大公の聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1505年頃)です。
ラファエッロの描いた聖母像の中でも特に有名な作品の1つです。暗闇の中に浮かび上がるように描かれた聖母マリアと幼児イエス・キリストが印象的ですが、黒い背景は後世の加筆によるものであることが判明しています。
それでは具体的に観て行きましょう。
ラファエッロが描いているのは赤と青の衣装を身にまとった聖母マリアが幼児キリストを抱きかかえるという、典型的な聖母子像で、この構図はラファエッロが描くことになる数々の聖母像の原型となりました。
幼子キリストは、母の胸元と肩にその手を置き、しっかりと見物人を見つめています。また聖母マリアはその温もりを感じながら、優しい母の表情をしています。
本作はダ・ヴィンチの強い影響を受けており、それはスフマート技法(※1)によって確認することができます。ラファエッロはこの技法により、絵画に優雅なバランスと調和を図り、聖母子の姿が、優しい情愛に満ちたものである事を表現しました。
※1:スマフート技法:深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法。
ピッティ宮殿所蔵。
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聖母の戴冠 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1504年頃)です。
本作の主題は、聖母マリアの戴冠式です。聖母の戴冠とは13世紀から15世紀にかけて、特にイタリアで人気のあったキリスト教美術の主題でした。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は二部構成になっており、上下の関連した場面が描かれています。上には、天国、下には地上。上の絵では、天使たちが妙なる音楽を奏でる中、キリストによって聖母マリアが冠を受けています。
下では、聖母マリアの墓を取り囲んでキリストの使徒たちが集まっています。聖母マリアの身体は腐敗することなしにそのまま天国に引き上げられたため、墓の中は空で、聖母の純潔の象徴である白百合が咲いています。
聖トマスが手に持っているのは、聖母マリアが彼女の聖母被昇天の証拠として落とした腰帯です。使徒たちは目の当りに展開される天国の光景を見上げています。
バチカン美術館所蔵。
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騎士の夢 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1505年頃)です。本作は快楽と美徳のどちらかを選ばなければならないという夢を見たローマの将軍、スキピオ・アフリカヌスを(紀元前236~紀元前184)表していると考えられています。2人女性が持っている、花、剣、本などは、騎士の思想的属性を表現していると考えられています。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作には、美しい木の下で眠る騎士と、それを支える二人の女性が描かれています。女性の一人は剣と本を持ち、もう一人は花を持っています。2人女性はそれぞれ、美徳(険しくごつごつした道を背にしている女性)と、快楽(ゆったりとした服を着ている女性)を表現しています。騎士は、夢の中で美徳と快楽の二者択一を迫られているローマの英雄スキピオ・アフリカヌスを表していると考えられています。
また、本作の寓話の起源は、有名なラテンの詩人シリウスによるポエニ戦争を描いた叙事詩「プニカ」のある一節であると言われています。
ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
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訪問 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1517年頃)です。
本作の舞台はルカによる聖書の物語で、2人の女性の年齢差や喜びの表情など、物語の全体像を1つに収めた作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
美しい風景の中で、キリストを身ごもった聖母マリアが彼女の従妹であり聖ヨハネの子を身ごもっているエリザベスを訪問したところを描いており、この後、マニフィカート(受胎告知を受けたことを聖母マリアが神に感謝する賛歌)を歌います。背景に描かれている天使たちは、聖母マリアをいとこの聖エリザベスのもとへ案内しました。
聖母マリアは若い女性として描かれているのに対し、左の聖エリザベスは年齢が相当上で、それにより聖書に書かれているようにこの妊娠が奇跡であるということを強調しています。また背景の風景の中には、ヨルダン川で聖ヨハネにより洗礼を受けるキリストも描かれており、これから起こることを暗示しています。
また、ラファエッロはマンネリズム(※1)の達人として知られています。本作の中でもマンネリズムを用い、絵の中のポーズをとることで、二人の女性の動きを表現しています。
※1:マニエリスム:盛期ルネサンスと初期バロックの間の芸術様式を指し、その特色は人体表現において顕著で、誇張された肉づけ、引き伸ばし、様式化した姿勢や派手な色彩などがあります。
スペインのプラド美術館所蔵。
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アーニョロ・ドーニの肖像 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1506年頃)です。
絵全体に明快さとバランスを生み出し、背景の明るく穏やかなイメージを使って、人物の性格を上手く表現している作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作は若くて裕福な布地商人の姿を描いた油彩画作品です。
