横たわるタヒチの女 ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1897年)です。
本作はゴーギャンの第二次タヒチ滞在中の名作で、ゴーギャンは第二次タヒチ滞在中に現地で没しました。
それでは具体的に観て行きましょう。
上部やや左側の窓に悪魔の鳥として、青い鳥が描かれており、横たわる裸婦を見張っています。そして裸婦は、恐々とした表情を浮かべながら視線を鳥の方へと向けており、その背後では二人の女性が密談を交わしています。
ゴーギャンは「単純な裸体によって、ある種の野蛮な豪華さを暗示したかった。全体はわざと暗く悲しい色彩の中に沈んでいる。この豪華さをは絹でもビロードでも麻でも金でも馬鹿な女でもない。純粋に画家の手で紡ぎだされた豊かな質感である。人の創造力のみがこの空想上の住居を飾ることができるのだ」と述べています。
ロンドンのコートールド・ギャラリー所蔵
<MAP>

死霊が見ている ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1892年)です。
この作品のモデルとなっているのはゴーギャンのタヒチでの現地妻テハアマナです。
テハアマナが体験した非現実的な神秘と超自然的な恐怖をゴーギャンが表現した作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
ゴーギャンによると、ある日ゴーギャンが夜遅く家へ帰ったところ、部屋にいたテハアマナは動かぬままベットに打つ伏せになりながら死靈に怯えていたそうです。テハアマナは目を見開き、身体を硬直させながらゴーギャンを直視しています。左奥にはテハアマナが見た死霊が闇の中に潜むように横顔を覗かせています。
テハアマナが体験した非現実的な神秘と超自然的な恐怖を、楽園であるタヒチにも潜む生死の象徴として表現した作品です。
ニューヨーク州のオブライト・ノックス美術館所蔵
<MAP>

あなたは何処へ行くの? ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1893年)です。
本作はゴーギャンがタヒチ滞在中に描いたものですが、謎多い作品と言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
手前に大きな果物を胸の前に抱いた若い娘が描かれています。原色の赤色の腰布のみを身に着ける姿は、野性的な官能性と、活き活きとした生命力に溢れています。
また中景には左側に木陰で休む黒髪の女性が2人、右側に清潔な白地の衣服を身に着ける、子供を抱いた女性が描かれています。強烈な陽光による輝くような原色で彩られた風景は、観る者に強烈な心象を残します。
そして本作に関する謎ですが、「あなたは何処へ行くの?」は、誰が誰に向けられて発しているのか?前景の若い女性が抱く南国風の果物の意味は何か?4人の登場人物の視線が交わらないのは、何を意味しているのか?
様々な説が唱えられていますが、定説はありません。
エルミタージュ美術館所蔵
<MAP>

あなたはいつ結婚するの? ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1892年)です。
ゴーギャンがタヒチで描いた作品の中で一番高値が付いた作品と言われています。タヒチ語の題名は「ナフェア・ファア・イポイポ」。当時のゴーギャンは通常、タヒチ語で絵に題字をつけていました。ゴーギャンはタヒチ語に魅了されていましたが、初歩的なレベル以上には上達しなかったと言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
本作に描かれている地面は緑、黄色、そして青で塗られています。地面には2人の女性が座っています。その内一人はタヒチ島の伝統服装を着ており、もう一人はヨーロッパ風のドレスを身に纏っています。
伝統服を着ている女性が左耳に付けている花は彼女が出会いを求めている事を示しており、ドレスを着ている女性のジェスチャーは仏教の芸術から由来すると言われます。また、その仏教のジェスチャーは日本の絵画作品からインスピレーションを受けたのではないかとも言われています。
南国タヒチの強烈な光や香りを感じさせる、異国情緒に溢れた風景の中で語らう二人の若い女性は、健康的な美しさと奔放な性的官能性が混在した独特の雰囲気を醸し出しています。
この両者と風景の描写は伝統的な写実性を捨て、輪郭線と色面によって平面的に構成するクロワゾニスムの手法が用いられており、原色的色彩の表現は独特の調和性を感じさせながら、観る者の目を強く惹きつけます。
さらに画面上部から橙色(空)、深い青(遠景の山)、黄緑色(中景の草地)、明瞭な水色(水溜り)、山吹色(女らが腰を下ろす大地の色)、そして最前景の深い緑色(草地)と明確に隔てられた色彩的対比と強弱が素晴らしい作品です。
スイスのバーゼル美術館所蔵
<MAP>

アレアレア ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1892年)です。
タヒチ滞在時に制作された作品で、現地の民話や古くから伝わる宗教行事に強いインスピレーションを受け、この作品を現実と夢が共存している象徴として描きました。
それでは具体的に観て行きましょう。
前景には2人の若いタヒチの娘が1本の樹木の傍らで腰を下ろしながらゆったりと過ごしており、その中のひとりは目を瞑りながら細い縦笛を奏でています。画面左下には一匹の神秘的な動物が赤茶色で描かれています。緑・黄色・赤の調和が素晴らしく、背景には、偶像を崇拝している女性たちが見えます。ゴーギャンは、マオリの小さなモチーフを大きなブッダに置き換え、巨大化させ、神聖な儀式のイメージを出しています。
輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成するクロワゾニスム的手法を用いた対象の単純化と象徴化を、強烈な色彩による色面とその対比によって表現しており、タヒチ独特の異国的雰囲気が伝わってきます。これらの色彩表現や構成的展開が、当時のゴーギャンの特徴です。
本作は全体図として調和に満ちた構造となっており、哀愁的でもあり、神の庇護のもとに生き素晴らしい自然のただ中に生きる人間の姿が描かれています。これは太古のポリネシアの姿であり、ゴーギャンの理想郷でした。
オルセー美術館所蔵
<MAP>

