アルジェの女たち

19世紀のフランスのロマン主義(※1)を代表する画家、ウジェーヌ・ドラクロワの作品です。オリエンタリズム絵画の傑作と言われています。
ドラクロワは、古典主義において軽視されてきた、エキゾチスム・オリエンタリズム・神秘主義・夢などといった題材を扱いました。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面の中央に2名、左側に1名ハーレムの女らが座しています。その様子からはハーレム特有の気だるさと官能的な風俗性が滲み出ています。
彼女らが身に着ける豊かな色彩と異国的な衣服は、独特の情緒と異国的雰囲気を感じさせ、観る者を強く惹きつけます。
そして、本作で注目すべき点は、色彩の妙です。画面右上から差し込む北アフリカの強烈な陽光によって光と影が対比されています。ドラクロワはその陰影の中に多様な色彩を見出し、色彩による対比でそれを描写しています。
このような明度の差異に頼らない輝くような色彩は画期的で、ピカソを始めとした20世紀の画家らに多大な影響を与えました。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

2+

ダンテの小舟

19世紀のフランスのロマン主義(※1)を代表する画家、ウジェーヌ・ドラクロワのデビュー作です。
ドラクロワは、古典主義において軽視されてきた、エキゾチスム・オリエンタリズム・神秘主義・夢などといった題材を扱いました。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作品は、ダンテの「神曲 第8篇」にある物語を題材にしています。
一心不乱に舟に乗り込もうとあがく亡者達、漕ぎ手のプレアギュースの青い衣服が強風でうねっています。波立つ川に揺れる舟、後ろに見えるのは巨大な灼熱地獄と化した街。激しい狂気と絶望がこの絵の中にあります。
どこからともつかない光が亡者達のたくましい肉体を照らし、その明暗の効果が不気味さを一層強調しています。大胆な色使いも印象的です。ダンテの赤いカウルは、後方の大火を不安になるほど連想させ、プレアギュースの青い衣服と鮮やかに対比させています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

※1:18世紀末から19世紀前半のヨーロッパ、及び、その後にヨーロッパの影響を受けた諸地域で起こった精神運動の一つ。それまでの理性偏重、合理主義などに対し感受性や主観に重きをおいた一連の運動です。恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴をもち、近代国民国家形成を促進しました。

2+

サルダナバロスの死

19世紀のフランスのロマン主義を代表する画家、ウジェーヌ・ドラクロワの代表作の一つです。ロマン主義の特徴が最も示されている作品と言われます。
それでは具体的に観て行きましょう。
アッシリア王サルダナパールの最期を描いた歴史画です。画面左奥のサルダナパロスは、白の衣服を纏い、鮮やかな赤色の敷布で覆われ黄金の象で装飾された寝具で片肘を突き寝そべりながら周囲の光景を無表情で眺めています。
その周囲では、臣下や近衛兵、奴隷らが、サルダナパロスの財宝を破壊し、寵姫や寵馬など王の快楽のための全ての者や動物を殺害する様子が克明に描かれています。サルダナパールは軍の敗北に際し、財産を破壊し愛妾を殺害するよう命じたのです。
残虐、陰惨、狂気、殺戮、破壊。これらの要素は、人間の本質の一部であるにもかかわらず、当時、暗黙のうちにタブーとされているものばかりでした。
しかし、この人間の本質を描くことこそ、ロマン主義の本質であり、今なおロマン主義絵画の最高峰として位置付けられている作品です。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

3+

民衆を導く自由の女神

19世紀のフランスのロマン主義(※1)を代表する画家、ウジェーヌ・ドラクロワの代表作です。
ドラクロワの絵画は、色彩の魔術師と呼ばれたほど色彩表現に優れ、輝くような光と色彩の調和による対象表現や、荒々しく劇的でありながら内面的心象を感じさせる独自の場面展開が特徴です。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品は、1830年に起きたフランス7月革命を主題としているます。
中心に描かれている、銃剣つきマスケット銃を左手に持ちフランス国旗を目印に右手で掲げ民衆を導く果敢な女性は、フランスのシンボル、マリアンヌ(※2)です。
「自由」「平等」「博愛」の意味を持つ、後にフランス国旗となる青・白・赤色の旗を掲げる女性は、争いの暗い影に光をもたらす存在として描かれており、民衆の、死してなお自由を求める力強さは圧巻です。輝くような光と色彩の調和、そして荒々しく劇的でありながら内面的心象を感じさせる、ドラクロワの真骨頂が遺憾なく発揮されている作品です。
また、女性は自由を、乳房は母性すなわち祖国を、という具合に、ドラクロワはこの絵で様々な理念を比喩で表現しています。マスケット銃を携えて女性に続くシルクハットの男性は、ドラクロワ自身と言われています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

※1:18世紀末から19世紀前半のヨーロッパ、及び、その後にヨーロッパの影響を受けた諸地域で起こった精神運動の一つ。それまでの理性偏重、合理主義などに対し感受性や主観に重きをおいた一連の運動です。恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴をもち、近代国民国家形成を促進しました。
※2:マリアンヌは、フランス共和国を象徴する女性像で、自由の女神として知られています。

3+