シャルトルのサンピエール教会

この教会は、かつては修道院でした。ゴシック建築の最も美しい傑作の1つと言われています。13世紀と14世紀に作られたステンドグラスの窓は、一見の価値があります。1840年にフランスの歴史的建造物に認定された、迫力ある教会です。

並木道 クロード・モネ

印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネの初期の代表作のひとつ(1864年頃)です。本作はモネが23歳の時の作品で、セーヌ河口の港町オンフルールから西へ向かう街道にある「サン=シメオン農場」近郊を描いた風景画です。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面中央下部には右側へと湾曲するサン=シメオン農場への農道が配されており、道中には植えられた並木からこぼれる木漏れ日が林から落ちる深い影と光彩的コントラストを生み出しています。遠景となる農道奥には農場の母屋と思われる質素な建築物の屋根が描き込まれているほか、清々しい青空が広がっています。さらに農道の両端には背の高い木々が悠々と配され、空間の開放感を強調しています。
本作で特筆すべき点は、やや粘性を感じさせる荒々しい筆触による各構成要素の描写と奔放な光彩の描写です。特に画面手前の右から左斜めへと向けて勢いよく引かれる肌色の木漏れ日の表現は絵具独特の質感を残しながら遠目には光度の強弱が表現されており、観る者の眼を惹きつけます。
さらにコローなどバルビゾン派の影響を感じさせる抑制的な色彩がそのような光彩表現をより一層際立たせており、これらの表現にはモネがルノワールと共に取り組むことになる印象主義的表現の筆触分割を予感させます。
国立西洋美術館(東京)所蔵
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ロンシャンの競馬場 エドゥアール・マネ

印象派の創設に影響を与え近代美術の父とも呼ばれる、フランス画家エドゥアール・マネの作品(1866年頃)です。本作は、競馬場にいる鑑賞者を、疾走する馬の前に配置するという画期的な作品で、マネの絶頂期の作品の一つです。
それでは具体的に観て行きましょう。
パリ郊外のブローニュの森で行われたレースの日を描いています。フランスの現代生活を描こうとしたマネにとって、ロンシャン競馬場はパリの新名所でした。
マネは、レース当日の賑やかな様子をパノラマで描こうとしました。従来はレース中の馬を横にして描くのが普通でしたが、マネは馬を描く角度を工夫して、鑑賞者をレースに引き込むように描きました。そして、右側のスタンドなど、シャープに描かれた要素と、馬の群れという印象派的なぼかしが組み合わされています。
またマネは、前景にあるものにより多くの絵の具を使い、背景や絵の中で重要でない部分にはより薄い絵の具を重ねる傾向がありました。これにより、絵の中の重要な部分に注意が向けられます。微妙な色使いや、絵の中の暗い部分と明るい部分のコントラストを強めることで、形や質量を表現しました。
アメリカのシカゴ美術研究所所蔵
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ガラス花瓶の中のカーネーションとクレマチス エドゥアール・マネ

印象派の創設に影響を与え近代美術の父とも呼ばれる、フランス画家エドゥアール・マネの静物画の代表作(1883年頃)です。
本作に描かれているのは、ガラスの花瓶に入れられたナデシコ科ナデシコ属の多年草で、母の日に贈られる花としても知られるカーネーションと、キンポウゲ科センニンソウ属の蔓性多年草で、観賞用として最も人気の高い蔓性植物のひとつでもあるクレマチスです。
それでは具体的に観て行きましょう。
画面のほぼ中央に配されるやや背の高い台形型のガラス花瓶に、葉のついたままの大きく花開いたクレマチスがガラス口付近に活けられています。さらにその背後にはカーネーションが数本配され、日本美術の影響を感じさせる飾り気の無い簡素な配置です。
クレマチスとカーネーションの構成的なバランスや絶妙な配色、そして画面の中に躍動感をもたらしている左右のクレマチスの葉の展開は特に優れた出来栄えです。
花が活けられたガラス花瓶の中で、水を通り微妙に変化する光の描写や質感表現は、闊達で力強さを感じさせる筆触の効果も手伝い非常に表情豊かに描かれています。
最晩年期のマネは体調を著しく悪化させ大作を手がけることは困難な状況にあり、その為、室内に飾られていた花を描くことが多くなっていました。本作はそのような状況で描かれたマネの作品であり、「花」の画題にはマネの安堵や癒しを求める姿勢を窺い知ることができますが、逆に短命な花と自身の置かれた状況に対する心情を重ねたとも考えられています。
オルセー美術館所蔵
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フォリー・ベルジェール劇場のバー エドゥアール・マネ

印象派の創設に影響を与え近代美術の父とも呼ばれる、フランス画家エドゥアール・マネの作品(1882年頃)です。本作はマネが世を去る前年に完成させた作品で、最後の大作と言われています。
それでは具体的に観て行きましょう。
場面は当時流行に敏感な人々が挙って集ったパリで最も華やかな社交場のひとつであったフォリー・ベルジェール劇場のバーです。中央に描かれたバーメイドの後ろに鏡があり、そこに写るミュージックホールの様子が描かれています。当時、フォリー・ベルジェール劇場ではバレエや曲芸などが行われており、絵の左上には空中ブランコに乗った人物の足が見えます。
平面的でありながら空間を感じさせる絵画的な空間構成や、バーメイドの魅惑的とも虚無的とも受け取ることのできる独特な表情は、観る者をフォリー・ベルジェール劇場の世界へと惹き込みます。パリという都会の中で興じられる社会的娯楽を的確に捉え、そのまま切り取ったかのような作品です。技法的にも、大胆に筆跡を残す振動的な筆さばきや色彩などが素晴らしく、中でも画面前面に描かれる食前酒など様々な酒瓶、オレンジや花が入るクリスタルのグラスなどの静物は秀逸の出来栄えです。
そして、マネは本作で当時のパリ社会の虚構・虚像(裏面)を描こうとしました。
バーメイド正面の姿と後ろ姿が一致しないことや、遠近法の歪み、あまりに右側に描かれたバーメイドの後ろ姿など、一見、不可解な描き方をしています。それは意図的に計算されたもので、例えば遠近法を無視することで、鑑賞者の視線がバーメイドの空虚な表情(パリ社会の虚構・虚像を示すもの)に集まるように工夫されているのです。
ロンドンのコートールド・ギャラリー所蔵
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