マンゴーを持つ女 ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1892年)です。
タヒチ滞在時に制作された作品で、モデルとして描かれる女性はゴーギャンが現地の人に紹介され、結婚したテハマナ(当時13歳)です。
ゴーギャンはタヒチ滞在中に自然で生命感に溢れる美しさを備えたテハマナをモデルとした作品を、複数手がけていますが、本作は少女テハマナの母性を象徴化した作品として特に有名です。
それでは具体的に観て行きましょう。
中央に大きく配され、やや下方へ視線を向けるテハマナの姿態は、顔とは逆を向けられており画面の中に動きを生み出しています。また幼さが残るものの原始的で力強さを感じさせるテハマナの顔立ちには、ある種の聖人的な印象を感じさせます。
さらにテハマナが手にするマンゴーの実は、現地では古くから豊穣を象徴するものであり、ここにゴーギャンの自然に対する尊敬の念と、テハマナの母性を見出すことができます。更にゴーギャンの明快で簡潔な平面的表現により、それらを強調しています。
メリーランド州のボルティモア美術館所蔵
<MAP>

タヒチの女たち ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1891年)です。
本作は、ゴーギャンがタヒチに理想郷を求めて渡航した年に制作されたもので、南洋の楽園、タヒチの光景が目の前にいっぱい展開されています。
ゴーギャンは、ここタヒチで、精神的に解放され、ゴーギャン独自の絵画表現を、体得したのでした。
それでは具体的に観て行きましょう。
タヒチの二人の女性が、画面いっぱいに大きく描かれています。左側の眼を伏せて横すわりしている女性は、砂地に手をつき、太陽の日差しを浴びて物憂げな様子です。右側の女性は、こちらに身体を向け乾草のようなもので紐かなにかを編んでます。胡坐をかき視線を右外に向けています。
手前の砂地には、花飾りやマッチ箱のようなものがあり、渦巻きを描いた跡が見られます。遠くには、碧い海と浅瀬の緑の海、その間には白波が見えます。
色彩は、赤やピンク色、黄土色が支配的で、いかにも南洋の温暖な気候、のどかな情景を感じさせます。色調の細かい変化を抑えた平面的な筆使いで、画面内の遠近感と二人の女性の圧倒的な量感を表現しています。
寒色系の海が画面の奥行きを出しています。そして左右の女性の対照的な対比、身体の向きやしぐさ、表情、衣服の対比によって、さらに立体感を出しています。南洋の楽園、タヒチの光景が目の前にいっぱい展開された、印象的な作品です。
ゴーギャンは、ここタヒチで、精神的に解放され、ゴーギャン独自の絵画表現を、体得したのでした。
オルセー美術館所蔵
<MAP>

純潔の喪失(春の目覚め) ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1891年)です。
本作はゴーギャン自身が「象徴主義的な大作」と信じ、象徴主義者たちへ向け意図的に発信した作品と言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
裸の女性は、当時のゴーギャンの恋人であったジュリエット・ユエです。彼女は、この時20歳で、ゴーギャンの子どもを身ごもっていたそうです。
ジュリエット・ユエが手に持っている一本の赤い筋の入ったシクラメンの花は、純潔の喪失(処女の喪失)を意味しています。またジュリエット・ユエの上に描かれた1匹の狐は、誘惑を象徴していて、ゴーギャン自身ではないかとも言われています。
右側に描かれている、山の方に向かって歩く人々の列は、結婚式に参列するための人々です。中景の燃えるように赤々とした田園風景と、その上下の寒色による強烈な色彩的対比により、本作の非現実的で夢裡のような幻想性がより強調されています。
このように、様々なメッセージが込められている作品です。
ヴァージニア州のクライスラー美術館所蔵
<MAP>

ハムのある静物 ポール・ゴーギャン

フランスのポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンの作品(1889年)です。
ゴーギャンが描いた静物画の中で最も有名な作品です。
それでは具体的に観て行きましょう。
金属の平皿に置かれたハムやニンニク、ワイングラスが描かれています。中央に描かれる銀色の皿に配される巨大なハムの塊は、皿の金属と対比するかのように生物性を感じさせる強烈な色彩で描写されており、その存在感は単純化された色彩により強調されています。
さらにハムが置かれるテーブルを支える細い柱が、(まるで宙に浮いているかのような)不安定感を本作に与えています。これは、ゴーギャン自身の不安定な心情が表現されていると言われています。
また他の静物画と比較しあまりにも単純な背景の処理や、そこへ加えられた3本の縦文様に、ゴーギャンの画才が表れています。
ワシントンDCのフィリップス・コレクション所蔵
<MAP>

Copyrighted Image