作品の中でも、別格の存在感があります。
その理由は。。。
モデルは、モデルはフォルナリーナ(パン屋の娘の意)と呼ばれています。ラファエッロはこの女性と密かな恋愛関係にありました。しかし、ラファエッロは社会的地位を上げる為、他の女性との政略結婚を決意し、フォルナリーナと別れます。
だが、ラファエッロはフォルナリーナへの想いを断ち切ることができず、婚礼の衣装を纏った婦人の肖像画「ヴェールの女」を描き、自己の想いを表現したのです。
ヴェールを被るフォルナリーナの表情は、自分たちが結ばれないことへの悲しみを表しています。このようなラファエッロの切ない思いがある作品だからこそ、別格の存在感を感じるのでしょう。
当初はフォルナリーナの指には、婚姻の証である指輪が描かれていました。しかし絵画が一般に公開されることとなり、絵具を上塗りして、指輪を隠したとされています。ピッティ宮殿所蔵。
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