石膏キューピッドのある静物 ポール・セザンヌ



フランスのポスト印象派の画家、ポール・セザンヌの作品です。
セザンヌは[キューピッドの石膏像のある静物」を何点か描いていいますが、本作はその内で最も有名になったものです。有名になった理由は、構図が極めてユニークなことにあります。
それでは具体的に観て行きましょう。
一見して気づく通り、空間がかなり歪んで見えます。キューピッドの向う側に見える板のようなものは、床に対して垂直に立っているようでありながら、傾いています。それは床が傾いている為かと思えば、その床も、輪郭が曖昧で、左下の部分では、キューピッドを乗せたテーブルや暗色のクロースとの位置関係が極めて曖昧です。
床なのか、大きな台なのか、区別がつかなくなるばかりか、キューピッドを乗せた台が、この床の上に乗っているのか、それとも別の平面の上にあるのか、区別がつきません。セザンヌは、こうした空間の歪みと錯綜を意識的に楽しんでいるようです。
床、立板、手前の台がそれぞれ直線的に描かれているのに対して、キューピッドや果物は、曲線的に描かれています。直線と曲線との対比を、歪んだ空間との関係で、強調しています。
画面の右上には、しゃがんだ男の肖像の下半身が描かれています。キューピッドと言い、このしゃがんだ男と言い、セザンヌはバロック風の動きのある石膏像と動きのない生物とを対比させることで生まれる効果も楽しんでいるようです。
ただ、生物の中の右上のグリーンの林檎だけは、重力の影響でころがってきそうな印象を受けます。これも空間の歪みが生み出す効果です。極めて構図がユニークな作品です。
ロンドンのコートールド・ギャラリー所蔵
<MAP>

広告

Subscribe
更新通知を受け取る »
guest
0 コメント
Inline Feedbacks
View all comments

Copyrighted Image

0
Would love your thoughts, please comment.x
()
x