ラ・ジャポネーズ クロード・モネ

19世紀フランス印象派の巨匠、クロード・モネの作品です。
本作は、モネの日本趣味が最も顕著に表れた作品で、かつ、モネ自身の西洋美術のアイデンティティも融合されている作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
描かれている女性は、モネの妻、カミーユ・ドンシューです。カミーユは武者の姿が刺繍された真っ赤な日本の着物を着て、手にはフランスの三色旗と同じ青・白・赤の扇を持たせ、金髪のカツラを被っています。そして、挑発するかのごとく、笑みを浮かべこちらを見つめています。
カミーユの本来の髪の色は黒色です。日本文化を象徴するオブジェクトで妻を取り囲みながら、わざわざ金髪のかつらを被らせているところに、日本美術への賛美と同時に西洋人である自身のアイデンティティを融合させています。
ホストン美術館所蔵。
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自画像:イーゼルの前の画家 オノレ・ドーミエ

19世紀フランス画家、オノレ・ドーミエの作品です。
ドーミエは風刺版画家として知られるとともに、油彩画家としても印象派や表現主義の絵画を先取りし、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、フィンセント・ファン・ゴッホなど、後世の画家に影響を与えた画家です。
それでは具体的に観て行きましょう。
光と明暗の効果が素晴らしい。頭部から体側にまとわりつく斜め上からの光。絵の周辺に映る白い影。画家を照らし出し輪郭をかたどる光は聖人の光輪を思わせ、観るものに孤高の芸術家をイメージさせます。
ワシントンDCのフィリップス・コレクション所蔵。
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洗濯女 オノレ・ドーミエ

19世紀フランス画家、オノレ・ドーミエの作品です。
ドーミエは風刺版画家として知られるとともに、油彩画家としても印象派や表現主義の絵画を先取りし、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、フィンセント・ファン・ゴッホなど、後世の画家に影響を与えた画家です。
それでは具体的に観て行きましょう。
洗濯の山を抱えながら、石の階段を登る女性を描いています。この女性からは、疲労感と同様に力強さも感じさせます。母親として、生活の疲労と高すぎる階段をよじ登る子供を助ける優しさが描写されています。
母親の手をしっかり握りしめた子供は、母親がこれから請け負った洗濯仕事へ向かうことをわかっているようにも見えます。
母と子の力強い量感、存在感が際立つ作品です。
オルセー美術館所蔵。
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三等列車 オノレ・ドーミエ

19世紀フランス画家、オノレ・ドーミエの作品です。
ドーミエは、産業革命によって移り変わる交通手段を主題とした絵画を多く描きました。この作品もそのひとつです。
それでは具体的に観て行きましょう。
三等車は車窓から光が入り、人でごった返し、汚く、固い椅子が並べられています。座席は、一等、二等の席が買えなかった者で埋め尽くされています。
乳飲み子を抱えた母親、バスケットの取っ手を握りしめる年老いた女、ぐっすり眠る少年。三世代が同時に座っています。まるで人生の縮図を表しているようです。成人した男性は後ろ姿のみで脇役です。これは女性が自分の世界を切り開こうとしてることを示唆しています。母親の顔は優しいが、年老いた女の表情は疲れ切っており、長い人生のなかで経験したであろう苦難を物語っています。老婆の抜け目のないまなざしは、鑑賞者をじっと見つめています。
ドーミエならではの観察眼の鋭さと暖かい共感をもって、乗客の内部に焦点を当てた作品です。
ニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵。
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羊飼いの少女 ジャン=フランソワ・ミレー

19世紀フランスのバルビゾン派の創設者の一人、ジャン=フランソワ・ミレーの作品です。バルビゾン派の画家たちは、フランスのバルビゾン村やその周辺に居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
少女の可憐にしてどこか侘しげなたたずまいが、観る者の共感をそそう作品です。身にまとっているものや、大きなごつごつとした木靴も彼女の境遇を物語っていますが、その足元には白いタンポポが彼女を慰めるかのように咲いています。
貧しくはあるが静かで平凡な田園風景と、そこに生きる人と動物が一つになった、写実的であると共に抒情性に富んだ作品です。
オルセー美術館所蔵。
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オランピア エドゥアール・マネ

印象派の創設に影響を与え近代美術の父とも呼ばれる、19世紀フランスの画家エドゥアール・マネの代表作のひとつです。
マネは、伝統的な絵画を下敷きとしつつ、伝統的な形式にとらわれない自由で個性的な色彩を用い、絵画を描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
全体的な構図は、ティツィアーノが描いた『ウルビーノのヴィーナス』の構図を借用したものです。一方、オランピアという名は当時のパリにおける娼婦の通称です。
そして、肉体のどぎついまでの明るさ、恥じらいもない視線、女神と言う神話的な次元から娼婦と言う現実的な次元への転換などからセンセーショナルを巻き起こした作品です。
この作品の注目すべき所は、光の扱い方で、現実世界の光を感じます。
前方の観客のいる方に窓があり、そこから日光がオランピアを照らしているように描いています。この現実世界の光が、まるで自分がオランピアを訪れた客であるかのような、なまなましい感覚を与えるのです。
そして、この光の扱い方は、印象派と呼ばれる後輩の画家たちに影響を与えることになります。
オルセー美術館所蔵。
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春 ジャン=フランソワ・ミレー

19世紀フランスのバルビゾン派の代表的画家、ジャン=フランソワ・ミレーの作品です。この絵は、ミレーが晩年に描いた、四季をテーマにした連作のひとつです。
それでは具体的に観て行きましょう。
ミレーは本作で、木の下に小さな農夫を描き、人間の存在を弱めることで、叙情詩的でロマンティックでもある人間と自然との対話や出会いの表現に重きを置いた作品を描き出しました。
道端にちらほらと見える小さな花等、自然の風景は正確に観察され描かれています。果樹が植えられ、道があり、塀が建てられるなど、自然界がここに息づいており、かつ大事にされている様子が判ります。
オルセー美術館所蔵。
※1:バルビゾン派は、フランスのバルビゾン村やその周辺に画家が滞在・居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた画派です。
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家路につく落ち穂拾いの女たち ジュール・ブルトン

19世紀フランスの実写主義の画家、ジュール・ブルトンの作品です。
ブルトンはフランスのブルターニュ地方の風景画や農民の様子を描いたことで有名です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作はミレーの「落穂拾い」とよく比較される作品です。。収穫後の田畑に散らかる穀物の茎穂を、農婦たちが拾う様子が描かれています。
麦刈りのあとに畑の落穂を拾い、自分たちの糧とする貧しい人々です。落ち穂拾いを許されているのは女性か子供、あるいは老人であり、拾ってよい場所や時間など制限がありました。
貧しいながらも満ち足りた思いで帰路につく農婦たちの表情や、まだ物足りないと地面に手を伸ばしている女など巧妙に描き分けている、幻想的で美しい作品です。
オルセー美術館所蔵。
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オワーズ川の日没 シャルル=フランソワ・ドービニー

19世紀フランスのバルビゾン派(※1)画家、シャルル=フランソワ・ドービニーの作品です。ドービニーは、バルビゾン派から印象派への架け橋の役割を果たした画家と言われています。
また、ドービニーは、小舟に画材道具一式を積み込み、セーヌ川やオワーズ川にこれを浮かべて目の前の自然を描きました。
この絵画からは、モネの作品ほど大胆な単純化や省略は見られないものの、光のとらえ方などは、印象派の特徴を先取りした作品であると言われます。
オルセー美術館所蔵。
※1:バルビゾン派は、フランスのバルビゾン村やその周辺に滞在又は居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた画家の一派です。
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