民衆を導く自由の女神



19世紀のフランスのロマン主義(※1)を代表する画家、ウジェーヌ・ドラクロワの代表作です。
ドラクロワの絵画は、色彩の魔術師と呼ばれたほど色彩表現に優れ、輝くような光と色彩の調和による対象表現や、荒々しく劇的でありながら内面的心象を感じさせる独自の場面展開が特徴です。
それでは具体的に観て行きましょう。
この作品は、1830年に起きたフランス7月革命を主題としているます。
中心に描かれている、銃剣つきマスケット銃を左手に持ちフランス国旗を目印に右手で掲げ民衆を導く果敢な女性は、フランスのシンボル、マリアンヌ(※2)です。
「自由」「平等」「博愛」の意味を持つ、後にフランス国旗となる青・白・赤色の旗を掲げる女性は、争いの暗い影に光をもたらす存在として描かれており、民衆の、死してなお自由を求める力強さは圧巻です。輝くような光と色彩の調和、そして荒々しく劇的でありながら内面的心象を感じさせる、ドラクロワの真骨頂が遺憾なく発揮されている作品です。
また、女性は自由を、乳房は母性すなわち祖国を、という具合に、ドラクロワはこの絵で様々な理念を比喩で表現しています。マスケット銃を携えて女性に続くシルクハットの男性は、ドラクロワ自身と言われています。
ルーブル美術館所蔵。
<MAP>

※1:18世紀末から19世紀前半のヨーロッパ、及び、その後にヨーロッパの影響を受けた諸地域で起こった精神運動の一つ。それまでの理性偏重、合理主義などに対し感受性や主観に重きをおいた一連の運動です。恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴をもち、近代国民国家形成を促進しました。
※2:マリアンヌは、フランス共和国を象徴する女性像で、自由の女神として知られています。

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