セレの風景 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの分析的キュビスム時代の作品です。本作は、1911年夏フランス・ピレネー山脈の麓セレにて制作されました。
分析的キュビズム時代の作品は対象を断片的に分解し、三次元から二次元へと再構築する為、抽象的な作風で、褐色、青色、緑色などの直角三角形、半円形、直角を成す図形にて構築されています。
ピカソは、様々な視点から風景を捉えて分解しました。断片を継ぎ合わせると、回路図のような階段、アーチ形窓が描かれているようです。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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アトリエ パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの総合的キュビズムの時代の作品です。
総合的キュビズムでは、分解された対象を平面的に再構築します。単調な色彩の分析的キュビズム時代の作品と比較して、装飾的で色彩豊かになって行きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
現実と幻想の相互作用を主題とした作品です。
左側に彫刻の胸像、右側に全身の肖像画が描かれています。胸像には、3つの目が描かれています。3つの目をもつ胸像は、ピカソ個人と芸術作品との一体感・同一性を反映していると考えられています。
彫刻の胸像と全身身の肖像画は、著しく簡略化されています。簡略化された姿を使って人間を芸術的に描写することで、現実世界から少し離れた環境下に対象を置くことに成功しています。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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すいかを食べる男と山羊 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの晩年の作品です。
ピカソは晩年、「男と女」、「人間と動物」、「画家とモデル」、「老人と若者」と言った、相反するものを並べてモチーフにする絵画を多く描いています。
そこに共通するのは、人間の原初的な欲求―食欲や性欲を満たそうとする、野性的なグロテスクと無垢のイメージです。
スペイン絵画ではメロンやすいかを食べる少年というのは慈悲的対象となる貧しくも無垢で生命力に溢れる人間像を示します。座り込んですいかを食べている少年と山羊の組み合わせは、ピカソがスペインで知った牧歌的な生活を思い起こさせます。
また、ピカソは山羊が大好きで、生活に身近な動物でもありました。
箱根のポーラ美術館所蔵。
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裸足の少女 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソが14歳の時の作品です。
新古典主義時代(※1)の輪郭の原型と言われ、穏やかで素朴な少女の表情を見事に表現した作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
作品に描かれた少女は真っ赤なワンピースを着用し、両手を膝の上に置いて椅子に座っています。少女の瞳は大きく真っすぐ前を見ており、10代の少女にしては手足がどっしりして大きく描かれています。それによって安定感が出て生命力に満ちています。
ピカソ美術館所蔵。
※1:新古典主義の時代(1917年 – 1925年):ルネサンスやバロックの名品に影響を受け、どっしりと量感のある、身体に比べて大きい手足、彫刻のような肉体、額から続く高い鼻などが特徴の作品を多く描いた時代。
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シルヴェット・ダヴィット パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの晩年の作品です。
本作はシルヴェット・ダヴィットという女性を描いた作品で、ピカソが73歳、シルヴェットが20歳の時でした。
作品は全体的に白・黒・グレーといったモノトーンで統一されており、背中や首など身体の部分が黒く太い線で力強く描かれています。
色味を揃えることで美しい顔立ちが強調されています。
箱根のポーラ美術館所蔵。
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パイプ、グラス、ヴィユ・マールの瓶 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの総合的キュビスムの時代の作品です。
総合的キュビズムの時代の絵画は、単調な色彩の分析的キュビズムの絵画と異なり、装飾的で色彩豊かになります。また、壁紙や新聞紙など既成の素材を画面に貼り付ける「パピエ・コレ」という技法が用いられるようになります。
それでは具体的に観て行きましょう。
壁紙や雑誌などを貼り付け、作品を作り上げています。しかし空間的尺度が曖昧で定まっていません。
グラスの後ろにギターが描かれ、ギターの一部は透明であり、ギターを通して雑誌が見えます。ギターにより、ヴィユ・マールの瓶の輪郭は不完全となっています。
テーブルは、壁と平面図形の間にあります。コラージュされたテーブルの角は壁紙の一部と重なり、テーブルの脚はすそ板の一部を覆い隠しています。パイプとテーブルの脚は切り抜いた紙を貼り付けている為、輪郭線が明確になり、立体感が与えられています。
ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館所蔵。
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納骨堂 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソのキュビスム表現主義の時代の作品です。
本作はゲルニカに続く2作目の反戦作品として描かれました。
それでは具体的に観て行きましょう。
第二次大戦のナチスによるユダヤ人虐殺が主題です。画面中心の黒と白の構成は、ダイニングテーブルの下に散らばった死体を表しています。三角形を中心とした抽象的な構図イメージで、惨劇を表現しています。この作品にピカソは6か月以上の月日を掛けて取り組んでいたものの未完成のままとなっています。
しかし、未完成ながらも、納骨堂はゲルニカの形式的問題を修正・改良しようとした作品なのです。
フォルムがぎこちなくいびつで、画面のリズムが断続的であるゲルニカに対し、納骨堂は曲線の流動的なリズムが保たれています。また白いまま残された上部の未完成部分にも自然さがあり、画面全体に動きと広がりが見て取れます。
※1:キュビスム表現主義の時代(1937年 – 1973年):ピカソがキュビスムの作品を多く描いた時代。
ウィーンのアルベルティ―ナ美術館所蔵。
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アンブロワーズ・ヴォラールの肖像 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの分析的キュビスムの時代(※1)の作品です。
本作品のモデルはフランスの美術商、アンブロワーズ・ヴォラールです。ヴォラールは、ピカソを含む当時無名の画家に対して物質的・精神的な援助をしました。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面を切り込むような線が何本もあり、それらが切り子のような面がランダムに並べられています。ヴォラールは、厳しい表情で描かれていますが、光を微妙に当てることにより、平坦にリズム感を加え、画面の中から顔が浮かび上がって来るように工夫されています。
人や物を平面に細分化、解体し、画面上で組み合わせたり重ねたりすることで、遠近法で表される空間とは異なった空間を表現しています。
※1:分析的キュビスムの時代(1908年 – 1912年):プロトキュビスムの時代(1908年 – 1909年)から更に分析が進み、対象が徹底的に分解され、何が描かれているのか識別することが困難なところにまで進んでいきました。
モスクワのブーキシン美術館所蔵。
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青い部屋 パブロ・ピカソ

19世紀スペインのキュビスムの創始者、パブロ・ピカソの青の時代(※1)の作品です。
女性が寝室で入浴する様子が描かれています。壁にはパリで活躍した、ロートレックのメイ・ミルトンのポスターが貼られています。
また、X線調査をしたところ、作品の下に別の絵が隠されていることが判明しました。なんと、それは男性の肖像画でした。

隠されていた、男性の肖像画

ピカソは、思いついたことは、すぐに形にしたかったが、当時は貧しく、カンバスも高くて思うように購入できなかった為、1枚のカンバスに重ねて絵を描いたようです。
※1:青の時代(1901年 – 1904年):ピカソが19歳のとき、親友のカサヘマスが自殺したことに大きなショックを受け、鬱屈した心象を、無機顔料の青を基調に使い、盲人、娼婦、乞食など社会の底辺に生きる人々を題材にした作品を多く描いた時代。
ワシントンDCのフィリップス・コレクション所蔵。
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