手は片方ずつ重ねられており、社会的地位を示唆するジュエリーを見せています。指輪には繁栄の象徴であるルビーと、透明感や清らかさを表すサファイアが使われています。ラファエッロは影と光の波を使って、アーニョロの力強さを強調しています。アーニョロはテーブルの端に片腕を置いて静かに座って待っています。またラファエッロは深いコントラストを使って、衣服の層の違いを表現し、キャラクターの深さを表しています。金色の髪の毛は左右対称に配置されており、服のバランスがとれていることから、緻密で正確な思考の持ち主であることを表しています。
衣服の細部は、アーニョロの富を示しています。、滑らかで広い筆致を用いて、一見静止した肖像画のダイナミクスを表現しています。アーニョロの目は、絵画の枠を超えた思考の強さを示しています。
絵全体に明快さとバランスを生み出し、背景の明るく穏やかなイメージを使って、人物の性格を上手く表現している作品です。
イタリアのビッティ宮殿所蔵。
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妊婦の肖像 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1506年頃)です。本作はラファエッロがフィレンツェ滞在期間中に描かれたもので、当時、妊婦を描いた絵は非常に珍しいものでした。また、ラファエッロのフィレンツェ滞在期間での最も重要な点のひとつは、この絵が示すような絵画の構図の進化を成し遂げたことです。
本作はラファエッロの能力(自然の要素の特定の状況をより総合的なビジョンの中で解決する能力)の高さを如実に示している作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
自分のお腹の上に左手をのせ腰掛けている妊婦が描かれています。本作の主題は、母親になることを意識している妊婦です。
当時、妊婦を描いた絵は非常に珍しい中、ラファエッロは、妊婦という特殊な状況に対して、その穏やかな誇りと儚さの両方を描くことで、素晴らしい作品に仕上げています。お腹の上に静かに置かれた左手はお腹の膨らみを強調し、視線は強く観客に向けられています。
そして当時、直線的なリズムで肖像画が描かれることが多い中、ラファエッロは、絵の中の固体の形を、ボリュームある球形に還元して描き、またよく選ばれた色が重ねられています。それは、ラファエッロがフィレンツェ滞在期間中に獲得した構図の進化でした。
本作はラファエッロの能力(自然の要素の特定の状況をより総合的なビジョンの中で解決する能力)の高さを如実に示している作品と言われます。
イタリアのビッティ宮殿所蔵。
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本を持つ聖母と幼子 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1503年頃)です。ラファエッロは数多くの聖母マリアと幼子キリスト画を描きました。それは、ただ単に美しい聖母マリアと幼子キリストというイメージだけでなく、高い精神性を持つ、瞑想の芸術であるとも言われます。ラファエッロの聖母像が多くの人々から望まれ、受け入れられたのは、この深い霊的なクオリティがある為です。
それでは具体的に観て行きましょう。
この絵画に描かれているのは、シンプルにそして自然に描かれたバランスのとれた穏やかな聖母マリアと幼子キリスト像です。分かりやすい配置で、聖母マリアと幼子キリストが共にピラミッド状に組みあわされ、顔と身体が幾何学的な構図を形成しています。
聖母マリアの優しい表情、後ろには穏やかな風景が広がり、聖母マリアの深く、青いマントのシルエットは幼子キリストを包み込み、胸元に置いた本にキリストが手を伸ばしていることでより本が強調されています。
また幼児キリストは聖母マリアの指に優しく手を触れています。本に描かれているのは、9時課であり、教会法上に従った聖務日課で修道士たちが毎日暗唱していた日課を示しています。9時課は、キリストの磔と死を記念するもので、幼子キリストは天を見上げ、人類の救世主としての自らの犠牲を予期しているかのように描かれています。
アメリカのノートン ・サイモン美術館所蔵。
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テンピの聖母 ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1508年頃)です。ラファエッロのフィレンツェ時代の終わりの1508年に作られたもので、本作は聖母マリアの母性が存分に表現されていると言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
聖母マリアは幼子キリストを優しくしっかりと抱きしめ、見つめていますが、幼子キリストは前方を見ており、見る者を引き込み親しげな感覚を与えます。素早く塗られたヴェールの色彩は、ラファエッロの以前の板絵作品よりも自由に画材を駆使し描いていると言われています。そして、ラファエッロの画材への形式的美しさへの渇望と感情的な現実が、聖母マリアと幼子キリストの間の柔和な関係を通じて調和しています。
二人の人物は一塊として描かれ、視覚的なインパクトを与えています。唯一、自然な要素はわずかに見える背景の風景と青空です。聖母マリアの膨らんだマントは動きを感じさせ、豊富な色彩はラファエッロのこの画材に対する理想を表しています。
アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)所蔵。
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預言者イザヤ ラファエッロ・サンツィオ

古典主義絵画の祖のイタリア画家、ラファエッロ・サンツィオの作品(1512年頃)です。
イザヤは、旧約聖書に登場する預言者です。
それでは具体的に観て行きましょう。
屈強なイザヤの姿は、両脇にいるキュピット達も相まって、まるで立体像のような迫力があります。イザヤは、ヘブライ語で天に昇るための願い事が書かれた巻物を持っており、その上にはギリシャ語で聖アンナに捧げる言葉が書かれています。
本作について、依頼者が過大請求されたと不平を言っているのを聞き、ミケランジェロは「膝だけでも要求される価格の価値がある」と答えたそうです。
ローマのサンタゴスティーノ教会所蔵。
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